【完結】最低な婚約者と何でも欲しがる妹。私から婚約者を奪うのは止めた方がいいと言っているのに妹はまったく聞きません。

西東友一

文字の大きさ
上 下
8 / 19

しおりを挟む
 私たちは書庫の門へと再び辿り着いた。私は、婚約者という立場を利用して、手に入れたカギを取り出すと、エディが見入るようにカギを見る。間違いないと思うけれど、あの勅書が偽造であれば私は正義のない婚約者を陥れた悪女ということになるだろう。

(いいえ、どちらにしても婚約者を裏切ることには変わらないか・・・)

 婚約関係の延長を申し出たのは、彼を裏切るため。あぁ、言葉にすれば、なんとひどいことだろう。

「大丈夫だから・・・」

 エディが私を促す。
 私は手を震わせながら、カギをカギ穴に差し込み、ゆっくりと回す。

 カチッ

 カギが開く音が聞こえて、エディがドアノブをゆっくり回して、押すと扉が動き出す。床を見ると、ホコリが綺麗に扉があった場所を境に残っている。もし、この場所がバイデルにとってウィークポイントであれば、猜疑心の強いバイデルは気づくに違いない。

(後戻りは・・・・・・もうできない)

 私たちは慎重に扉を開けて、ろうそくで中を照らすと、棚にはたくさんの書類があった。

「手分けをして探そう。キミは奥を僕は手前を探そう」

 エディに言われて、私は頷く。
 ろうそく台を置いて、私は目についた書類を手に取ってページをめくっていく。

「これは・・・・・・」

 目を背けたくなるような事実が並んでいた。良心がある人間の所業ではないと思った。ページの初めは動物的残虐さであり、かなり古い記録であり、計画が荒く運よく成功したに過ぎないような稚拙なものだったけれど、ページをめくっていくと、組織だった計画になっており、この書類がなければ、決して表にでないようなものだった。私が平穏に暮らしていた生活の裏でこんなことが行われていたと思うと、なんて自分は能天気だったのだろうと言う気持ちと、こういった事件に関わらずにここまで生きられたことに感謝する気持ちが生まれた。そして、感謝と同時に、感謝している自分が浅ましく思い、戒めたいけれど、あまりの惨さにこの事件に起きたのが自分だったらなんて関連付けて考えるもの防衛本能が勝手に拒んだ。ただ、怖いもの見たさというものなのか、理性のタガが外れたのか、感情が目を動かし、どんどん文章を読んでいく。

「えっ・・・・・・・・・?」

 そこには、決して書いてあってはならない名があった。

「よしっ、これだけあれば・・・大丈夫だっ。行こうっ、マリー」

 理性のタガが外れてしまったせいなのか、全然頭が回らない。

(考えろっ、考えろっ、考えろっ、考えろっ!!!)

 私はゆっくりとエディを見る。
 爽やかな青年。けれど、彼はお宝を見つけたかのように瞳孔が開いており、興奮状態だ。

「ねぇ、エディ・・・?」

 私は後ずさりをすると、エディの眉間にしわが寄る。

「どうしたんだい? マリー」

 エディは私に気を遣って優しく尋ねようとしているけれど、興奮しているがゆえなのか、瞳の奥から彼の不安がちらついて見えた。

「アナタは・・・いったい・・・・・・誰なの?」


 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

婚約者を妹に奪われました。気分が悪いので二人を見なくて良い場所へ行って生きようと思います。

四季
恋愛
婚約者を妹に奪われました。気分が悪いので二人を見なくて良い場所へ行って生きようと思います。

妹に勝手に婚約者を交換されました。が、時が経った今、あの時交換になっていて良かったと思えています。

四季
恋愛
妹に勝手に婚約者を交換されました。が、時が経った今、あの時交換になっていて良かったと思えています。

婚約破棄?私、貴方の婚約者ではありませんけれど

oro
恋愛
「アイリーン・ヒメネス!私は今この場で婚約を破棄する!」 王宮でのパーティにて、突然そう高らかに宣言したこの国の第1王子。 名前を呼ばれたアイリーンは、ニコリと微笑んで言った。 「あらあらそれは。おめでとうございます。」 ※誤字、脱字があります。御容赦ください。

妹よ。そんなにも、おろかとは思いませんでした

絹乃
恋愛
意地の悪い妹モニカは、おとなしく優しい姉のクリスタからすべてを奪った。婚約者も、その家すらも。屋敷を追いだされて路頭に迷うクリスタを救ってくれたのは、幼いころにクリスタが憧れていた騎士のジークだった。傲慢なモニカは、姉から奪った婚約者のデニスに裏切られるとも知らずに落ちぶれていく。※11話あたりから、主人公が救われます。

婚約破棄ですか? それはこれから、私が貴方に行うものですよ?

柚木ゆず
恋愛
 嘘を吐いている、私の婚約者様へ。  皆様の前で婚約破棄を行うのは、貴方ではありません。この私です――。

処理中です...