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「ユーフェミア・シュバイン・アズベルト。貴様とは・・・・・」

「ストーーープっ!!」

 ラインハルトが何かを言おうとするけれど、私は腕でバッテンを作って、待ったをかける。シルバーの髪が綺麗で肌のキメも細かい。

(ふふっ・・・これは期待ができるんじゃないかしら?)

 この時代、戦いのために汗も流しているであろうラインハルトがこんなに綺麗なのだからお風呂はきたいしてよさそうだ。これは期待ができる。私の鼻息を荒くしていると、その気迫にラインハルトが思わずたじろいでいる。なんか、隣に可愛らしい女の子がいてその子を庇おうとしている。妹かしら?

「なっ…なんだ?」

「お風呂に入れて」

 周りがドン引きしているけれど、この世界で生きていくかどうかの瀬戸際。そんな人の評価なんて本当にどーーーでもいい。

「なっ、なんて卑猥な」

 ラインハルトに守られていた女の子がそんなことを言う。完璧な可愛さ。金髪のロングに翡翠の瞳。どこをどの角度で見てもかわいい。

「えっ、どこが?」

 私が真顔で尋ね返すと、その子の顔が真っ赤になる。

(うん、この子もこの子で、可愛らしいし、イジメがいがありそう…)

 そんな目で見ると、私の視線からラインハルトが間に入って守る。

「お風呂には入れない。そんなことより・・・」

「そんなことじゃない、私にとっては、最重要事項なの。私はいい御風呂に入りたいの、だから、私は貴方のお屋敷のお風呂を貸して欲しいの。それを貸してくれるまで、残念ですが、私は貴方の話を聞きませんよ? ぜーーったいに」

 ラインハルトは「何を言っているんだ、この女は」という顔をしたけれど、もうここまで来たら、本当にどうでもいい。わかっているんだから、この世界でお風呂を作るのには時間がかかることを。だから、早く判断して。

(あぁ、あぁ、いいから、いいからっ。その女の子と顔を見合わせてどうする? みたいなノリいらないから)

「わかった・・・」

 決心したような言葉でラインハルトが言う。

「本当にっ!? ありがとうっ!!」

 私は彼の手を両手で握る。
 すると、ラインハルトはド肝を抜かれたような顔をしていた。

「さっ、そこの人たちかしら? ラインハルト様の指示よ、早く準備しなさいっ!!」

 私はラインハルトの従者と思われる人たちを指さす。ママにも先生にも人を指さすなと言われていたけれど、今の私はフリーダム。あぁ、気持ちがいい。ラインハルトの名前を借りたとは言え、私の指示で、いい大人があたふたしながら、動いている。

(あれ、本当にこれって私かしら・・・?)

 私はこの時、悪役令嬢に転生していた影響が出ていたとはまったく気づかなかった。
 

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