17 / 28
17
しおりを挟む
パシッ
私はリチャードの問いに答えることなく、睨むような顔をしてその手紙を奪う。
リチャードは仕方なさそうな顔をして、お父様からの手紙を手放した。
ゴクンッ
私は喉を鳴らす。
急遽馬車に跳ねられて亡くなってしまったお父様たち。
私が聞いた最後の言葉は『行ってくるよ、愛しいアリア』。
玄関で振り返った二人の笑顔が私の脳裏で焼き付いて離れない。
だけれど、欲を言えばその言葉が最後の言葉では物足りないと思っていた私。
だって、大好きな二人とはもっといろんな話をしたかったし、いろんなことを相談したかった。味気ない言葉では私の心は寂しくてみたされないのだから。だから、文章のどこかに私に向けた言葉があってほしいと願った。
『親愛なる ザクセンブルク王へ
緊急にて走り書きをお許しください。
昨今、私の耳にあまり良くない情報が入ってくるようになりました。それは、我が国王であるワーテル様のお身体が優れず、我が娘アリアが嫁ぐ予定であるエドワード王子が国土を拡大を目論んでいるということです。私は諫めましたが、聞き入れてはくださりませんでした。
ワーテル王が健在の頃は大人しかったエドワード王子でしたが、今は野心を現し、私の諫言が原因で私とエドワード王子と確執が生まれてしまい、穏健派の貴族たちは私に、過激派の貴族たちはエドワード王子に付き従い、勢力が二分されています。
そんなエドワード王子の侵略目標は、経済大国である貴国、ザクセンブルク公国でございます。
こうして貴方様に手紙を送ることが露見すれば、私は国の最重要機密を他国に漏らした売国奴として死刑になるでしょう。それでも、こうして貴方様に手紙を書くのには訳があります。
どうか、アリアだけでも助けてください。
私の陰にはすでに魔の手が忍び寄っており、いつ過激派に殺されるかわからない状態にあります。そして、そうなってしまえば、財産は奪われ、軍資金に充てられてしまうでしょう。また、穏健派の中には私が亡くなった後、アリアを担ぐものが出てくるとも限りません。エドワード王子も情がある人間であれば、アリアを殺すとは思いませんが、私の知る大人しいエドワード王子ではないので、どうなるかはわかりません。
私が献上できるのはこの情報のみですが、この情報が何物にも代えがたい価値があると信じております・・・』
私は手紙を読み終えた。
そして、手紙を優しく抱きしめる。
内容はびっくりの連続でほとんど頭には入らなかった。
だけど、お父様の感情の籠った文字は、私への愛を示していて私は嬉しくなった。
私はリチャードの問いに答えることなく、睨むような顔をしてその手紙を奪う。
リチャードは仕方なさそうな顔をして、お父様からの手紙を手放した。
ゴクンッ
私は喉を鳴らす。
急遽馬車に跳ねられて亡くなってしまったお父様たち。
私が聞いた最後の言葉は『行ってくるよ、愛しいアリア』。
玄関で振り返った二人の笑顔が私の脳裏で焼き付いて離れない。
だけれど、欲を言えばその言葉が最後の言葉では物足りないと思っていた私。
だって、大好きな二人とはもっといろんな話をしたかったし、いろんなことを相談したかった。味気ない言葉では私の心は寂しくてみたされないのだから。だから、文章のどこかに私に向けた言葉があってほしいと願った。
『親愛なる ザクセンブルク王へ
緊急にて走り書きをお許しください。
昨今、私の耳にあまり良くない情報が入ってくるようになりました。それは、我が国王であるワーテル様のお身体が優れず、我が娘アリアが嫁ぐ予定であるエドワード王子が国土を拡大を目論んでいるということです。私は諫めましたが、聞き入れてはくださりませんでした。
ワーテル王が健在の頃は大人しかったエドワード王子でしたが、今は野心を現し、私の諫言が原因で私とエドワード王子と確執が生まれてしまい、穏健派の貴族たちは私に、過激派の貴族たちはエドワード王子に付き従い、勢力が二分されています。
そんなエドワード王子の侵略目標は、経済大国である貴国、ザクセンブルク公国でございます。
こうして貴方様に手紙を送ることが露見すれば、私は国の最重要機密を他国に漏らした売国奴として死刑になるでしょう。それでも、こうして貴方様に手紙を書くのには訳があります。
どうか、アリアだけでも助けてください。
私の陰にはすでに魔の手が忍び寄っており、いつ過激派に殺されるかわからない状態にあります。そして、そうなってしまえば、財産は奪われ、軍資金に充てられてしまうでしょう。また、穏健派の中には私が亡くなった後、アリアを担ぐものが出てくるとも限りません。エドワード王子も情がある人間であれば、アリアを殺すとは思いませんが、私の知る大人しいエドワード王子ではないので、どうなるかはわかりません。
私が献上できるのはこの情報のみですが、この情報が何物にも代えがたい価値があると信じております・・・』
私は手紙を読み終えた。
そして、手紙を優しく抱きしめる。
内容はびっくりの連続でほとんど頭には入らなかった。
だけど、お父様の感情の籠った文字は、私への愛を示していて私は嬉しくなった。
12
お気に入りに追加
1,900
あなたにおすすめの小説
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
家族から虐げられた令嬢は冷血伯爵に嫁がされる〜売り飛ばされた先で温かい家庭を築きます〜
香木あかり
恋愛
「ナタリア! 廊下にホコリがたまっているわ! きちんと掃除なさい」
「お姉様、お茶が冷めてしまったわ。淹れなおして。早くね」
グラミリアン伯爵家では長女のナタリアが使用人のように働かされていた。
彼女はある日、冷血伯爵に嫁ぐように言われる。
「あなたが伯爵家に嫁げば、我が家の利益になるの。あなたは知らないだろうけれど、伯爵に娘を差し出した家には、国王から褒美が出るともっぱらの噂なのよ」
売られるように嫁がされたナタリアだったが、冷血伯爵は噂とは違い優しい人だった。
「僕が世間でなんと呼ばれているか知っているだろう? 僕と結婚することで、君も色々言われるかもしれない。……申し訳ない」
自分に自信がないナタリアと優しい冷血伯爵は、少しずつ距離が近づいていく。
※ゆるめの設定
※他サイトにも掲載中
幼馴染に裏切られた私は辺境伯に愛された
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のアイシャは、同じく伯爵令息であり幼馴染のグランと婚約した。
しかし、彼はもう一人の幼馴染であるローザが本当に好きだとして婚約破棄をしてしまう。
傷物令嬢となってしまい、パーティなどでも煙たがられる存在になってしまったアイシャ。
しかし、そこに手を差し伸べたのは、辺境伯のチェスター・ドリスだった……。
(完結)妹と不貞を働いた婚約者に婚約破棄を言い渡したら泣いて止めてくれと懇願された。…え? 何でもする? なら婚約破棄いたしましょう
にがりの少なかった豆腐
恋愛
妹のリースと不貞を働いた婚約者に婚約破棄を言い渡した。
するとその婚約者は止めてくれ。何でもするから、とすがって来た。
そもそもこうなった原因はあなたのですけれど、ですが、なるほど、何でもすると?
なら婚約を破棄するのでも良いはずよね?
それから妹の婚約者だった辺境伯に気に入られ、その婚約者になる
そして今まで冷たい人だと思っていた辺境伯の本当の姿を見ることになった
あの、貴方ってそのように人を愛でる方でしたっけ?
不定期投稿になります
ざまぁを回避したい王子は婚約者を溺愛しています
宇水涼麻
恋愛
春の学生食堂で、可愛らしい女の子とその取り巻きたちは、一つのテーブルに向かった。
そこには、ファリアリス公爵令嬢がいた。
「ファリアリス様、ディック様との婚約を破棄してください!」
いきなりの横暴な要求に、ファリアリスは訝しみながらも、淑女として、可憐に凛々しく対応していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる