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「アリアっ!!」
私が兵士に連れられて、城の王宮へ戻ると、心配したリチャードが私を見つけると嬉しそうな顔に変わって、近づいてくる。
「リチャード、ごめっ」
バサッ
「アリアのバカヤロウっ!!」
リチャードは私が謝る前に私を抱きしめた。
雨の水滴でまだ濡れていた私だったけれど、それとは違う温かい水滴が私の顔に落ちてきた。
「心配したんだぞ・・・っ」
今度は弱々しい声でリチャードが私の髪を撫でる。
「ごめんなさい・・・リチャード。私・・・」
「いいや、謝らなければならないのはボクだっ!すまないっ」
「ねぇ、聞いててば・・・」
「そもそもやっぱり、ボクの手元に置いて専属メイドとして・・・」
「ていっ」
「いたっ」
リチャードのスネを軽くノックするように蹴ると、ようやく止まった。
「なんだい?アリア」
「もういいわ、ありがとう。それより・・・」
「リチャードさまっ!!!」
私が老婆の言っていたであろう『手紙』について早く聞きたいのに、またもや横やりが入ってしまう。
誰だろうと、思ってみていると、兵士に取り押さえられたフロリアだった。
「ああ、他のメイドたちからちゃんと聞いたよ。フロリアがキミにひどいことを言ったことを」
「どうするの?」
「クビにする」
迷いのない言葉は上に立つ者の言い方だった。
「王子、リチャード王子、お赦しください、どうか、どうかぁっ、お赦しをっ!!」
足掻いて粘るフロリアに兵士たちは困っていたけれど、リチャードが「連れていけ」と言うと、さっきよりも力強くフロリアを連れていく。その姿が押し入ったエドワードの兵士たちと私の姿に重なった。
「ねぇ、赦してあげて。リチャード」
「いいや、赦さない。彼女が言った言葉は呪いの言葉だ。人が幸せになるのを妨げ、不幸にする言葉。キミは辛かった分、これからは幸せになるべき人なのに、キミの良心に呪いの釘を打つような忌まわしき行為。本来魔女と同等の行為をした彼女は火あぶりの刑にしてもいいくらいだ。そんな彼女をキミが赦しても、ボクは一切赦す気にならない」
「お願い・・・リチャード」
私は震えていた。
「・・・おい待て。申し訳ないが、ここへ連れてきてくれたまえ」
「はっ」
それに気づいたリチャードは私のトラウマを理解してくれたのか、不満そうではあったけれど、連れていくのを止めて、こちらへフロリアを連れてくるように兵士に指示した。
連れてこられたフロリアは私を睨んでいた。
私もあの時、こんなやつれた顔をしていたのだろうかと、彼女を見ていた。
王宮の外はあの時と同じで、雨が降っていた。
私が兵士に連れられて、城の王宮へ戻ると、心配したリチャードが私を見つけると嬉しそうな顔に変わって、近づいてくる。
「リチャード、ごめっ」
バサッ
「アリアのバカヤロウっ!!」
リチャードは私が謝る前に私を抱きしめた。
雨の水滴でまだ濡れていた私だったけれど、それとは違う温かい水滴が私の顔に落ちてきた。
「心配したんだぞ・・・っ」
今度は弱々しい声でリチャードが私の髪を撫でる。
「ごめんなさい・・・リチャード。私・・・」
「いいや、謝らなければならないのはボクだっ!すまないっ」
「ねぇ、聞いててば・・・」
「そもそもやっぱり、ボクの手元に置いて専属メイドとして・・・」
「ていっ」
「いたっ」
リチャードのスネを軽くノックするように蹴ると、ようやく止まった。
「なんだい?アリア」
「もういいわ、ありがとう。それより・・・」
「リチャードさまっ!!!」
私が老婆の言っていたであろう『手紙』について早く聞きたいのに、またもや横やりが入ってしまう。
誰だろうと、思ってみていると、兵士に取り押さえられたフロリアだった。
「ああ、他のメイドたちからちゃんと聞いたよ。フロリアがキミにひどいことを言ったことを」
「どうするの?」
「クビにする」
迷いのない言葉は上に立つ者の言い方だった。
「王子、リチャード王子、お赦しください、どうか、どうかぁっ、お赦しをっ!!」
足掻いて粘るフロリアに兵士たちは困っていたけれど、リチャードが「連れていけ」と言うと、さっきよりも力強くフロリアを連れていく。その姿が押し入ったエドワードの兵士たちと私の姿に重なった。
「ねぇ、赦してあげて。リチャード」
「いいや、赦さない。彼女が言った言葉は呪いの言葉だ。人が幸せになるのを妨げ、不幸にする言葉。キミは辛かった分、これからは幸せになるべき人なのに、キミの良心に呪いの釘を打つような忌まわしき行為。本来魔女と同等の行為をした彼女は火あぶりの刑にしてもいいくらいだ。そんな彼女をキミが赦しても、ボクは一切赦す気にならない」
「お願い・・・リチャード」
私は震えていた。
「・・・おい待て。申し訳ないが、ここへ連れてきてくれたまえ」
「はっ」
それに気づいたリチャードは私のトラウマを理解してくれたのか、不満そうではあったけれど、連れていくのを止めて、こちらへフロリアを連れてくるように兵士に指示した。
連れてこられたフロリアは私を睨んでいた。
私もあの時、こんなやつれた顔をしていたのだろうかと、彼女を見ていた。
王宮の外はあの時と同じで、雨が降っていた。
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