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私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。

けれど、それを貴方様、レオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。
大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。
だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。



―――それも、貴方様と私の未来のため。それなのに・・・・・・


「これはどういうことですか? 王子」

 国政を勉強するうちに大臣達からも厚い信頼を寄せていただけるようになった私は、連日連夜、大臣達から相談に乗り、一緒に視察を行き、今日ようやく時間が取れたので愛しい貴方様の顔を合わせようと参りましたのに。なぜ、貴方様とその見知らぬ女性は、はだけていらっしゃるのでしょうか。

「なっ、なんのことだ?」

 白々しいにもほどがあります。貴方様の目は泳いでおり、女性の方は王妃である私に挨拶もせず、何食わぬ顔で目も合わせないではないですか。

「これは・・・・・・っ」

 私はベットの近くにあったワインボトルを手に取ります。それは私とレオナード王子が大切な日に一緒に飲もうと大事にワイナリーに寝かせていた物でした。

「???」

 私はレオナード王子の顔を睨むようにみましたが、王子はなんのことか、ピンと来ていないようでした。

(わかりました・・・・・・)

「レオナード王子、今まで大変お世話になりました。離縁いたしましょう」

 私がゆっくりとお辞儀をして再び顔を上げると、レオナード王子の顔は喜んだ顔していて、私と目が合うと慌てて取り繕った表情をし、

「なっ、何を言っているんだっ、ヴィクトリア。これしきのことで」

 そうでしょうね。貴方様にとっては「これしきのこと」。でも私にとっては―――

「はい。私にとっては重要なことなので」

 私の意志は揺るぎません。だって、その方が貴方様のためでもあるでしょう?

「ふんっ。可愛げのない奴め。そんなだから、俺はこいつを抱いたのだ」

 そう言って、その女性の肩を抱いて見せてくるレオナード王子。
 
 あぁっ!!!

 あぁっ!!!

 あなた様は、「私だけを愛する」そう私に仰ってくださったのに。
 私だって、無垢なままで、貴方様に甘えるだけいいのであれば、そうしたのにっ。
 そのワインを貴方様と美味しく飲める日を楽しみにしていましたのにっ!!!

 それなのに、それなのにっ!!!

「では、荷物をまとめて、来週には出ていかせていただきます」

 私は思いをぐっと堪えて、そうレオナード王子にお伝えすると、

「いいや。明日だ。早くこいつを迎え入れたい」

 そう言って、レオナード王子は今度はその女性の頬にキスをしました。流石に私も耐え兼ねて、罵声を浴びせて立ち去りたかったですが、やらねばならないことがあったので、そんな暇もありません。

「わかりました、すぐに用意致します」

 そうレオナード王子に告げて部屋を後にしました。

 


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