6 / 8
共働き期
6
しおりを挟む
私はハローワークに通い、就職先を見つけた。
なかなか希望と需要がマッチしなかったけれど、
「成宮なるみです。よろしくお願いします」
前職を活かせそうな事務職ができる会社を見つけた。私が挨拶すると、みんなが温かい拍手をしてくれた。
「じゃあ、成宮さん。仕事を教えますね」
「はい、お願いします。鈴木係長」
人当たりの良さそうな男性だった。
(年齢は・・・私より同い歳? って、係長なんだから上かな?)
同い年くらいの顔立ち。会社によって違うと思うけれど、たくやはまだ係長になれていない。だからさすがに年下ということはないと信じたいと思うけれど、首からぶら下げた名札には「係長」「鈴木翔太」と書かれていた。のちに、彼が一つ年上の31歳だと知るのは別の話だ。
(って、今は男の人に聞くのも失礼よね)
「成宮さん」
「はっ、はい」
やばっ、無駄なことを考えていたって怒られるかしら。
たくやなら見逃さない。
(たくやよりも優秀な人ならそういったこともわかってしまうかもっ)
私がびくびくしていると、
「成宮さんの挨拶、元気が良くて、笑顔も素敵でしたよ。電話対応やお客様対応も期待してますので、その明るさを大事にしてください」
「あっ、ありがとうございます」
私は頬を赤らめた。
鈴木係長はかっこいい。
でも、夫がいる私が恋を感じているわけではない。
(久々に人に褒められたーーーっ)
それも笑顔。顔だ。
いつも、笑顔でたくやを見送って、出迎えても褒めてくれることは・・・「最近」ない。褒められることを忘れていた私は、恥ずかしがり屋の小学生のように照れてしまったのだ。
「僕の方こそすいません。お気に触りましたか?」
「いえ、これからも頑張りますっ・・・って、まだ頑張ってなかったから、これから頑張りますっ、ですね。あははっ」
鈴木係長は紳士的だと思った。
「じゃあ、仕事を教えますので、あちらへお願いします」
これから、教えてもらう身で、上司なのに鈴木係長は優しく丁寧に仕事を教えてくれた。私は「すぐに戦力になろうと」それを一生懸命メモを取り、覚えた。他の人たちも私の名前を覚えてくれて、声を掛けてくれて、お茶の場所やゴミ箱の場所を教えてくれた。
「お客様のことは徐々に覚えていけばいいからね」
「はい」
「その辺は私が教えます。新山志穂です、成宮さんお願いします」
私の隣の席の女性。
肌艶がよくて私よりも若いと思うけれど、とてもハキハキした頼れる姉御肌のような方だった。のちに2歳年下の28歳だと知るのは別の話。
「はい、新山さん。よろしくお願いします」
私がテンパって深々と頭を下げると、新山さんも同じくらい頭を下げた。姉御肌だけど、相手への敬意も持っている素敵な方だと思った。
なかなか希望と需要がマッチしなかったけれど、
「成宮なるみです。よろしくお願いします」
前職を活かせそうな事務職ができる会社を見つけた。私が挨拶すると、みんなが温かい拍手をしてくれた。
「じゃあ、成宮さん。仕事を教えますね」
「はい、お願いします。鈴木係長」
人当たりの良さそうな男性だった。
(年齢は・・・私より同い歳? って、係長なんだから上かな?)
同い年くらいの顔立ち。会社によって違うと思うけれど、たくやはまだ係長になれていない。だからさすがに年下ということはないと信じたいと思うけれど、首からぶら下げた名札には「係長」「鈴木翔太」と書かれていた。のちに、彼が一つ年上の31歳だと知るのは別の話だ。
(って、今は男の人に聞くのも失礼よね)
「成宮さん」
「はっ、はい」
やばっ、無駄なことを考えていたって怒られるかしら。
たくやなら見逃さない。
(たくやよりも優秀な人ならそういったこともわかってしまうかもっ)
私がびくびくしていると、
「成宮さんの挨拶、元気が良くて、笑顔も素敵でしたよ。電話対応やお客様対応も期待してますので、その明るさを大事にしてください」
「あっ、ありがとうございます」
私は頬を赤らめた。
鈴木係長はかっこいい。
でも、夫がいる私が恋を感じているわけではない。
(久々に人に褒められたーーーっ)
それも笑顔。顔だ。
いつも、笑顔でたくやを見送って、出迎えても褒めてくれることは・・・「最近」ない。褒められることを忘れていた私は、恥ずかしがり屋の小学生のように照れてしまったのだ。
「僕の方こそすいません。お気に触りましたか?」
「いえ、これからも頑張りますっ・・・って、まだ頑張ってなかったから、これから頑張りますっ、ですね。あははっ」
鈴木係長は紳士的だと思った。
「じゃあ、仕事を教えますので、あちらへお願いします」
これから、教えてもらう身で、上司なのに鈴木係長は優しく丁寧に仕事を教えてくれた。私は「すぐに戦力になろうと」それを一生懸命メモを取り、覚えた。他の人たちも私の名前を覚えてくれて、声を掛けてくれて、お茶の場所やゴミ箱の場所を教えてくれた。
「お客様のことは徐々に覚えていけばいいからね」
「はい」
「その辺は私が教えます。新山志穂です、成宮さんお願いします」
私の隣の席の女性。
肌艶がよくて私よりも若いと思うけれど、とてもハキハキした頼れる姉御肌のような方だった。のちに2歳年下の28歳だと知るのは別の話。
「はい、新山さん。よろしくお願いします」
私がテンパって深々と頭を下げると、新山さんも同じくらい頭を下げた。姉御肌だけど、相手への敬意も持っている素敵な方だと思った。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
私の婚活事情〜副社長の策に嵌まるまで〜
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
身長172センチ。
高身長であること以外はいたって平凡なアラサーOLの佐伯花音。
婚活アプリに登録し、積極的に動いているのに中々上手く行かない。
名前からしてもっと可愛らしい人かと…ってどういうこと? そんな人こっちから願い下げ。
−−−でもだからってこんなハイスペ男子も求めてないっ!!
イケメン副社長に振り回される毎日…気が付いたときには既に副社長の手の内にいた。
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?
石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。
ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。
ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。
「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。
扉絵は汐の音さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる