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プロローグ

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「ぜったい、シーーーッだよ?」

 魔法使いさんには秘密と言われていた。
 私は恩人で憧れの魔法使いさんの言葉を守ると約束していた。
 
 けれど、目の前には転んで膝をすり向いてしまった幼い妹のリリス。
 5歳の妹の傷は大したことはないのだけど、あまりにも大泣きするので不憫に思って、私は人差し指を立てて、内緒のポーズをとると、リリスは現金なもので泣くのを止めて、鼻をすすりながら私の方をチラ見してくる。

(子どもって単純)

 こういう言い方が子どもの中では興味を買うことができるのを知っていた私。
 大人ぶっていても私も当時は8歳で十分子供だった。
 少しは人に見せたいと言う気持ちがあったのも事実だった。
 

「ヒーリング」

「うわぁ・・・きれいっ」

 私のかざした右手から白い小さな光が出てきて、リリスが目をパッチリ開けて目を輝かせている。私は得意げな顔をしながら、強く念じると、光は大きくなっていき、手のひらと同じくらいのサイズになった。それがその当時の限界のサイズ。

「はああっ・・・」

「暖かい・・・」

 私が白い光をリリスの膝に当ててあげると、今度リリスは目を閉じて、とても心地よい顔をする。
 すると、膝から出ていた血は無くなり、清潔に除去して傷口を塞いでいく。もちろん、例え膝であっても女の子に傷があると、度量の小さい貴族の男子もいるご時勢だから、傷跡もきれいさっぱり無くなるくらい魔法を注いであげた。

「わあ・・・っ」

 リリスは自分の膝に見惚れていた。

「ふふっ、気に入ってくれたかしら?」

「お姉ちゃんっ!!」

 私に抱き着いてくる。

「どうやったの、どうやったのっ!?」

 わくわくした顔で私を見てくるリリス。

「だから、秘密よ?」

(うーん、やってしまったかな?)

 12歳を過ぎていれば、私もリリスが寝ていた隙に魔法を使ったかもしれないし、泣き止まない妹を普通にあやして解決したかもしれない。幼さを言い訳にするわけではないけれど、魔法なんて見せてしまえばリリスがしつこくなるのは、心の奥底でわかっていた。

「・・・フラワーッ」

 私はリリスにバレないように呟く。

「あっ、見て見てっ!!」

 私は草むらの方を指さす。

「わああああああっ」

 花が咲き誇り、花びらがきれい舞っている。
 リリスはその絶景に心を奪われて、花びらを追って、楽しそうに戯れた。

「んんっ」

 結構な魔力を使うけれど、魔力じゃないように見せるのを一生懸命頑張った。
 そのおかげか、妹のリリスは私に魔法のことを聞くことはなかった。
 

―――まさか、この話を、あんな形で使ってくるとは全く思っていませんでした。








 
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