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8.望んでいた晴天(ジェイド)

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「くっそ、金づるは見つからんのか」

 苛ついたジェイド。王座座り、ひじ掛けに人差し指でカツカツ音をさせてイライラをぶつける。
 けれど、それに付き合わされる兵の方が大変だ。不眠不休の大捜索でも見つからず、どんどん疲弊していった。

「どこかで、おっちんだか」

(ひどいことを仰る・・・)

 そう心に想った大臣はジェイドを見ると、ジェイドと目が合う。大臣は自分の心の内を探られないように目を閉じて気持ちを落ち着かせて、

「ジェイド様が仰る通りかもしれませんね」

 と告げると、

「よし。捜索を中止するか」

 とジェイドは立ち上がり外を見る。

「うん、快晴快晴。これは吉兆の表れじゃね?」

「今日は暑くなりそうですね」

 よしよし、と言いながら、満面の笑みをするジェイド。カラッとした性格であるジェイドにとって、ミシェルとの結婚は億劫で仕方なく、心底から晴れやかな気持ちだった。だからか、悲しみを背負わせたミシェルの気持ちなんて一片も考えていなかった。

 けれど、悲しみを知らない者は悲しみを知ることになる。

「ん? なんか言ったか?」

 ジェイドは周りを見渡すが、大臣には何も聞こえなかったので不思議な顔をして首を傾げた。

「私は何も・・・」

「そうか。まぁ、いい。それより、パーティーをしようぜ?」

「パーティー・・・?」

「あぁ、これからこの国の天気が変わるのだ。めでたいだろ? そこで新しい婚約者を見つけてやるぜ」

「左様でございますか。では、国王陛下を・・・」

「いいや。父上は病に伏せている。内密に行うのだ」

「しかし・・・」

「また、変な女とくっつけられてもかなわん。やはり、生涯を共にするパートナーは自分で見つけねば」

 それから、ジェイドは大臣などに命令して、パーティーを開いた。パーティーはカラッとした湿度の低い晴天の中で行われ、数日間朝から晩まで行われた。エバーガーデニア王国で取れる新鮮な野菜や果実はみずみずしく、それを食べる草食動物のお肉や、流れる清流の魚は格別で、人々は大いに食べて、大いに飲んだ。彼らには常々、食料が湿気で腐らせてしまうという発想はあっても、食料が手に入らないという発想がない。

 だから、ジェイドはマハラジャがお願いしてきても、マハラジャが話すガラハラ王国の国民の飢えの苦しみなど一切理解せず、儲け話として煽り、机上の話として処理した。ジェイドが学んできた帝王学や商学として、ジェイドの判断は正しいのかもしれない。

 ただ一つ。ジェイドは一番重要なことを気づいていないだけであった。

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