【完結】明日が地球最後の日だったら。~幼馴染とのバスの中でのしょーもない雑談~

西東友一

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明日が地球最後の日だったら。

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 下校のバスの中。
 ど田舎のバスなので、乗る人は限られており、今日は私とハルトだけ。
 18年間にも続く腐れ縁の幼馴染のハルトと私はほぼ指定席になっているバスの一番後ろの右端と左端に座る。同じ高校に通っているけれど、昔のようにクラスが一クラスしかないわけではないので、クラスが別になり、帰宅も部活の終了時間が異なるので、同席することもほとんどなく、ほとんど話をしていなかった。

「なぁ、イチカ。もし、明日が地球最後の日だったら、何する?」

 けれど、お互い部活動を引退し、バスに乗る時間が同じになったので、再び話をするようになった。とはいえ、空白の2年間はなかなか埋めることはできず、昔のように些細なことでキャッキャ盛り上がって話をすることはない。ハルトなんか質問したくせにスマホでゲームをしている。昔は肩がぶつかるくらいの距離で話をしていたのに。

「観たかったけど、まだ観れていない映画を全部見る」

 私はハルトに対抗するように、ハルトを見ずに正面を見て回答する。このバスの右端から左端の距離を私から縮めるつもりはない。それに、このままいけば、来年にはお互い別の大学へと進学する。腐れ縁もここまでだ。

「ふっ、しょーもな」

 スマホの画面を連打しながら、私の回答を鼻で笑うエイト。せっかく回答してあげたのにそんな仕打ち。私もさすがに腹が立った。

「しょーもないのは、この質問でしょっ。じゃあ、ハルトは何するのよ?」

 さぞ、面白い回答をしてくれるのだろう。

(でも、私は絶対に笑わないし、絶対に感心しないし、絶対に同意なんてしてやるものか)

 私は鉄の意志を心に秘めて、ほくそ笑んでハルトの回答を待つ。ハルトは丁度ゲームが終わったのか、ゲームをポケットに仕舞い、私を真剣な瞳でまじまじと見つめてくる。

「オレは、こうやってイチカとしょーもない時間を過ごしたい。最後の、その一瞬まで」

 私の鉄の意志は温かい気持ちで簡単に溶けてしまった。
 私ははやる気持ちを抑えながら、真ん中の方へ座る位置をずらした。すると、ハルトは私の隣、肩の触れ合う位置まで来た。私たちの距離は縮まることはないと自分に言い聞かせていたけれど、昔とは違い、同郷の仲としてではなく、男女の仲として近づくことになった。

 どちらからということもなく、私たちは指を絡めた。ただ、どんなに身体の距離を縮めたとしても、ハルトの心も私の心も、「もし、私たちが男女の仲になったらどうする? というかなったんだけどどうする?」という問に対して、「そんなの信じられない」と言っているのか、現実を見ようとせず、お互い顔を見ることができなかった。

 どうやら、キスは当分先に違いない―――とも言えないか。
 だって、2年間で埋まらなかった距離が一言にして一瞬で近づいたのだから。
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