14 / 27
13.誰がための修行
しおりを挟む
「ミシェル様のおかげです」
「えっ?」
恥ずかしがって固まってしまったミシェルを見た侍女はマハラジャに自分に任せるように告げて、マハラジャ苦笑いしながらも、別のところに行くと、侍女がミシェルに話しかけた。
「マハラジャ様は民のことを何よりも大事に考えるお方です。ですので貴女様が来るまで、日照りのことで苦悩していらっしゃり、見ているこちらも心が痛くなるようなお姿でした。私のような無知な者には詳しくわかりませんが、きっと、今も今で日照りのために画策されているに違いはないのでしょうが、それでもああやって笑えるようになりました」
「そっ、そんな・・・私なんてただ飯喰らいで・・・」
ただ飯喰らいなんて言葉がミシェルから出ると思わなかった侍女は少し驚いて、
「そんなことはありませんよ。貴方様はマハラジャ様の心のオアシスに違いありませんわ」
と言って微笑んだ。
落ち着いたミシェルは侍女と別れ、自室へと戻った。
(なんとかしたい・・・)
しなければならない、という受動的な感情でいつも過ごしてきたミシェル。でも、ガラハラ王国に来てから、人のために自分から何かしたい、恋も・・・してみたいと自発的な気持ちが生み出されるようになった。
(自分の力で雨を降らせる)
ミシェルは過去に教わった厳しい修行を思い出す。一つも身に付かなかったという意味では彼女は無能だろう。しかし、そもそも当時は彼女にとってその修行は無意味だった。
なぜなら、本来雨乞いの巫女は、雨を降らせるために厳しい修行を積み、何日もの祈祷によって雨雲を呼び込む。
けれど、ミシェルの場合は泣けば必ず雨が降る。教えていた巫女もミシェルに嫉妬した。どんなに優れた雨乞いの巫女でも祈祷を行い雨雲を呼べるのは例外を除いて5回に1回くらい。必ず呼べる巫女は巫女のみに伝わる伝説と言われた初代の雨乞いの巫女だけ。
教えていた巫女は本来であれば、それが伝授する内容でないにしても巫女を育てる立場としてミシェルに感情の制御を教えていくべきだった。だか、それをしなかった。彼女は天才の雨乞いの巫女の教育者という立場よりも自身の活躍の場を奪われるのを危惧した。そして、あろうことが自分が王家などから雨乞いを依頼された時、ミシェルのことは秘密にして雨を降らせたい時は修行だとミシェルに偽って虐待し、雨を降らせた。
教えていた巫女はミシェルのおかげで皆から信頼された。そうであるが故に、皮肉にもミシェルは自分の力によって次の雨乞いの巫女となった際は高い要求を求められていたのだ。
意味のない修行だった。
けれど、今。
その修行が意味を持つ時ーーー
「えっ?」
恥ずかしがって固まってしまったミシェルを見た侍女はマハラジャに自分に任せるように告げて、マハラジャ苦笑いしながらも、別のところに行くと、侍女がミシェルに話しかけた。
「マハラジャ様は民のことを何よりも大事に考えるお方です。ですので貴女様が来るまで、日照りのことで苦悩していらっしゃり、見ているこちらも心が痛くなるようなお姿でした。私のような無知な者には詳しくわかりませんが、きっと、今も今で日照りのために画策されているに違いはないのでしょうが、それでもああやって笑えるようになりました」
「そっ、そんな・・・私なんてただ飯喰らいで・・・」
ただ飯喰らいなんて言葉がミシェルから出ると思わなかった侍女は少し驚いて、
「そんなことはありませんよ。貴方様はマハラジャ様の心のオアシスに違いありませんわ」
と言って微笑んだ。
落ち着いたミシェルは侍女と別れ、自室へと戻った。
(なんとかしたい・・・)
しなければならない、という受動的な感情でいつも過ごしてきたミシェル。でも、ガラハラ王国に来てから、人のために自分から何かしたい、恋も・・・してみたいと自発的な気持ちが生み出されるようになった。
(自分の力で雨を降らせる)
ミシェルは過去に教わった厳しい修行を思い出す。一つも身に付かなかったという意味では彼女は無能だろう。しかし、そもそも当時は彼女にとってその修行は無意味だった。
なぜなら、本来雨乞いの巫女は、雨を降らせるために厳しい修行を積み、何日もの祈祷によって雨雲を呼び込む。
けれど、ミシェルの場合は泣けば必ず雨が降る。教えていた巫女もミシェルに嫉妬した。どんなに優れた雨乞いの巫女でも祈祷を行い雨雲を呼べるのは例外を除いて5回に1回くらい。必ず呼べる巫女は巫女のみに伝わる伝説と言われた初代の雨乞いの巫女だけ。
教えていた巫女は本来であれば、それが伝授する内容でないにしても巫女を育てる立場としてミシェルに感情の制御を教えていくべきだった。だか、それをしなかった。彼女は天才の雨乞いの巫女の教育者という立場よりも自身の活躍の場を奪われるのを危惧した。そして、あろうことが自分が王家などから雨乞いを依頼された時、ミシェルのことは秘密にして雨を降らせたい時は修行だとミシェルに偽って虐待し、雨を降らせた。
教えていた巫女はミシェルのおかげで皆から信頼された。そうであるが故に、皮肉にもミシェルは自分の力によって次の雨乞いの巫女となった際は高い要求を求められていたのだ。
意味のない修行だった。
けれど、今。
その修行が意味を持つ時ーーー
15
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした
水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」
子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。
彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。
彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。
こんなこと、許されることではない。
そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。
完全に、シルビアの味方なのだ。
しかも……。
「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」
私はお父様から追放を宣言された。
必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。
「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」
お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。
その目は、娘を見る目ではなかった。
「惨めね、お姉さま……」
シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。
そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。
途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。
一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。
婚約破棄、果てにはパーティー追放まで!? 事故死を望まれた私は、第2王子に『聖女』の力を見出され性悪女にざまぁします
アトハ
恋愛
「マリアンヌ公爵令嬢! これ以上貴様の悪行を見過ごすことはできん! 我が剣と誇りにかけて、貴様を断罪する!」
王子から突如突き付けられたのは、身に覚えのない罪状、そして婚約破棄。
更にはモンスターの蔓延る危険な森の中で、私ことマリアンヌはパーティーメンバーを追放されることとなりました。
このまま私がモンスターに襲われて"事故死"すれば、想い人と一緒になれる……という、何とも身勝手かつ非常識な理由で。
パーティーメンバーを追放された私は、森の中で鍋をかき混ぜるマイペースな変人と出会います。
どうにも彼は、私と殿下の様子に詳しいようで。
というかまさか第二王子じゃないですか?
なんでこんなところで、パーティーも組まずにのんびり鍋を食べてるんですかね!?
そして私は、聖女の力なんて持っていないですから。人違いですから!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました
八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」
子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。
失意のどん底に突き落とされたソフィ。
しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに!
一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。
エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。
なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。
焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──
【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません
すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」
他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。
今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。
「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」
貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。
王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。
あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!
婚約破棄でも構いませんが国が滅びますよ?
亜綺羅もも
恋愛
シルビア・マックイーナは神によって選ばれた聖女であった。
ソルディッチという国は、代々国王が聖女を娶ることによって存続を約束された国だ。
だがシェイク・ソルディッチはシルビアという婚約者を捨て、ヒメラルダという美女と結婚すると言い出した。
シルビアは別段気にするような素振りも見せず、シェイクの婚約破棄を受け入れる。
それはソルディッチの終わりの始まりであった。
それを知っているシルビアはソルディッチを離れ、アールモンドという国に流れ着く。
そこで出会った、アレン・アールモンドと恋に落ちる。
※完結保証
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる