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本編

43話 デートは待ちたくない

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「あっ、ハンカチ持たないと」

 私は引き出しから、ハンカチを取り出す。
 時計を見ると、そろそろ行かないと行けない時間だ。

「あぁ、そういえばヨッシーおじいちゃんに東の国の漢方薬を持って行ってあげる約束をしてたわ」

「ねぇ、シャーロットちゃん」

「はいっ、なんでしょうか?」

 バタバタしている私を見ながら、腕を組んでため息をつくキキョウさん。

「何を怯えているの?」

 ギクッ

「なっ、何を言っているんですか?」

「・・・クリスとお出かけなんでしょ?そろそろ時間なんじゃないのかしら?」

「えっ、まぁ・・・」

「じゃあ、早くいかないと」

「そっ、そうですね」

 固まってしまう私。

「ほらっ」

「あっ、そういえば、借りていた本を返さないと」

「シャーロットちゃん」

「あぁ、はい」

「自信がないの?それとも、信用がないの?」

 どういう意味だろう?

「それってどういう意味ですか?」

「ねぇ、見て」

 キキョウさんは鏡を指さす。
 
「あのかわいい子がシャーロットちゃんよ?」

 鏡にはきれいなキキョウさんと私史上最高に整った私がいる。自分でも褒めてあげたいくらいかわいい。

「自分を信じてあげて。じゃないとかわいそう」

 キキョウさんが私を抱きしめる。

「こんなに素敵なのに、そんな顔をしていたら不幸を引き寄せちゃうぞ?」

 キキョウさんの優しい言葉。

「でも・・・」

 私は純粋に恋をして、裏切られたときのショックの大きさを知っている。
 
「じゃあ、クリス王子は信用できない?」

「それは・・・」

 幸せなのに、自分でセーブをかけている、それをわかっているんだけれど。

「大丈夫、大丈夫よ」

 キキョウさんは優しく私の頭をポンポンっと髪形がくずれないように優しく触る。

「あなたもクリス王子も大丈夫よ」

「・・・はい」

「じゃあ、いいことを一つ、教えてあげる」

 私は顔を上げる。

「なんでしょうか?」

「クリス王子には秘密よ?私から聞いたって」

 コクっと私は首を縦に振る。

「よろしい。実はね・・・」



 その言葉を聞いて、私は驚いた。

「本当ですか?」

「びっくりした?」

「はい・・・っ」

「ふふっ、絶対言っちゃだめだからね」

 キキョウさんの言葉に首を縦にふろうとすると、

「返事は?」

「はいっ」

 キキョウさんは私の元気のいい返事を聞いてにこっとする。

「わかったら、早く行くっ」

「あぁ、もうこんな時間。ありがとうございます。キキョウさん」

「走っては駄目よ?せっかくのおめかしが台無しになってしまうから」

「はーい」

 王子様の待っている噴水へと私は歩いて向かった。
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