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「お兄様は席を外してくださるかしら?」

 私と同じ16歳だけれど、とても幼く甲高い声で話すエリス。
 ダンスパーティーが終わった次の日にロイドに体調を崩したエリスのお見舞いに伺いたいと手紙を書いた。最初は、いつものようにエリスの都合で会えない旨を伝えられたけれど、私はそれでも義妹の身体が心配だからと何度か手紙を書いた。数週間が経ち、ロイドからエリスと会える旨の返事が来たので、こうやってお見舞いに来た次第だ。
 具合悪いと聞いていたけれど、とても元気そうでよかった。

「本当に・・・大丈夫かい?」

 心配そうにエリスを見るロイド。私に対してとは違った家族への愛情のこもった目でエリスを見ていた。

「大丈夫ですよ、お兄様。だって、義姉様がいるんですから。ねっ、義姉様っ」

 私に子どものような屈託のない笑みを浮かべるエリス。

「私に任せて。ロイド」

 私も笑顔でロイドを見る。

「ほらほら、お兄様。女同士の話だってあるんですから。それとも、お兄様も混じりたいのですか?」

 エリスがそう言うと、ロイドは「まいったなぁ」と言いながら、頭を掻く。すると、部屋には和やかな笑い声が満ちた。

「じゃあ、頼んだよ。ニーナ」

 手を挙げて立ち去るロイドに私は手を振ると、

「バイバイ、お兄様っ」

 私以上に大きく手を振るエリス。
 ロイドは私からエリスに視線を移して、部屋を出た。

(こうして、二人でお話するのは初めてだけど、お身体も大丈夫そうだし、ご機嫌も良さそうでよかっ・・・)

「ちっ・・・」

 私はロイドを見送り、身体をエリスに向け直していると、エリスの方から舌打ちのような音が聞こえて、エリスは先程のような純真無垢な顔ではなく、気怠そうな顔で外を見ていた。

(ん?)

「エリス、身体はどう?」

 私は疑問に思いながらも、とりあえずお見舞いに来たのだから、声をかけてみた。すると、

「ニーナさー、呼び捨てやめてくんない? 気持ち悪いんですけど」

 エリスは顎に手を当てながら、私に敵意を向けながら言い放つ。先ほどのような高い声ではなく、ドスの効いたような声。エリス自身が呼び捨てしていることも気にはなったけどれど、それ以上にロイドの前との違いに面をくらってしまった私は、

「ごめんなさい。でも、貴女はこれから私の義妹に・・・」

 と謝った。けれど、それすらも納得しないエリスは、

「まだ、あんたみたいな女とロイドお兄様の結婚成立してないから」

 と追い討ちをかけてきた。けれど、私もようやく気持ちが追いついてきたので、反論をする。

「でも、エリス・・・様。私とロイドは婚約していて、式だってこれから」

「私が認めないから無理よ」

 きっぱりと、エリスは言い切った。







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