3 / 12
中学生編 プロローグ
3話 憂う横顔
しおりを挟む
こんな寒い日々が続いてもあの時の熱い日々を思い返すと、胸が熱くなる。
中学1年生の時。
「おい、タカヒロ。俺とダブルス組もうぜ」
タカヒロのあんな意表を突かれたようなタカヒロの顔は今にも先にもあの時だけだ。
声をかけた理由はそんな大したもんじゃない。
笑った顔が見たかったから、だ。
タカヒロの小学校はこっちの出身ではなく、都会から来たから誰も知り合いがいなかった。
その上、タカヒロは見知りかどうなのかわからないけれど、一人でいても不安を感じさせない完璧超人に見えて、俺以外の奴からすると話しかけづらいオーラがあったようだ。
でも、俺にはタカヒロの横顔が寂しそうに見えたし、その涼し気な顔がカッコいいと思いつつも、笑ったらどんな顔になるのか見たいと思ったから声をかけた。
それから俺とタカヒロは仲良くなり、よくダブルスのペアを組んだ。
おこがましいかもしれないが、タカヒロは俺を通してみんなとの信頼関係を築いた。
テニスの方も俺がリードをしていたはずだったいつの間にか、無茶苦茶に攻める俺の穴を埋めてくれていたのがタカヒロだった。
例えるなら、俺が孫悟空で、タカヒロがお釈迦様といった感じだろうか。
どんな動きをしても、後ろでフォローしてくれたのがタカヒロだった。
そして、同地区の佐藤・伊藤ペアに1年の頃から何度も対戦した。
俺たちも中学では期待の新人だなんて騒がれていたが、奴らは最初から完成されたプレーを1年生の時からできていて、何度も対戦したけれど、対戦するたびに連敗を重ねた。
2年生の時の秋。
佐藤・伊藤ペアを新人戦であと一歩まで追い詰めた俺とタカヒロ。
それから、俺とタカヒロはテクニックもパワーもスピードも、そして、タクティクスも磨いて臨んだ最後の夏。
「よしっ、行けるぞっ、タカヒロ」
「おうっ」
しかし、行けなかった。
東信大会、そして県大会とチャンスは2回あったけれど、佐藤・伊藤ペアに俺たちは破れ、北信越大会、そして・・・夢見て憧れてた全国大会はかすんで消えた。
最後のミーティングの後、俺とタカヒロは部長と副部長としての仕事をやり終えた後、泣いて抱き合った。そして、タカヒロは俺の耳元で感情の乗った言葉を力強く言った。
「次は、高校でリベンジだ・・・っ」
「・・・おうっ」
俺もあの時のタカヒロの熱い身体と冷たい手のひらをよく覚えている。
(・・・いい思い出だったな)
しかし、それは終わった過去。
俺はそんな包容力のあるタカヒロから卒業することを選ぶんだ。
中学1年生の時。
「おい、タカヒロ。俺とダブルス組もうぜ」
タカヒロのあんな意表を突かれたようなタカヒロの顔は今にも先にもあの時だけだ。
声をかけた理由はそんな大したもんじゃない。
笑った顔が見たかったから、だ。
タカヒロの小学校はこっちの出身ではなく、都会から来たから誰も知り合いがいなかった。
その上、タカヒロは見知りかどうなのかわからないけれど、一人でいても不安を感じさせない完璧超人に見えて、俺以外の奴からすると話しかけづらいオーラがあったようだ。
でも、俺にはタカヒロの横顔が寂しそうに見えたし、その涼し気な顔がカッコいいと思いつつも、笑ったらどんな顔になるのか見たいと思ったから声をかけた。
それから俺とタカヒロは仲良くなり、よくダブルスのペアを組んだ。
おこがましいかもしれないが、タカヒロは俺を通してみんなとの信頼関係を築いた。
テニスの方も俺がリードをしていたはずだったいつの間にか、無茶苦茶に攻める俺の穴を埋めてくれていたのがタカヒロだった。
例えるなら、俺が孫悟空で、タカヒロがお釈迦様といった感じだろうか。
どんな動きをしても、後ろでフォローしてくれたのがタカヒロだった。
そして、同地区の佐藤・伊藤ペアに1年の頃から何度も対戦した。
俺たちも中学では期待の新人だなんて騒がれていたが、奴らは最初から完成されたプレーを1年生の時からできていて、何度も対戦したけれど、対戦するたびに連敗を重ねた。
2年生の時の秋。
佐藤・伊藤ペアを新人戦であと一歩まで追い詰めた俺とタカヒロ。
それから、俺とタカヒロはテクニックもパワーもスピードも、そして、タクティクスも磨いて臨んだ最後の夏。
「よしっ、行けるぞっ、タカヒロ」
「おうっ」
しかし、行けなかった。
東信大会、そして県大会とチャンスは2回あったけれど、佐藤・伊藤ペアに俺たちは破れ、北信越大会、そして・・・夢見て憧れてた全国大会はかすんで消えた。
最後のミーティングの後、俺とタカヒロは部長と副部長としての仕事をやり終えた後、泣いて抱き合った。そして、タカヒロは俺の耳元で感情の乗った言葉を力強く言った。
「次は、高校でリベンジだ・・・っ」
「・・・おうっ」
俺もあの時のタカヒロの熱い身体と冷たい手のひらをよく覚えている。
(・・・いい思い出だったな)
しかし、それは終わった過去。
俺はそんな包容力のあるタカヒロから卒業することを選ぶんだ。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
風邪ひいた社会人がおねしょする話
こじらせた処女
BL
恋人の咲耶(さくや)が出張に行っている間、日翔(にちか)は風邪をひいてしまう。
一年前に風邪をひいたときには、咲耶にお粥を食べさせてもらったり、寝かしつけてもらったりと甘やかされたことを思い出して、寂しくなってしまう。一緒の気分を味わいたくて咲耶の部屋のベッドで寝るけれど…?
マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー
夏目碧央
BL
強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。
一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。
咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人
こじらせた処女
BL
過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。
それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。
しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?
ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル
こじらせた処女
BL
とある2人組アイドルグループの鮎(アユ)(16)には悩みがあった。それは、グループの中のリーダーである玖宮(クミヤ)(19)と2人きりになるとうまく話せないこと。
若干の尿意を抱えてレッスン室に入ってしまったアユは、開始20分で我慢が苦しくなってしまい…?
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる