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「降伏だ。レオナルド王子」

 最も最後にマルクス国王を裏切った四天王が、レオナルド王子に話しかける。 

「ふぅ・・・っ」

 アーニャは歌うのを止めて、深呼吸をする。

「お疲れ様。アーニャ」

 レオナルド王子がアーニャの背中を擦る。

「ここに戦争をっ」

「戦争か?」

 レオナルド王子が宣言をしようとすると、ルーカスが茶々を入れる。レオナルド王子はどういうことなのかを考えながらアーニャの顔を見る。

「ふふっ」

(そうだね、これは戦争じゃない・・・)

「仲直り・・・でどうだい? アーニャ」

「はぁっ!?」

 ルーカスがそのネーミングセンスに不審な顔をするが、

「うん」

 アーニャが満面の笑みで笑った。
 ともすれば、ルーカスは何も言えなくなる。

「じゃあ、ここで仲直りってことで」

 レオナルド王子もニコっと笑った。
 アーニャはその笑顔を見て、平和が似合ういい笑顔だと思った。
 

「なぜだっ!!?」

 マルクス国王は叫んだけれど、みんな目を逸らした。
 負けを認められないマルクス国王は一人で反発していたけれど、付き従う兵士はいなかった。
 みんな、もう戦には懲り懲りしていたようだ。

 レオナルド王子は3万を超える兵士を受け入れた。
 ただ、兵士としてではなく、大工だったり、農家だったり、工芸家だったり、ハンターだったり、職業選択の自由を与えた。でも、彼らが頑張ったのは、道を作ることだった。
 
 ユーロピア王国とルマンド王国が繋がる道。
 ルーカスが道案内をしたけれど、その道が遠回りで工事は長期化した。そのことで最初にルーカスは凹んでいたけれど、最短距離には狂暴な野獣などがいたり、実はその遠回りの道こそ最善の道であることがわかり、ルーカスの野生の勘が改めて、再評価された。

 名前をピースロードと名付けた。
 道が開くと、多くの商人が行き来して、物流や知識を互いに国にもたらした。
 しかし一番は―――

「ほらっ、捕まれ」

「えーーーっ」

 ルーカスがアーニャの腕を自分の腰回りに引っ張り、脚で馬の胴体を叩いて合図を送ると、馬が速度を上げる。

「今日のライブはランチタイムにユーロピア王国、その次が、ニア王国で・・・明日は、テラスタ共和国・・・」

「あはははっ・・・」

「なぁ、アーニャ」

 ちらっと後ろを見るルーカス。

「なに?」

 必死に捕まりながらも、ルーカスの顔を見るアーニャ。

「歌うのは好きか?」

 楽しそうにどこにでも行けるようになった世界を縦横無尽に駆け巡るのがとても楽しそうなルーカス。
 彼の清々しい顔を見て、

「大好きっ!!!」

 とたいそう嬉しそうに叫んだ。
 
 彼女の癒しの歌は今日も風に乗って、みんなに笑顔を届けに行く。

 fin



 
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