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1章

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「ロビン先生ですか・・・」

 一緒に学んだリチャードなら、「良かったね」と言って私の選択を肯定して背中を押してくれると思っていた。

(本当に・・・あの頃のリチャードはいないのね・・・)

 私は学友ではなく、宰相になってしまったリチャードの訝しげな顔をしたのはショックだった。もしかしたら、リチャードは前を見て生きているのに、私は過去ばかり引きずって前に進めていない幼稚な人間だと思ったら、追い出されて出て行くことになり、王家の身分も捨てねばならないことに加えて、とても惨めだった。

「じゃあ、急いでいるから」

 私は振り向いて後ろにあった重い荷物を急いで持ちあげると、わかっていたのに無理したせいでよろけてしまう。

「・・・だめっ」

 荷物の中には割れ物もある。柔らかい布なので割れないように梱包したけれど、もしかしたら落とした拍子に散らばって、割れてしまうかもしれない。でも、一度体制を崩しまえば、私には挽回できる力はない。

「・・・っ」

 私の手の上にあった重力がなくなり、持ち上げようとしていた力のせいで私は後ろへと倒れそうになったけれど、私の身体は優しく受け止められた。

「・・・・・・大丈夫ですか?」

 何が起きたのだろうと後ろを向くと、プルプル震えながら笑顔を作るリチャードがいた。どうやら、私は後ろからリチャードに抱きしめられながら、荷物を持っているらしい。幼い頃はじゃれ合って、抱きしめ合ったこともあったけれど、こんな風に心が高鳴り、高揚感と胸が締め付けられるような想いは・・・・・・なかった。

「あの・・・申し訳ありません。大丈夫であれば、荷物を・・・・・・」

 私が心地よさに浸っていると、リチャードが困った顔しながら、声を掛けてきた。身長が大きく腕も長いリチャードと言えど、私越しに重たい荷物を持つのはしんどいのは当然だ。私は急いで荷物を持ち、リチャードにアイコンタクトして「大丈夫」と告げると、リチャードは荷物を片手で支えながら向こう側へ行き、両手で荷物を持ち、

「ふぅ・・・ありがとうございました」

 と安堵した笑みで言ってくれた。

(私がお礼を言わなきゃいけないのに・・・)

 素敵な笑顔で言われると、余計に罪悪感を感じる。

「こちらこそ・・・・・・ありがと」

 先に言われて悔しい。
 けど、お礼を言えないのも嫌だと思ってなんとか言葉を絞り出す。
 普段なら・・・・・・他の人にならそんなことを思わないのに・・・・・・。

(あぁ・・・・・・そうか。私は・・・・・・)

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