【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。

西東友一

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 それからリチャードは戦争へと向かった。

 私も行きたいと言ったけれど、当然リチャードの部下たちは私が行くことを賛成することはなく、私は軟禁されたように豪華な客間で日々を過ごしていた。

 幼馴染と元婚約者の戦い。

 多くの人が自国のために戦い、多くの人が命を落とす。
 私は小さくてよくわからなかったけれど、父の仕事の関係で他国であるザクセンブルク公国へよく訪れて、リチャードとは仲良くなれた。父の関係で優しくしてくれる大人も何人かいたけれど、小さかった私はまったく興味がなく、同年代のリチャードのことしか覚えていない。私の少女時代の思い出は戦争に行ってしまったリチャードで埋め尽くされている。

 私はリチャードに勝って欲しいと思っている。
 だって、エドワードのあの侮蔑するような目は赦せないし、私から何もかも奪っていった。
 そして私の手にあるこの手紙の内容が真実であれば、敬愛するお父様や、お母様は事故ではなく、エドワードに近しい人が殺したのかもしれない。

 けれど、私と親しかった人たちはリチャードの下にはほとんどいないけれど、もしかしたらエドワードの下にはそんな兵士がいるかと思うと、心が押しつぶされる様な思いだった。この手紙の内容が本当であれば、きっと仲良くしていた人たちはエドワードに反旗を翻していた穏健派やその家族の可能性が高く、エドワードになんか手を貸さないだろう。

 でも、ほとんど情報が私に入ってこないし、中にはそんな派閥に属さずに国を守るために戦いに向かう友人もいたかもしれない。
 
(戦争なんて・・・嫌い)

 お父様が避けたいと望んだ戦争が始まってしまった。
 そして、私には何もできない蚊帳の外。

 どっちが勝っても、どっちが負けても私が得るものはほとんどなく、失って悲しい想いをするのは明らかだ。
 私が願えるのは、私に良くしてくれた人たちが無事でいること。ただそれだけだった。

 そして、自己中心的な考えかもしれないけれど、戦争なんかよりも、私は早く手紙のことをリチャードやザクセンブルク王に聞きたいと思っていた。ただ、元々防衛のためとはいえ、ワーテル王時代から軍事にそれなりの力を入れていたワルタイト王国と、奇襲作戦を私のお父様から事前に知っており、着実な準備ができたであろうザクセンブルク公国の戦いは長期戦が必至だと思っていた。

 しかし、戦争は思いがけない形で中断される。

「大変だっ」

 兵士が遠くで叫んでいるのが聞こえて、私は近づいてみる。

「どうしたんだ・・・?」

 疲れて地面に座り込む兵士に声をかける大臣。

「王が・・・っ、ザクセンブルク国王が、暗殺されたっ!!!」





 
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