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1章

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「皆さん、よろしいですか」

 宰相リチャードの透き通った声に私たち12人の兄弟姉妹は頷く。
 「英雄色を好む」とは言うけれど、お父様であるラファエル国王は様々な女性と関係を持った。だから、私たちの母親は全員別だ。

 だから、この「一大事」に対しても、考え方はバラバラで、私と同じようにお互い協力すると言う発想を持っているお兄様やお姉様はいらっしゃらないご様子。

(まぁ、私とは協力したくないのかもしれませんが・・・・・・)

 未だにわずかながら身長も伸び、身体付きも幼さが残る私は、まだまだ多くのことで勉強不足で、10歳年上の第九王女のリラお姉様たちに馬鹿にされている私と組むメリットがないと考えていても不思議ではない。

 12人も兄弟姉妹の末っ子である私ララの16歳。一番歳が近い第十一王女ミネルヴァお姉様ですら、5歳離れていて、第一王子であり余裕の表情を浮かべているアーサーお兄様は35歳で親と子ほど年が離れている。

『ララ様は優秀ですよ。この年齢でここまで覚えた御兄弟はおりませんと国王陛下も仰っておりました』

 そう言って励ましくれた宰相リチャード。
 でも、本当に優秀な人を私は知っている。

 彼だ。
 
 彼も私と歳が2つしか違わないのに、膨大な知識と、斬新なアイディア、そして年上であっても納得させる人間性によって、若くして宰相をお父様であるラファエル国王に任された。「現実は小説よりも奇なり」なんて言葉があるけれど、私が学んだ歴史書にも創作の物語であってもそんな人は彼を除いていない。

「早く始めろや」

 軍で数々の武功をあげた第三王子のアレキサンダーお兄様が立ち上って威嚇するような声でリチャードに言う。先ほどから小刻みに揺らしていた身体は疼くご様子で、今にもリチャードに襲いかかり、この場で所持を禁じられていたはずの腰に携えた刀で切りかかっても不思議ではなさそうだ。

「いいでしょう。ただ、お座りください」

 それに怯むことなく、真っすぐな瞳でリチャードがアレキサンダーお兄様を見返す。

「ちっ」

 動物で言えば、先に目を逸らした方が負け。
 にもかかわらず、野性的なアレキサンダーお兄様が先に目を逸らし、椅子へと座る。

 それを確認したリチャードは、侍女が持っていた盆の上に置いてあった封筒を左手で持ち、私たちに封が開いていないことを見せ、王家に代々伝わる銀色に光り輝くレターカッターで開封する。

「これより・・・・・・遺言書を読み上げます」

 そう、「一大事」とは、私たちのお父様であるラファエル国王が崩御されたのだ。
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