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 アーノルド様が世界は自分中心に回っているという考え方は正しい。
 なぜなら、彼はこの国を背負う第一王子だからだ。
 王家というものはそれぐらい傲慢さがあるくらいがちょうどいいと私は思っている。
 ただ、背負うがゆえにすべきこともある。

「アーノルド様は他国の姫を娶るか、最低でも資産が多い貴族とご結婚し、王家の基盤を確固たるものにしなければなりません」

 王家を支える使用人の中でも執事クラスなら許されるかもしれない諫言。それを女のメイドの私が言われるのは失言かもしれないが、主である王家、ひいてはこの国の未来を想ってのこと。悔しそうな顔をしているアーノルド様。主人に恥をかかせた処罰はいかようにも受けましょう。私は怖気ないでメイドとして胸を張ってアーノルド様の反応を待った。

「お前・・・・・・ガーデニングが好きだったよな?」

 ピクッ

 天使のラッパのような心地よい音・・・・・・というか、言葉が聞こえて、自分でも音が聞こえるくらい大きく自分の耳が動いた。

「ガーデニング・・・・・・花が大好きだよなぁ?」

「もちろんです」

 「当然でしょ?」というキリっとした顔でアーノルド様に応える。
 それを確認すると、まるで隠し持っていた切り札を切ろうとするような顔でアーノルド王子は笑った。

「お前が俺の結婚を快諾したら、我が家のガーデン・・・いや、この国の造花の生産、花に溢れる国造りだって思いのままだ!」

 心臓が物凄く下品に興奮する。
 まるで、王家で飼っている大型犬のロペスが料理を目の前に舌を出して息をハァハァしているのに近い。
 けれど、私は猛獣だって、甘やかして育てたワガママなロペスも調教できるメイド。顔には出さず、屈服させた。

「いえ。確かに国中がお花に溢れるのは魅力的ですが、皆様に強要したくはございません」

「おっ、おう」

 キッパリ答えると、アーノルド様は少したじろいだ。

(でも、盲点だったわ。確かに私が王女になれば、王家の広いお庭を花いっぱいにできるじゃない! 一度はメイドとして試みた王家フラワーガーデニング計画。使用人の中でも賛否があって、庭師の人たちにメチャクチャ反対されたけど、私の熱い思いで説得して、試しみで一部の場所だけ私が管理しようとなったのに、それを見つけた女王様に「メイドはメイドとして働きなさい」の一言で禁止されてしまったお花の管理・・・それが実現したら・・・・・・)

 頭がお花畑とはまさに今のことを言うのだろう。私の脳内にお花が広がっていき、とても幸せに満たされて理性という上着を脱ぎ捨ててそのお花の中にダイフした。

「いいでしょう。結婚しましょう」

「そうか!」

「ただし、先にお花の買い付け及び搬入と配置を行わせていただきます」

「なんでだ?」

「アーノルド様はすぐ約束をお破りになるからです」
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