4 / 21
1章
4
しおりを挟む
優しくて、気配りのできる宰相リチャード。
「大丈夫ですか? ララ様」
お父様が亡くなり、新たな国王としてアーサーお兄様がこれからなるとしても、重役になるに違いないリチャードは、感情がどこかに消えてしまうくらい消沈している私に声をかけてくれた。
周りを見ると、お兄様やお姉様の誰もいなくなっていた。どうやら、窓から差す日差しの角度からして、遺言書を読んでから大分時間が経ってしまったようだ。
「ごめんなさい。私ったら・・・」
愚図で、無能で、いる価値もない存在・・・・・・
そう思ったら、荒野のような無の心から悲しいって感情が湧水が染み渡るように溢れ出てきた。
「申し訳ございません」
「えっ。やめてくださいリチャード。そんな・・・・・・」
急にリチャードが深々と頭を下げてきた。
「私はララ様のお名前がないことを存じておりました。なのに、このような場にお呼びだてして、悲しい思いをさせてしまいました」
知っていたんだ・・・・・・
お父様はどこまで、この若き青年に信服を寄せていたのだろう。
(私と歳が近いのに・・・・・・)
彼にそこまで心を開いていたのであれば、そのわずかでもいいから私に心を開いて欲しかった。
「いいのよ、ありがとう。だって、この場に呼んで貰えない方が悲しいもの」
私はいつものように自分の感情を殺して、リチャードにお礼を言った。だけど、口の中はとても乾いていた。笑顔を作ってリチャードを安心させようと思ったのに、私の顔を見ていたリチャードの顔はますます曇り、
「ですが、前国王ラファエル様は誰よりもララ様のことを大切に思っておりました」
「嘘よ」
私はきっぱり言った。
リチャードの言葉は私のことを思いやって言ってくれたものでしょうが、さすがにそのお世辞は笑えなかった。
「いいえ、私は嘘は言いません」
私はびっくりした。
お姉様やお兄様の悪態に対しても、毅然とした態度を取っていたリチャードが、まさか子ども帰りしたようにムキになっていた。そして、いつも私に対して優しかったリチャードが私を否定してきたのがとてもショックで、私にはないと思っていた「ある感情」が私の心の奥の奥の奥の奥にある鎖がかかった扉から爆発した。
「ええ、そうよねっ。アナタはいつもそう。嘘は言わない。大嫌いな相手にだって少しぐらい好きになれる部分があれば、好きだと言う人よね。お父様だって私が生まれた瞬間とわずかな時間くらいは・・・誰よりも大切に想ってくれたかもしれないわねっ!! もうこの際だから言うわっ。あなたの社交辞令なんて吐き気がするのっ!! もう、うんざりだわっ!! もうっ、もうっ私に関わらないでっ!!!」
もしかしたら、生まれたことすら興味が無かった、もっと言えば、私が生まれたことを疎んだかもしれないと思ったら、言葉が詰まってしまったけれど、慣れない感情に任せて悪態をついた。そうしたら、心のモヤモヤはすっきりしたけれど、心の臓がバクバクして、罪悪感よりも高揚感で満たされた。
そうしたら、感情を表に出すことが少ないリチャードが昔のときのように悲しい顔をしていた。
「大丈夫ですか? ララ様」
お父様が亡くなり、新たな国王としてアーサーお兄様がこれからなるとしても、重役になるに違いないリチャードは、感情がどこかに消えてしまうくらい消沈している私に声をかけてくれた。
周りを見ると、お兄様やお姉様の誰もいなくなっていた。どうやら、窓から差す日差しの角度からして、遺言書を読んでから大分時間が経ってしまったようだ。
「ごめんなさい。私ったら・・・」
愚図で、無能で、いる価値もない存在・・・・・・
そう思ったら、荒野のような無の心から悲しいって感情が湧水が染み渡るように溢れ出てきた。
「申し訳ございません」
「えっ。やめてくださいリチャード。そんな・・・・・・」
急にリチャードが深々と頭を下げてきた。
「私はララ様のお名前がないことを存じておりました。なのに、このような場にお呼びだてして、悲しい思いをさせてしまいました」
知っていたんだ・・・・・・
お父様はどこまで、この若き青年に信服を寄せていたのだろう。
(私と歳が近いのに・・・・・・)
彼にそこまで心を開いていたのであれば、そのわずかでもいいから私に心を開いて欲しかった。
「いいのよ、ありがとう。だって、この場に呼んで貰えない方が悲しいもの」
私はいつものように自分の感情を殺して、リチャードにお礼を言った。だけど、口の中はとても乾いていた。笑顔を作ってリチャードを安心させようと思ったのに、私の顔を見ていたリチャードの顔はますます曇り、
「ですが、前国王ラファエル様は誰よりもララ様のことを大切に思っておりました」
「嘘よ」
私はきっぱり言った。
リチャードの言葉は私のことを思いやって言ってくれたものでしょうが、さすがにそのお世辞は笑えなかった。
「いいえ、私は嘘は言いません」
私はびっくりした。
お姉様やお兄様の悪態に対しても、毅然とした態度を取っていたリチャードが、まさか子ども帰りしたようにムキになっていた。そして、いつも私に対して優しかったリチャードが私を否定してきたのがとてもショックで、私にはないと思っていた「ある感情」が私の心の奥の奥の奥の奥にある鎖がかかった扉から爆発した。
「ええ、そうよねっ。アナタはいつもそう。嘘は言わない。大嫌いな相手にだって少しぐらい好きになれる部分があれば、好きだと言う人よね。お父様だって私が生まれた瞬間とわずかな時間くらいは・・・誰よりも大切に想ってくれたかもしれないわねっ!! もうこの際だから言うわっ。あなたの社交辞令なんて吐き気がするのっ!! もう、うんざりだわっ!! もうっ、もうっ私に関わらないでっ!!!」
もしかしたら、生まれたことすら興味が無かった、もっと言えば、私が生まれたことを疎んだかもしれないと思ったら、言葉が詰まってしまったけれど、慣れない感情に任せて悪態をついた。そうしたら、心のモヤモヤはすっきりしたけれど、心の臓がバクバクして、罪悪感よりも高揚感で満たされた。
そうしたら、感情を表に出すことが少ないリチャードが昔のときのように悲しい顔をしていた。
18
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
本当の聖女は私です〜偽物聖女の結婚式のどさくさに紛れて逃げようと思います〜
桜町琴音
恋愛
「見て、マーガレット様とアーサー王太子様よ」
歓声が上がる。
今日はこの国の聖女と王太子の結婚式だ。
私はどさくさに紛れてこの国から去る。
本当の聖女が私だということは誰も知らない。
元々、父と妹が始めたことだった。
私の祖母が聖女だった。その能力を一番受け継いだ私が時期聖女候補だった。
家のもの以外は知らなかった。
しかし、父が「身長もデカく、気の強そうな顔のお前より小さく、可憐なマーガレットの方が聖女に向いている。お前はマーガレットの後ろに隠れ、聖力を使う時その能力を使え。分かったな。」
「そういうことなの。よろしくね。私の為にしっかり働いてね。お姉様。」
私は教会の柱の影に隠れ、マーガレットがタンタンと床を踏んだら、私は聖力を使うという生活をしていた。
そして、マーガレットは戦で傷を負った皇太子の傷を癒やした。
マーガレットに惚れ込んだ王太子は求婚をし結ばれた。
現在、結婚パレードの最中だ。
この後、二人はお城で式を挙げる。
逃げるなら今だ。
※間違えて皇太子って書いていましたが王太子です。
すみません
【完結】愛されない令嬢は全てを諦めた
ツカノ
恋愛
繰り返し夢を見る。それは男爵令嬢と真実の愛を見つけた婚約者に婚約破棄された挙げ句に処刑される夢。
夢を見る度に、婚約者との顔合わせの当日に巻き戻ってしまう。
令嬢が諦めの境地に至った時、いつもとは違う展開になったのだった。
三話完結予定。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。
「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」
私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる