6 / 10
6 大馬鹿者
しおりを挟む
勇気を出したご褒美かもしれない。散っていく桜はとても綺麗で、私は勇作に負けないような素敵な顔で笑えたに違いない。
(違いなのに・・・・・・)
視界がぼんやりする。目頭が熱くなって、目尻から涙がツーっと頬を伝った。
(でも、言えたんだ、私・・・・・・)
私は袖で目を拭く。何で泣いているのか聞かれたらどう答えようと考えながら、気持ちが高ぶり過ぎて考えがよくまとまらない。
(えっ)
私は腕が掴まれた思考が止まる。顔を上げると、勇作が少しムっとしたような顔で私の腕を掴んでいた。
「嘘じゃ」
「えっ?」
「本当は、父上のお許しなんて出とらん。父上は故郷に帰るのを許さんのじゃ。じゃが、ここに来た」
「そう・・・・・・なの?」
今の私にとってはそこまで重要なことではないので、きょとんとした顔で勇作を見ていると、
「ああああっ、鈍感な女じゃのう。お前じゃっ、お前っ」
「わたし・・・?」
「お前の見合い話をぶっ壊しに、来たんじゃっ。父上に勘当されるの覚悟でっ!!」
「ばっ・・・・・・・・・」
開いた口が塞がらなかった。
「ばっかじゃないのっ!!?」
自分の死んでもいいような人生なんてどうでもいい。それよりも順風満帆に進んでいた初恋の相手がここに来て、私に嫌がらせをするため(?)なのか私のために人生の階段を踏み外したなんて、呆れて暴言しか言えない。
「そうじゃ、馬鹿じゃ!!! 何もかも捨てでも、梅子っ!! お前を選んでしまう大馬鹿者が俺じゃ!!」
そう言って、私を強く抱きしめる勇作。
「梅子・・・・・・梅子・・・・・・・・・梅子・・・・・・・・・・・・」
私を感じるように何度もぎゅっぎゅっと抱きしめてくる勇作。
それは、痛くて、苦して、熱かった。でも、とても嬉しかった。
(違いなのに・・・・・・)
視界がぼんやりする。目頭が熱くなって、目尻から涙がツーっと頬を伝った。
(でも、言えたんだ、私・・・・・・)
私は袖で目を拭く。何で泣いているのか聞かれたらどう答えようと考えながら、気持ちが高ぶり過ぎて考えがよくまとまらない。
(えっ)
私は腕が掴まれた思考が止まる。顔を上げると、勇作が少しムっとしたような顔で私の腕を掴んでいた。
「嘘じゃ」
「えっ?」
「本当は、父上のお許しなんて出とらん。父上は故郷に帰るのを許さんのじゃ。じゃが、ここに来た」
「そう・・・・・・なの?」
今の私にとってはそこまで重要なことではないので、きょとんとした顔で勇作を見ていると、
「ああああっ、鈍感な女じゃのう。お前じゃっ、お前っ」
「わたし・・・?」
「お前の見合い話をぶっ壊しに、来たんじゃっ。父上に勘当されるの覚悟でっ!!」
「ばっ・・・・・・・・・」
開いた口が塞がらなかった。
「ばっかじゃないのっ!!?」
自分の死んでもいいような人生なんてどうでもいい。それよりも順風満帆に進んでいた初恋の相手がここに来て、私に嫌がらせをするため(?)なのか私のために人生の階段を踏み外したなんて、呆れて暴言しか言えない。
「そうじゃ、馬鹿じゃ!!! 何もかも捨てでも、梅子っ!! お前を選んでしまう大馬鹿者が俺じゃ!!」
そう言って、私を強く抱きしめる勇作。
「梅子・・・・・・梅子・・・・・・・・・梅子・・・・・・・・・・・・」
私を感じるように何度もぎゅっぎゅっと抱きしめてくる勇作。
それは、痛くて、苦して、熱かった。でも、とても嬉しかった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

会社をクビになった私。郷土料理屋に就職してみたら、イケメン店主とバイトすることになりました。しかもその彼はーー
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ライト文芸
主人公の佐田結衣は、おっちょこちょいな元OL。とある事情で就活をしていたが、大失敗。
どん底の気持ちで上野御徒町を歩いていたとき、なんとなく懐かしい雰囲気をした郷土料理屋を見つける。
もともと、飲食店で働く夢のあった結衣。
お店で起きたひょんな事件から、郷土料理でバイトをすることになってーー。
日本の郷土料理に特化したライトミステリー! イケメン、でもヘンテコな探偵とともに謎解きはいかが?
恋愛要素もたっぷりです。
10万字程度完結。すでに書き上げています。

お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
葉月 まい
恋愛
近すぎて遠い存在
一緒にいるのに 言えない言葉
すれ違い、通り過ぎる二人の想いは
いつか重なるのだろうか…
心に秘めた想いを
いつか伝えてもいいのだろうか…
遠回りする幼馴染二人の恋の行方は?
幼い頃からいつも一緒にいた
幼馴染の朱里と瑛。
瑛は自分の辛い境遇に巻き込むまいと、
朱里を遠ざけようとする。
そうとは知らず、朱里は寂しさを抱えて…
・*:.。. ♡ 登場人物 ♡.。.:*・
栗田 朱里(21歳)… 大学生
桐生 瑛(21歳)… 大学生
桐生ホールディングス 御曹司
帝都の守護鬼は離縁前提の花嫁を求める
緋村燐
キャラ文芸
家の取り決めにより、五つのころから帝都を守護する鬼の花嫁となっていた櫻井琴子。
十六の年、しきたり通り一度も会ったことのない鬼との離縁の儀に臨む。
鬼の妖力を受けた櫻井の娘は強い異能持ちを産むと重宝されていたため、琴子も異能持ちの華族の家に嫁ぐ予定だったのだが……。
「幾星霜の年月……ずっと待っていた」
離縁するために初めて会った鬼・朱縁は琴子を望み、離縁しないと告げた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる