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「アーニャ、王、マルクス様の命により、処刑にするぞぉーーーっ!!!?」

(ちょっと、わざとらしいか?)

(((いや、ナイス)))

 四天王の一人がアーニャが逃げられるようにとても遠くから、大声で叫ぶ。叫んだ四天王が他の四天王の反応を見ると、みんな親指を立てていた。

「やっ、ヤバイっ。四天王だっ」

 それに気が付いたのは、アーニャよりも先にルーカスだった。

「にっ、逃げるぞ、アーニャっ」

「えっ、あっ、ちょっと・・・っ」

 アーニャの腕を握ってルーカスが走る。

「なっ!?」

 しかし、運動神経がにぶいアーニャは転びそうになる。

((((アーニャッ!!!!!))))

 ルーカスへの怒りに四天王は怒った顔をして、心の中で叫ぶ。

「うわっっと」

 ルーカスは器用にアーニャをキャッチして、

「えっ・・・」

 お姫様抱っこしていた。
 アーニャもさすがに照れて、顔を赤らめる。

「こっちの方が速い、行きますよぉ~~~っ!!」

 そう言って、脱兎のごとくルーカスは走って逃げた。

(なぁ・・・あんな奴に任せていいのか?)

(だって、仕方ないだろ? さすがにアーニャちゃんに俺たちなら追いついちゃうだろうが)

(あっ、てめー。なにアーニャちゃんなんてちゃん呼びしてんだよ。あ~、アーニャちゃん、アーニャちゃん)

(はぁっ!? てめー、俺のアーニャちゃん、アーニャちゃん、アーニャちゃんにちゃん呼びするな。ちゃん呼びは俺の特権だぞっ!?)

(はぁ? 知るか。てか、アーニャちゃんはお前のものじゃないしな)

(なんだとぉ!?)

(やるかぁっ!?)

 そんな風に四天王は心の中で会話しながら、ルーカスの追ったふりだけ続けたが、4人と2人の距離はあっという間に離れていった。




「ふぅ・・・ここまでくればもう安心だ」

 ルーカスがアーニャを木の株に降ろして、額を拭う。

「あの~」

「ん? 礼ならよしてくれ。これは恩返しだから」

 にこっと白い歯を見せるルーカス。
 達成感でとても気持ちが良さそうな顔をしてる。

「礼・・・ここ、国外なんですけど?」

「あぁ、そうだが?」

 恐る恐る聞いたアーニャにルーカスは悪びれも無く答える。

「お金は?」

「ない」

「食料は?」

「ない」

「水は・・・?」

「もちろんないぞ?」

「・・・」

 ジト目でルーカスを見るアーニャ。
 それを不思議がるルーカス。

「じゃ、ありがとうございました」

 そう言って、アーニャは国に帰ろうとする。

「いやいや、ダメだよ。アーニャ。マルクス様は血の気の多い人だって知ってるでしょ。帰ったら、殺されるよ」

「一度帰って、旅に必要な物を用意してから、国を出ます」

「無理無理。だって・・・」

「だって?」

「そっち、ルマンド王国じゃないと思うぞ」

「じゃあ、どっちが」

「わからん」

「はい?」

「だって俺たち・・・迷子だもん」

 ルーカスがベロを出して、ウインクして見せた。
 癒しの歌姫アーニャは死にそうな人を助けることに使命を感じていたけれど、初めて殺意というものをもったかもしれなかった。
 

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