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本編
48話 エブリガーデン
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頬を赤らめるクリス。
「ありがとう・・・それと・・・すごい、嬉しい・・・嬉しい」
はにかんで笑うクリス。
やっぱり、クリスと一緒にいると心が暖かくなる。
「さて、先に果物食べちゃったけど、ランチにしましょう」
私は照れながら、先を歩く。ちらっと振り返ると、クリスは私の右後ろにしっかりついて来てくれて、まるで背中を守ってくれているようだった。そんな安心感に包まれて、私はクリスと世間話をしていたけれど、心地よ過ぎて、あっという間に目的地に着いてしまった。
「じゃじゃーんっ、ここが今日ランチをいただく『エブリガーデン』です!」
私はランチでイチオシのエブリガーデンにクリスを連れて来た。クリスは2階から何本かのワイヤーに花々を伝わせた緑のカーテンに心を奪われている。この前来た時はツボミだった花たちはクリスが来たのを喜んでいるかのように満開でお出迎えしてくれている。
「どう?涼しげでしょ?」
「あぁ、本当に。この町の自由と美意識の高さには感心させられてばかりだよ・・・」
(やったっ)
私はクリスに見えないように小さくガッツポーズする。
「じゃあ、外のテラスで食べましょ。私、シェリルさんに挨拶してくるから、お庭でも観てて」
そう言い残すと、私はお店の中に入る。カランカランと、低めの鐘の音が鳴る。後ろをちらっと見ると、後ろで腕を組みながらエブリガーデンの庭を一歩一歩踏みしめるように歩くクリスがいた。
「こんにちはっ」
「あら、シャーロット様いらっしゃい」
昼間だけれど、ちょっと薄暗い店内はヒヤッとするくらい涼しい。カウンターの奥でシェリルさんはのんびりとコーヒーを炒っていた。
「シェリルさん、今日はベランダで食べてもいいかしら?」
「ええ、もちろん。今日は一人?」
「ううん、クリス王子と一緒よ」
目を丸くするシェリルさん。
「あらあら、それじゃあ腕によりをかけなきゃね」
「ふふふっ、期待してますね」
私は再び扉を開いて、クリスの元へと向かう。
クリスは庭を眺めながら、こちらに向かってきていた。
「クリス、ベランダへ案内するわ」
「ああっ」
私たちは庭を通ってベランダへ行く。
地面には大人の女性がハイヒールを履いて歩く歩幅くらいに間隔をあけて埋め込まれた平らな飛び石。その上を私とクリスは歩く。
「こんなに小っちゃい頃はこの石でケンケンパをしていたのよ」
基本的には大きな石が敷き詰められているのだが、たまに遊び心のように2つの石が横に並んでいる飛び石の歩道。
「ははっ、シャーロットならやりそうだね」
「ふんっ、『なら』は余計よ」
「ごめんごめん」
わざとっぽく怒ったふりをすると、困ったように笑いながらクリスが謝る。
「あっ」
私はいつもヒールがある靴を履かないけれど、今日はちょっとだけかかとが高い靴を履いてきた。そのせいか、柄にもなく私は転びそうになってしまう。
「ありがとう・・・それと・・・すごい、嬉しい・・・嬉しい」
はにかんで笑うクリス。
やっぱり、クリスと一緒にいると心が暖かくなる。
「さて、先に果物食べちゃったけど、ランチにしましょう」
私は照れながら、先を歩く。ちらっと振り返ると、クリスは私の右後ろにしっかりついて来てくれて、まるで背中を守ってくれているようだった。そんな安心感に包まれて、私はクリスと世間話をしていたけれど、心地よ過ぎて、あっという間に目的地に着いてしまった。
「じゃじゃーんっ、ここが今日ランチをいただく『エブリガーデン』です!」
私はランチでイチオシのエブリガーデンにクリスを連れて来た。クリスは2階から何本かのワイヤーに花々を伝わせた緑のカーテンに心を奪われている。この前来た時はツボミだった花たちはクリスが来たのを喜んでいるかのように満開でお出迎えしてくれている。
「どう?涼しげでしょ?」
「あぁ、本当に。この町の自由と美意識の高さには感心させられてばかりだよ・・・」
(やったっ)
私はクリスに見えないように小さくガッツポーズする。
「じゃあ、外のテラスで食べましょ。私、シェリルさんに挨拶してくるから、お庭でも観てて」
そう言い残すと、私はお店の中に入る。カランカランと、低めの鐘の音が鳴る。後ろをちらっと見ると、後ろで腕を組みながらエブリガーデンの庭を一歩一歩踏みしめるように歩くクリスがいた。
「こんにちはっ」
「あら、シャーロット様いらっしゃい」
昼間だけれど、ちょっと薄暗い店内はヒヤッとするくらい涼しい。カウンターの奥でシェリルさんはのんびりとコーヒーを炒っていた。
「シェリルさん、今日はベランダで食べてもいいかしら?」
「ええ、もちろん。今日は一人?」
「ううん、クリス王子と一緒よ」
目を丸くするシェリルさん。
「あらあら、それじゃあ腕によりをかけなきゃね」
「ふふふっ、期待してますね」
私は再び扉を開いて、クリスの元へと向かう。
クリスは庭を眺めながら、こちらに向かってきていた。
「クリス、ベランダへ案内するわ」
「ああっ」
私たちは庭を通ってベランダへ行く。
地面には大人の女性がハイヒールを履いて歩く歩幅くらいに間隔をあけて埋め込まれた平らな飛び石。その上を私とクリスは歩く。
「こんなに小っちゃい頃はこの石でケンケンパをしていたのよ」
基本的には大きな石が敷き詰められているのだが、たまに遊び心のように2つの石が横に並んでいる飛び石の歩道。
「ははっ、シャーロットならやりそうだね」
「ふんっ、『なら』は余計よ」
「ごめんごめん」
わざとっぽく怒ったふりをすると、困ったように笑いながらクリスが謝る。
「あっ」
私はいつもヒールがある靴を履かないけれど、今日はちょっとだけかかとが高い靴を履いてきた。そのせいか、柄にもなく私は転びそうになってしまう。
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