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2章

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 ロビン先生には昔のように笑顔で包み込んで欲しかった。

「先生、バケツは前の場所と同じですか?」

「ええ・・・・・・そうよ」

 けれど、ロビン先生の笑顔は弱々しいままだった。
 来て早々、訪れた私が掃除を提案するなんて、「部屋が汚いですね」と言われていると受け取ってしまったのではないかと心配して、私は慌てて弁明した。ロビン先生は、

『大丈夫よ。ララ様の気持ちは嬉しいですわ』

 と答えてくれて、その言葉の裏には「別のことで悩んでいる」と言っているような気がしたけれど、言っていることは本心なのが私にはわかった。

 それから、私たちはそれぞれ掃除を始めた。
 これからお世話になる私一人でやるとロビン先生には伝えたのだけれど、「そんなわけにはいかない」と言って、一緒にやってくださることになった。

(でも・・・・・・そうね・・・・・・うん)

 もし、優しくされたら、私は色々が辛くて泣きじゃくっていたかもしれない。何があったかわからないけれど、先生には支えが必要に感じた。頑張る必要があって、誰かの役に立てる機会があると思えば、心を保つことができる気がした。

 だから、私はせっせと部屋を掃除した。
 部屋はうっすらホコリが広がっていて、やりがいがあった。とはいえ、子どもたちが走り回っていればこんな状態にはならないと思うのだが・・・。

「先生、今は何人ぐらいの生徒がいるんですか?」

 私はぞうきんで床を拭きながら、ロビン先生に尋ねた。

「えー・・・っと・・・・・・っ」

 ロビン先生は歯切れが悪い。

「あっ、もしかして・・・・・・5人くらいですか?」

 昔は数十人が通っていたけれど、少なくなってしまったのかもしれない。私は想像よりも少ない数字で聞いてみた。

「そ、そうね」

 そう言って、ロビン先生は一生懸命机を拭き始めた。

「そうなんですね」

 私もそれに倣って手を一生懸命動かした。
 そのおかげか、私たちは半日かけて掃除をして、なんとか日が沈む前までには終わらせることができた。
 掃除が終わった後、今度は荷物を開けないといけないと、ロビン先生に伝えると。

「今日は疲れたでしょ? ごはんにしましょ」

 と言ってくださったので、私は少し悩みながらもロビン先生の提案に乗った。

「ううんっ・・・・・・美味しいですっ!!」

 自分でもびっくりするくらい大きな声を出してしまうくらい美味しい料理。はしたなかったけれど、その料理は王宮で出る料理と同等かそれ以上だった。

「そう言って貰えると・・・・・・嬉しいわ」

 私の手は止まらなかった。食べているつもりだけれど、あまりの美味しさに意識せずにとても高速で噛んでいるのか、噛み応えのあるであろう食材であっても、すぐに口の中で溶けてしまい、まるで飲み物を飲んでいるようだった。気が付けば、目の前の料理は空になっていた。

「ん・・・・・・っ」

 速く食べたせいで、身体の機能として胃が活発に動き、眠くなってきてしまった。

「食器は・・・・・・洗いますが・・・・・・少し」

「いいのよ、ララ様」

「そんなわけには・・・・・・・・・」

 そう言いながらも、疲れが急に出たのかお願いしようと思った。

(でも・・・・・・少し・・・・・・)

 なんだろう、この感覚は。
 料理に感動して心が躍り、こんな状況なら眠くならない気がするのに、眠い。

 まるで、強制されているような・・・・・・
 
 駄目だ。目の焦点が合わない。

 ぼんやりした視界の中でなんとか焦点を合わせたロビン先生の顔は―――

 満面の笑みだった。

「いいんですよ、最後の晩餐なのですから―――」

 私はロビン先生の言葉を最後まで聞く前に意識を失ってしまった。
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