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1章
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優しくて、気配りのできる宰相リチャード。
「大丈夫ですか? ララ様」
お父様が亡くなり、新たな国王としてアーサーお兄様がこれからなるとしても、重役になるに違いないリチャードは、感情がどこかに消えてしまうくらい消沈している私に声をかけてくれた。
周りを見ると、お兄様やお姉様の誰もいなくなっていた。どうやら、窓から差す日差しの角度からして、遺言書を読んでから大分時間が経ってしまったようだ。
「ごめんなさい。私ったら・・・」
愚図で、無能で、いる価値もない存在・・・・・・
そう思ったら、荒野のような無の心から悲しいって感情が湧水が染み渡るように溢れ出てきた。
「申し訳ございません」
「えっ。やめてくださいリチャード。そんな・・・・・・」
急にリチャードが深々と頭を下げてきた。
「私はララ様のお名前がないことを存じておりました。なのに、このような場にお呼びだてして、悲しい思いをさせてしまいました」
知っていたんだ・・・・・・
お父様はどこまで、この若き青年に信服を寄せていたのだろう。
(私と歳が近いのに・・・・・・)
彼にそこまで心を開いていたのであれば、そのわずかでもいいから私に心を開いて欲しかった。
「いいのよ、ありがとう。だって、この場に呼んで貰えない方が悲しいもの」
私はいつものように自分の感情を殺して、リチャードにお礼を言った。だけど、口の中はとても乾いていた。笑顔を作ってリチャードを安心させようと思ったのに、私の顔を見ていたリチャードの顔はますます曇り、
「ですが、前国王ラファエル様は誰よりもララ様のことを大切に思っておりました」
「嘘よ」
私はきっぱり言った。
リチャードの言葉は私のことを思いやって言ってくれたものでしょうが、さすがにそのお世辞は笑えなかった。
「いいえ、私は嘘は言いません」
私はびっくりした。
お姉様やお兄様の悪態に対しても、毅然とした態度を取っていたリチャードが、まさか子ども帰りしたようにムキになっていた。そして、いつも私に対して優しかったリチャードが私を否定してきたのがとてもショックで、私にはないと思っていた「ある感情」が私の心の奥の奥の奥の奥にある鎖がかかった扉から爆発した。
「ええ、そうよねっ。アナタはいつもそう。嘘は言わない。大嫌いな相手にだって少しぐらい好きになれる部分があれば、好きだと言う人よね。お父様だって私が生まれた瞬間とわずかな時間くらいは・・・誰よりも大切に想ってくれたかもしれないわねっ!! もうこの際だから言うわっ。あなたの社交辞令なんて吐き気がするのっ!! もう、うんざりだわっ!! もうっ、もうっ私に関わらないでっ!!!」
もしかしたら、生まれたことすら興味が無かった、もっと言えば、私が生まれたことを疎んだかもしれないと思ったら、言葉が詰まってしまったけれど、慣れない感情に任せて悪態をついた。そうしたら、心のモヤモヤはすっきりしたけれど、心の臓がバクバクして、罪悪感よりも高揚感で満たされた。
そうしたら、感情を表に出すことが少ないリチャードが昔のときのように悲しい顔をしていた。
「大丈夫ですか? ララ様」
お父様が亡くなり、新たな国王としてアーサーお兄様がこれからなるとしても、重役になるに違いないリチャードは、感情がどこかに消えてしまうくらい消沈している私に声をかけてくれた。
周りを見ると、お兄様やお姉様の誰もいなくなっていた。どうやら、窓から差す日差しの角度からして、遺言書を読んでから大分時間が経ってしまったようだ。
「ごめんなさい。私ったら・・・」
愚図で、無能で、いる価値もない存在・・・・・・
そう思ったら、荒野のような無の心から悲しいって感情が湧水が染み渡るように溢れ出てきた。
「申し訳ございません」
「えっ。やめてくださいリチャード。そんな・・・・・・」
急にリチャードが深々と頭を下げてきた。
「私はララ様のお名前がないことを存じておりました。なのに、このような場にお呼びだてして、悲しい思いをさせてしまいました」
知っていたんだ・・・・・・
お父様はどこまで、この若き青年に信服を寄せていたのだろう。
(私と歳が近いのに・・・・・・)
彼にそこまで心を開いていたのであれば、そのわずかでもいいから私に心を開いて欲しかった。
「いいのよ、ありがとう。だって、この場に呼んで貰えない方が悲しいもの」
私はいつものように自分の感情を殺して、リチャードにお礼を言った。だけど、口の中はとても乾いていた。笑顔を作ってリチャードを安心させようと思ったのに、私の顔を見ていたリチャードの顔はますます曇り、
「ですが、前国王ラファエル様は誰よりもララ様のことを大切に思っておりました」
「嘘よ」
私はきっぱり言った。
リチャードの言葉は私のことを思いやって言ってくれたものでしょうが、さすがにそのお世辞は笑えなかった。
「いいえ、私は嘘は言いません」
私はびっくりした。
お姉様やお兄様の悪態に対しても、毅然とした態度を取っていたリチャードが、まさか子ども帰りしたようにムキになっていた。そして、いつも私に対して優しかったリチャードが私を否定してきたのがとてもショックで、私にはないと思っていた「ある感情」が私の心の奥の奥の奥の奥にある鎖がかかった扉から爆発した。
「ええ、そうよねっ。アナタはいつもそう。嘘は言わない。大嫌いな相手にだって少しぐらい好きになれる部分があれば、好きだと言う人よね。お父様だって私が生まれた瞬間とわずかな時間くらいは・・・誰よりも大切に想ってくれたかもしれないわねっ!! もうこの際だから言うわっ。あなたの社交辞令なんて吐き気がするのっ!! もう、うんざりだわっ!! もうっ、もうっ私に関わらないでっ!!!」
もしかしたら、生まれたことすら興味が無かった、もっと言えば、私が生まれたことを疎んだかもしれないと思ったら、言葉が詰まってしまったけれど、慣れない感情に任せて悪態をついた。そうしたら、心のモヤモヤはすっきりしたけれど、心の臓がバクバクして、罪悪感よりも高揚感で満たされた。
そうしたら、感情を表に出すことが少ないリチャードが昔のときのように悲しい顔をしていた。
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