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「リチャード・・・手紙を読ませてくれてありがとう・・・」
私はリチャードへお礼を言う。
けれど、リチャードの顔は晴れない。
なんで、リチャードはこんなに申し訳なさそうな顔をしているのだろうか。
私は手紙を注意深く見る。
(もしかして、暗号?)
私は縦読みをしてみるが、別に意味を持っていなそうだ。
(父が暗号を使うなら・・・)
とも、思ったけれど、全然思いつかないし、そもそも暗号を使うのであれば密告の内容を暗号化するに違いない。 私は手紙の裏面を見るけれど、何も書いていない。
「あっ」
私は封筒の方を見る。
そんな私の姿を見て、さらにリチャードは顔を暗くする。やっぱり、そういうところは昔と変わらない。
「そんな・・・」
封筒の日付は11月。
半月も前の日付だった。
私は訴えるような目でリチャードを見る。
「どうして・・・お父様を・・・っ」
「すまない・・・」
「私が欲しいのは謝罪じゃないっ。理由を教えてよ」
「・・・信じてくれないかもしれないが、ボクがそれを知ったのはつい最近なんだ。とはいえ、キミのお父様が亡くなる数週間前。ボクが知ってすぐに動いていれば、キミの父君も母君も助かったかもしれないのに。ボクは・・・」
拳を震わせるリチャード。
きっとリチャードの言っていることは本当だろう。
けれど、再びぶり返したこのやるせない気持ちはどこにぶつけたらいいのだろうか。
(そういうことか・・・)
私は理解した。
私が昏睡状態でこの王宮に来たのもあるけれど、いまだに国王にあっていない。
(それが意味するのは・・・負い目なのか、それとも・・・っ)
私は下を向いた。
力を込めて振るわせたい拳だったけれど、力が入らなかった。
「ねぇ、リチャード。私、国王様にお会い・・・」
タッタッタッタッ
「王子、報告があります」
兵士が走ってきて、敬礼する。
「後にしてくれるかな?」
リチャードは私から目線を逸らさずに兵士に伝える。
兵士は困惑しながらも、
「僭越ながら、国王様からの名でございますっ!」
「リチャード、私の話はあとでいいから」
私がニコっと笑顔を作ると、リチャードはその兵士の方を見る。
「父上はなんと?」
「エドワード王子率いるワルタイト王国が攻めてきたとのことっ、至急、陛下と共に指揮を執れとのことですっ!!」
「えっ・・・」
私が放心状態になっていたけれど、そんな私の前をリチャードは凛々しい顔をして通る。
「あぁ・・・わかった」
それは少年の頃のリチャードの顔ではなく、戦に行く男の顔であり、戦争を指揮する王子の顔であり、そして、国を治めるであろう次期国王の顔であった。
私はリチャードへお礼を言う。
けれど、リチャードの顔は晴れない。
なんで、リチャードはこんなに申し訳なさそうな顔をしているのだろうか。
私は手紙を注意深く見る。
(もしかして、暗号?)
私は縦読みをしてみるが、別に意味を持っていなそうだ。
(父が暗号を使うなら・・・)
とも、思ったけれど、全然思いつかないし、そもそも暗号を使うのであれば密告の内容を暗号化するに違いない。 私は手紙の裏面を見るけれど、何も書いていない。
「あっ」
私は封筒の方を見る。
そんな私の姿を見て、さらにリチャードは顔を暗くする。やっぱり、そういうところは昔と変わらない。
「そんな・・・」
封筒の日付は11月。
半月も前の日付だった。
私は訴えるような目でリチャードを見る。
「どうして・・・お父様を・・・っ」
「すまない・・・」
「私が欲しいのは謝罪じゃないっ。理由を教えてよ」
「・・・信じてくれないかもしれないが、ボクがそれを知ったのはつい最近なんだ。とはいえ、キミのお父様が亡くなる数週間前。ボクが知ってすぐに動いていれば、キミの父君も母君も助かったかもしれないのに。ボクは・・・」
拳を震わせるリチャード。
きっとリチャードの言っていることは本当だろう。
けれど、再びぶり返したこのやるせない気持ちはどこにぶつけたらいいのだろうか。
(そういうことか・・・)
私は理解した。
私が昏睡状態でこの王宮に来たのもあるけれど、いまだに国王にあっていない。
(それが意味するのは・・・負い目なのか、それとも・・・っ)
私は下を向いた。
力を込めて振るわせたい拳だったけれど、力が入らなかった。
「ねぇ、リチャード。私、国王様にお会い・・・」
タッタッタッタッ
「王子、報告があります」
兵士が走ってきて、敬礼する。
「後にしてくれるかな?」
リチャードは私から目線を逸らさずに兵士に伝える。
兵士は困惑しながらも、
「僭越ながら、国王様からの名でございますっ!」
「リチャード、私の話はあとでいいから」
私がニコっと笑顔を作ると、リチャードはその兵士の方を見る。
「父上はなんと?」
「エドワード王子率いるワルタイト王国が攻めてきたとのことっ、至急、陛下と共に指揮を執れとのことですっ!!」
「えっ・・・」
私が放心状態になっていたけれど、そんな私の前をリチャードは凛々しい顔をして通る。
「あぁ・・・わかった」
それは少年の頃のリチャードの顔ではなく、戦に行く男の顔であり、戦争を指揮する王子の顔であり、そして、国を治めるであろう次期国王の顔であった。
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