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中学生編 プロローグ

3話 憂う横顔

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 こんな寒い日々が続いてもあの時の熱い日々を思い返すと、胸が熱くなる。

 中学1年生の時。
 
「おい、タカヒロ。俺とダブルス組もうぜ」
 タカヒロのあんな意表を突かれたようなタカヒロの顔は今にも先にもあの時だけだ。
 
 声をかけた理由はそんな大したもんじゃない。
 笑った顔が見たかったから、だ。

 タカヒロの小学校はこっちの出身ではなく、都会から来たから誰も知り合いがいなかった。
 その上、タカヒロは見知りかどうなのかわからないけれど、一人でいても不安を感じさせない完璧超人に見えて、俺以外の奴からすると話しかけづらいオーラがあったようだ。

 でも、俺にはタカヒロの横顔が寂しそうに見えたし、その涼し気な顔がカッコいいと思いつつも、笑ったらどんな顔になるのか見たいと思ったから声をかけた。

 それから俺とタカヒロは仲良くなり、よくダブルスのペアを組んだ。
 おこがましいかもしれないが、タカヒロは俺を通してみんなとの信頼関係を築いた。

 テニスの方も俺がリードをしていたはずだったいつの間にか、無茶苦茶に攻める俺の穴を埋めてくれていたのがタカヒロだった。
 例えるなら、俺が孫悟空で、タカヒロがお釈迦様といった感じだろうか。
 どんな動きをしても、後ろでフォローしてくれたのがタカヒロだった。

 そして、同地区の佐藤・伊藤ペアに1年の頃から何度も対戦した。
 俺たちも中学では期待の新人だなんて騒がれていたが、奴らは最初から完成されたプレーを1年生の時からできていて、何度も対戦したけれど、対戦するたびに連敗を重ねた。
 
 2年生の時の秋。
 佐藤・伊藤ペアを新人戦であと一歩まで追い詰めた俺とタカヒロ。
 それから、俺とタカヒロはテクニックもパワーもスピードも、そして、タクティクスも磨いて臨んだ最後の夏。

「よしっ、行けるぞっ、タカヒロ」

「おうっ」

 しかし、行けなかった。
 
 東信大会、そして県大会とチャンスは2回あったけれど、佐藤・伊藤ペアに俺たちは破れ、北信越大会、そして・・・夢見て憧れてた全国大会はかすんで消えた。

 最後のミーティングの後、俺とタカヒロは部長と副部長としての仕事をやり終えた後、泣いて抱き合った。そして、タカヒロは俺の耳元で感情の乗った言葉を力強く言った。

「次は、高校でリベンジだ・・・っ」

「・・・おうっ」

 俺もあの時のタカヒロの熱い身体と冷たい手のひらをよく覚えている。

(・・・いい思い出だったな)

 しかし、それは終わった過去。
 俺はそんな包容力のあるタカヒロから卒業することを選ぶんだ。

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