10 / 13
10 レオン視点
しおりを挟む
いつか、こんな日が来るというのは分かっていた。
けれど、ナナリーのあの顔、あの声を聞いたら、想像以上に堪えた。
(俺が、幸せになれないと言ったのはその男といるとだろ・・・ちゃんと聞いてくれよ・・・・・・ナナリー)
辺りを見渡すと、他の客や店員が俺をチラチラと見ていた。
(とりあえず、立ち去るか・・・)
「あの・・・」
テーブルに投げ捨てた金貨が入った袋を回収し、立ち去ろうとすると、喫茶店の店長が俺のところに申し訳なさそうにやってきた。
「騒ぎ立てて済まなかった。みんなも本当にすまない。今日は俺の驕りだ。好きに食べてくれ」
俺が一礼すると、みんなが拍手をしてくれた。中には、応援してくれる目をしてくれた人もいたが、ひょうきんな態度に少し呆れた。
「ありがとうございますっ!!」
店長が深々と頭を下げてきたが、悪いのは俺だ。すぐに顔を上げて貰った。
「じゃあ、ナナリー様方の分もレオン様の驕りと言うことでよろしいですよね?」
俺はそう言われて、テーブルを見るが、あのナダルと言う男はナナリーを連れて行ったにも関わらず代金を置いていなかった。ツケにするなら、店長に声を掛けるべきだし、そもそも流浪の商人であるアイツがツケにできるはずもない。
(だから、無責任だと言ったのだ)
「あぁ、いいとも。ただ、あの男が後日払いに来たら、そうだな・・・ドリンクを一杯奢ってくれるか?」
「もちろんですとも」
俺は頷いて出入り口に向かい、もう一度みんなに頭を下げて外へ出た。
別に、お金をケチったわけではない。
ただ、無責任だと決めつけているが、あの男が責任感があるとすれば、少しだけ考えを見直さなければならない。そう思った時に、店長に教えて欲しいとお願いしても、あの人の好さそうな店長は教えてくれただろう。ただ、俺が貴族である以上、あの店長に対するお願いは命令的で義務感を与えかねないと思った。なので、少しジョークっぽくして、店長の心理的負担を和らげようと思ったのだ。
ただ、店長が俺にドリンクを一杯奢ってくれることはなかった。
なぜなら、ナダルは・・・守銭奴で無責任だったからだ。
「ふっ、あんな男の軽い言葉・・・、だが、言葉に罪はない。俺は自分のやるべきことを、やるだけだ」
ナダルが有言実行して、本当にナナリーを幸せにできるなら、嫌だけど、嬉しい。けど、嫌だ。だけど、嬉しい。
ただ、それは俺の範疇を超えていることだ。俺は不言実行。
「ふっ、それは嘘だな」
俺はあの男のように小さい頃にナナリーにおおぼらを吹いた恥ずかしい記憶を思い出して、鼻で笑い、しばらく国の外へと出ることを決めた・・・。
けれど、ナナリーのあの顔、あの声を聞いたら、想像以上に堪えた。
(俺が、幸せになれないと言ったのはその男といるとだろ・・・ちゃんと聞いてくれよ・・・・・・ナナリー)
辺りを見渡すと、他の客や店員が俺をチラチラと見ていた。
(とりあえず、立ち去るか・・・)
「あの・・・」
テーブルに投げ捨てた金貨が入った袋を回収し、立ち去ろうとすると、喫茶店の店長が俺のところに申し訳なさそうにやってきた。
「騒ぎ立てて済まなかった。みんなも本当にすまない。今日は俺の驕りだ。好きに食べてくれ」
俺が一礼すると、みんなが拍手をしてくれた。中には、応援してくれる目をしてくれた人もいたが、ひょうきんな態度に少し呆れた。
「ありがとうございますっ!!」
店長が深々と頭を下げてきたが、悪いのは俺だ。すぐに顔を上げて貰った。
「じゃあ、ナナリー様方の分もレオン様の驕りと言うことでよろしいですよね?」
俺はそう言われて、テーブルを見るが、あのナダルと言う男はナナリーを連れて行ったにも関わらず代金を置いていなかった。ツケにするなら、店長に声を掛けるべきだし、そもそも流浪の商人であるアイツがツケにできるはずもない。
(だから、無責任だと言ったのだ)
「あぁ、いいとも。ただ、あの男が後日払いに来たら、そうだな・・・ドリンクを一杯奢ってくれるか?」
「もちろんですとも」
俺は頷いて出入り口に向かい、もう一度みんなに頭を下げて外へ出た。
別に、お金をケチったわけではない。
ただ、無責任だと決めつけているが、あの男が責任感があるとすれば、少しだけ考えを見直さなければならない。そう思った時に、店長に教えて欲しいとお願いしても、あの人の好さそうな店長は教えてくれただろう。ただ、俺が貴族である以上、あの店長に対するお願いは命令的で義務感を与えかねないと思った。なので、少しジョークっぽくして、店長の心理的負担を和らげようと思ったのだ。
ただ、店長が俺にドリンクを一杯奢ってくれることはなかった。
なぜなら、ナダルは・・・守銭奴で無責任だったからだ。
「ふっ、あんな男の軽い言葉・・・、だが、言葉に罪はない。俺は自分のやるべきことを、やるだけだ」
ナダルが有言実行して、本当にナナリーを幸せにできるなら、嫌だけど、嬉しい。けど、嫌だ。だけど、嬉しい。
ただ、それは俺の範疇を超えていることだ。俺は不言実行。
「ふっ、それは嘘だな」
俺はあの男のように小さい頃にナナリーにおおぼらを吹いた恥ずかしい記憶を思い出して、鼻で笑い、しばらく国の外へと出ることを決めた・・・。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
【完結】義母が斡旋した相手と婚約破棄することになりまして。~申し訳ありませんが、私は王子と結婚します~
西東友一
恋愛
義母と義理の姉妹と暮らしていた私。
義母も義姉も義妹も私をイジメてきて、雑用ばかりさせてきましたが、
結婚できる歳になったら、売り払われるように商人と結婚させられそうになったのですが・・・・・・
申し訳ありませんが、王子と結婚します。
※※
別の作品だと会話が多いのですが、今回は地の文を増やして一人の少女が心の中で感じたことを書くスタイルにしてみました。
ダイジェストっぽくなったような気もしますが、それも含めてコメントいただけるとありがたいです。
この作品だけ読むだけでも、嬉しいですが、他の作品を読んだり、お気に入りしていただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる