上 下
17 / 24
エピローグ

エピローグ ルークとソフィア ~師弟の破棄?~

しおりを挟む
 ―――あれから、1年。

 僕とソフィアは色々あったけれど、今では新婚生活を満喫中だ。
 しかし、僕には一つ悩みがある。

「ソっ、ソフィアぁ?タオル・・・置いておくよぉ?」
「なんだ、ルークか。すまない。ありがとう」
 僕の裏返った声なんて気にも留めず、師匠は汗を拭きながら剣舞の感想戦を心の中でしていた。

(これは・・・いけたのか・・・?)
 そう、僕の悩みとは、師匠を「ソフィア」と呼び捨てすることだ。
 結婚したら、別に呼び捨てでも構わないと思うだろう。
 
 しかし、師匠は僕が呼び捨てでよぼうとすると、睨んで言わせないオーラをプンプン匂わせていた。別に僕も12年もソフィアのことを師匠と呼んでいたので、慣れてしまっているから、それでいいとも思っていた。 
 
 けれど、悔しいじゃないか!!

 師匠に会う男、会う男、みんなソフィア、ソフィアと呼び捨てで呼んでいた。
 中には「ディア(親愛なる)ソフィア」なんて、出会ったばかりで呼ぶような不届きものの奴までいて、愛しの師匠を汚された気分だ。
 みんながよくて、師匠の一番である僕だけ呼び捨てがダメなはずがない。

(よし、他の男どもになんか負けないぞ。ソフィア作戦、強行だ!!)
 
 ―――昼食
「ソっ、ソフィア、ご飯できたよ~」
「あっ、うん。ありがとう」


 ―――夕方
「ソフィア、お湯が湧けたよ?お湯浴びするならどうぞ」
「おっ、おう」

 ―――夜
「ソフィア、そろそろ寝なさい」
「・・・」

 ―――朝
「ソフィア、もう朝だよ」
「おい!!!ルークッ!!!」
 ソフィア・・・もとい師匠が切れた。

「おい、お前。師匠を呼び捨てで呼ぶとは何事か!!」
「うっ、えーっと、付き合いも長いし、さっ」
「だめでーすっ」
「王族だよ、僕」
「・・・はぁ」
 ソフィアは溜め息をつく。

「私をがっかりさせるな、ルーク」
 怒られるよりもその言い方の方が僕は辛かった。
 そんな僕をじーっと見て、師匠はもう一度ため息をつく。

「師匠と呼ばせているのは・・・お前だけだぞ、ルーク」
「そっち!?」
 師匠は顔を赤らめているが、師匠のその特別扱いはよくわからない。

「おねぇちゃんって呼んでも・・・いいんだぞ?」
「じゃあ・・・ソフィアお姉ちゃん・・・」

 ずきゅーーーーんっ

 僕は目をこする。
 今、師匠の胸にピンク色の矢じりの弓矢が刺さったように見えた。

「ルークぅううううううっ」
「ちょっ、急に抱きしめないでくださいよっ?」
「それで行こう!!!」
 
 僕は後悔した。
 それから、師匠はしばらくの間、人前でも『ソフィアお姉ちゃん』と呼ばないと返事をしてくれなかった・・・。
 まぁ・・・『ソフィアお姉ちゃん』と呼べば、大きな胸でメチャクチャ甘えさせて貰えたから・・・いいんだけどね。

 そんな風に甘えたことが理由かはわからないけれど、ソフィアと呼ばせてもらえるようになったのは、10ヶ月後に元気な双子が生まれてからだったというのはまだ先の話。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者がいるのに、好きになってはいけない人を好きになりました。

桜百合
恋愛
アデール国の公爵令嬢ルーシーは、幼馴染のブライトと政略結婚のために婚約を結んだ。だがブライトは恋人らしい振る舞いをしてくれず、二人の関係は悪くなる一方であった。そんな中ルーシーの実家と対立関係にある公爵令息と出会い、ルーシーは恋に落ちる。 タイトル変更とRシーン追加でムーンライトノベルズ様でも掲載しております。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

悪役令嬢の義弟となるはずだった子は断罪の場でとんでもないことを言い出した

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 あー、やっぱり逃れられなかった。悪役令嬢の断罪場、その悪役令嬢は私なわけだが、それでも冷静でいられたのは断罪前にかわいい味方ができたおかげ。私にとっては天使、相手にとっては悪魔になるだろう子供が。 「おねえしゃまいじめるならぼく、おにいしゃまがいうなっていったあのこといっちゃうもん!」 いるはずのない幼い王太子殿下と年の離れた弟が卒業パーティーに紛れ込んでいたざわめき以上の断罪逆転劇が今始まる! 御愁傷様です、殿下。 時に純粋(に見える)さ溢れる子供は大人より強いですから。 小さなヒーローによるほっこり?ざまぁ劇をお楽しみください。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

ソルヴェイグの歌 【『軍神マルスの娘』と呼ばれた女 4】 革命家を消せ!

take
恋愛
 宿敵であった大国チナを下した帝国最強の女戦士ヤヨイの次なる任務は、東の隣国ノール王家にまつわるスキャンダルの陰で進行している王家と政府の転覆を企てる革命家の抹殺であった。  ノール政府の秘密機関の要請で「お雇い外国人アサシン」となったヤヨイは、驚異的な情報収集能力を持ち、神出鬼没のその革命家『もぐら』を誘き出すため、ノール王家と貴族社会に潜入する。  そこで彼女は、愛する幼馴染を一途に思い続け、ただひたすらに彼の帰りを待ちわびる美しい歌姫ノラに出会う。

そして彼女は別世界へ旅立った

く〜いっ
恋愛
 王太子の攻略は成功し、悪役令嬢は断罪された。けれど『乙女ゲーム』のエンドロールは流れない……クリア条件を満たせなかったためしだいに物語りはハッピーエンドから分岐し迷走していく。  いらだちを隠さなくなってくるヒロインと、元婚約者の悪女の仮面が剥がれていく狭間で、愚かだった自分を知っていく王太子の苦悩の独白。 「仕組まれた偽りの恋愛にうつつを抜かし、リルの真実の姿を見つけるのに時間がかかりすぎた。遅かった……すべて、遅すぎたのだ……」  ヒロインに攻略された王太子のざまぁ(?)物語り。主にヒロインと王太子が、ざまぁされます。全24回+1で完結。途中、寝取られ表現、拷問設定、薬物、遺伝などのセンシティブな内容が出てきますので地雷のある方は注意です。真相を知っていく王太子が主人公なので、バッドエンド。物語り時点で王太子はヤンデレ化してません。ヤンデレ誕生物語り的な位置づけ。R15は保険です。

処理中です...