【3話完結】色を探す旅

西東友一

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 鏡は真実のかがみではなくて、ただの鏡だった。
 
 じゃあ、わざわざ気になって戻って馬鹿みたいだったかというと、そうじゃない。
 鏡の中に真実と希望が映っていた。

「きれい・・・・・・」

 私は真実のかがみには色があった輝かしい世界が映っているのだと思っていた。
 けれど、違った。いや、違うに違いない。

 ただの鏡に映るのは、虹のような七色。
 赤にオレンジに黄色に、緑に青に紫、そして白。
 その上、ピンクが見たいと思えば見れるし、茶色が見たいと思えば茶色も見れる様々な光。

 そんな光がうるっとしながら淡い光を発している。

「ここに希望はあったのね」

 私は鏡に映る自分の瞳を触った。
 この世界で唯一色を持つ私の瞳。

 希望に満ち溢れた素敵な光。
 素敵な世界は外に無かった。

 世界は―――私の中に――――――

 私は自分の中にあった光を解放した。私の両目から光が溢れ出して、世界を染めていく。
 なぜ、そんなことができるかって?

―――だって私は

 私は親友の言葉を再び思い出した。
 親友の顔も、性格も、色も忘れてしまったけれど、胸に刻まれた言葉。

『お前といるのは息苦しいよ』

 彼は私の目を見て、何を思っていたのだろう。
 
 私が色を全て奪ったと感じていたのだろうか?
 それとも、飽きもせずこの世界に希望を見出していたのがアホらしいと思ったのだろうか?

 いくら考えても分からない。
 だって、彼はもういないのだから。

 私は過去を塗りつぶしていく。
 良かったのか、悪かったのかわからないような灰色の過去に終わりを付けて、新たな色を付けていく。
 色を付けるのがいいのかどうか、わからないけれど、こんなに明るい色ならきっと嬉しいに決まっている。

「あっ」

 光を出し切った私の目の前に、うっすらと親友が眩しそうにしている顔がよぎった。

「今度は違うかもよ」

 私はその残像に声を掛けて、再び飛んだ。
 私にも色づいた虹色の羽。

 羽ばたくごとに大地へと生命を撒いていった。
 これは不死鳥の生命の力。

 一度は不死鳥ですら見捨てた生きるということ。
 これは過ちなのかもしれないけれど、私は生命を撒いていく。

 今度は、死んでもバトンを繋げるように。
 私のように一人でいる寂しさを味わうことがないように。
 愛で命のバトンを繋いでいけばいい。

 自分が楽しめなくても、誰かが楽しめる世界を作ればいい。
 きっかけは与えた、あとはキミたち次第だ。

 世界はこんなに美しい。

 でもね、これはボクだけが造った世界。
 最高の景色だけど、最高の景色じゃないんだ。
 なんたって、ボク一人で作った世界だからね。

 予定調和はつまらない。

 さぁ、見せてくれ。
 みんなが作る最高の景色ってやつを。

 生命たちは色づいた世界を嬉しそうにしている気がした。




 でもね、こんなことを言いながら。
 あの灰色の世界でただ一人過ごした数百年も。
 それはそれで居心地が良かったんだ。

 おしまい。

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