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1.心の雨は止まない

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「なんか、うじうじしてないで言ったらどうなんだ?」

 ジェイド王子がイライラしながら婚約を決めた少女ミシェルに話しかける。貧乏ゆすりをしながら、指でトントン、トントンひじ掛けの部分を叩いているジェイドを見て、

「えっと・・・あの・・・その・・・ごめんなさい」

 ミシェルは何かを言わなければいけないのをわかっていたけれど、焦れば焦るほど言葉が見つからなかった。

「はあーーーーーーっ」

 ジェイドはあからさまに悪意があるため息をする。
 そして、外を見ると、重厚な雨雲によって薄暗くなっており、雨が降っていた。

「やっぱり、お前といると辛気臭くなるから婚約破棄な?あと、お前がいると雨ばっかで気が滅入るからこの国から出てってくんない?」

 その言葉はミシェルのノミの心臓を握りつぶした。

「えっ・・・あっ・・・っ」

 ミッシェルは許しを請おうとするけれど、言葉が出ない。

「100年に1人の雨乞いの天才巫女だか、なんだか知らねーけど、お前がいなけりゃ、いい天気が続くんだろ?なら、お前ってこの国の害悪じゃん」

 追い打ちをかけるようにジェイドはミシェルに指を差しながら言う。

「そもそも、この国の貴重な雨乞いの巫女と結婚しろだなんて、お父様から言われたが意味が分からん。てか、雨乞いっていう「乞」という字が王女にまったくもって、相応しくない。王家は乞うたりしない。自らの力で手に入れるものだっ!!あーはっはっはっ」

 ジェイドは上手いことを言ったと自画自賛して高笑いする。
 その元気な声に恐る恐るミシェルは顔を上げる。

「とっとと失せろ」

 ジェイドは冷めた目でミシェルにそう告げた。
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