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「よろしくお願いします。ですが・・・私はアナタもこの国も死なせる気はありませんよ」

 アーニャがそう微笑みかけると、レオナルド王子は頬を赤らめた。

「んんんっ」

 その雰囲気にルーカスは自分に生まれた初めての感情に戸惑ったが、それ以上に二人をそのままにしてはいけないと思った。

「もちろん、俺も行くぞ」

 二人の手を離して、両手で二人の手と握手するルーカス。

「あっ、ああそうだな。そうしていただけると心強い」

 レオナルド王子もこれから死地へと赴くのに、アーニャと永遠に見つめ合えていればなんて考えていたのを少し恥ずかしく感じて照れる。

「そうね・・・ルーカスお願いするわ」

 アーニャも男性から初めて紳士的な対応を取られたのでドキドキしていたが、髪を整えながら、気持ちも整える。

「ぬぬぬっ」

 ルーカスは二人の心がそのままなのがもやもやして二人を交互に疑るように見た。
 そんな3人を国王は微笑ましく眺めていた。



「門を開けよ」

「・・・はっ」

 レオナルド王子の言葉に門番は躊躇した。大軍が来ていると言うのに、レオナルド王子が門の外へ出ていこうとしているのは自殺行為だと頭によぎったのもそうだし、何より、たったの3人。それも一人は女の子で、一人で馬に乗っているのも不安そうにしていたからだ。けれど、レオナルド王子が凛々しく命令し、見つめ続けていたのを受けて、命令に従って他の門番と共に門を開ける。

 アーニャを真ん中に、3人は顔を見合わせてお互いに覚悟ができているか確認する。
 
 コクッ

「門が開きますっ!!!」

 ギイイイイイィ

 3人は前を見る。
 すると、3万以上の兵が並んでいた。

「少し減ったな」

 ルーカスは余裕を浮かべながら喋った。
 末端とは言え、軍に属して、何より生き残ってきたルーカスには連戦の疲れ、士気の低さは遠くからでもすぐにわかった。

「・・・そうね」

 アーニャには兵が減ったかなんてわからない。それに士気の低さなんてものはわからない。
 けれど、その兵士たちの悲しみと苦しみはわかった。

「おいおい、大丈夫か、王子様よう?」

 元々自分のいた国の軍。しかも、見慣れている二人と違って、ほとんど軍を見たことのないレオナルド王子にとって、その大軍は恐怖しかなかった。

「あぁ・・・大丈夫だ。行こう」

 3人は馬を歩かせる。
 アーニャの歌が大軍に聞こえるその場所まで。

 ウウウウンッ

「きゃっ」

「おっとっとっ」

 3人よりも先にアーニャが乗っていた馬が興奮する。
 ルーカスとレオナルド王子が両サイドから馬を落ち着かせる。

「・・・ありがとうっ」

 アーニャは二人に馬を落ち着かせてお礼を言うけれど、馬はまだ心が落ち着いていないようだった。
 そんな馬を撫でて、アーニャは、

「草原の彼方、風は踊る―――」

 馬のために歌を歌い出した。
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