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「それでね、その女性はとても照れ屋さんだったんだ。でも、次第に心を開いてくれると、とても素敵な人で一緒にいると胸が温かくなるのを感じていたんだ」
中山君は夢だと言っていたけれど、自分の大切な思い出のように再び胸を手で優しく触り、慈しんだ。
「だから、僕はどんな時だって彼女を守ろうとした。例え死が二人を別つとも・・・なーんてね」
中山君は私を見た。
はにかんだ顔は優しく私を見た。
よくわからないけれど、その顔は私に安心感を与えてくれた。
「でも、彼女は上手く喋れないことに負い目を感じていたし、自分には取り柄がないと悩んでいたみたいなんだ。そして、神に頼った」
「神に?」
「うん。海の神は彼女を憐れんで一つ才能を上げた。彼女の願いは僕を幸せにする何かの力。結果料理がおいしくなる力だった」
自分のために女性が頑張ったと言ういい話なのだと思ったけれど、中山君の顔は曇っていた。私が彼の表情を伺っていると、その視線に気づいた中山君話を続ける。
「彼女の料理は急に美味しくなった。毎日が幸せだったよ。だって、ご飯は美味しいし、自信を持った彼女が毎日笑うようになったから。僕も頑張ろうと思った。だけどね・・・」
中山君は口を真一文字に閉じて、自分の湧いてきた気持ちを堪えるような顔になった。
「どんなに僕が美味しそうな魚を釣って来ても、どんなに僕が美味しそうな野菜を育てても、何も変わらなくてね。僕の努力が全てが彼女の圧倒的な料理の才能の前には無駄に感じてしまってね・・・。彼女を強く怒ってしまったんだ。何回同じ夢を見て、怒っちゃいけないとわかっていても、悔しくて怒ってしまうんだ・・・」
(やめて・・・そんな悲しい顔・・・しないで)
私は中山君の自分を責めている悲しい顔を自分がさせている気がして辛かった。
「そして、問いただしたら、海の神から力を授ける鯛を食べたと答えたんだ。僕の顔は鬼のような顔だったんだろうね。彼女は失禁しながら、許しを求めた。それでも、僕が許さなかったら、彼女は海へと走り出した。頭に血が上っていた僕も途中でようやく自分の過ちに気づいて彼女を追ったけれど、彼が海に着いた時には彼女は鯛になって、海の底へと泳いで、二度と戻ってこなかった」
中山君の自分を声は震えていて、自分を責めていた。
「それにね、最低なのがさ、彼女に見捨てられたのを悔しがった僕は、今の童話の話へと変えたんだ。おしっこが出汁って言えばさ、みんな僕の方へ同情したよ、はーっはっはっは・・・っ」
自虐的に笑う中山君。
私は気ずついた彼を見て抱きしめていた。
中山君は夢だと言っていたけれど、自分の大切な思い出のように再び胸を手で優しく触り、慈しんだ。
「だから、僕はどんな時だって彼女を守ろうとした。例え死が二人を別つとも・・・なーんてね」
中山君は私を見た。
はにかんだ顔は優しく私を見た。
よくわからないけれど、その顔は私に安心感を与えてくれた。
「でも、彼女は上手く喋れないことに負い目を感じていたし、自分には取り柄がないと悩んでいたみたいなんだ。そして、神に頼った」
「神に?」
「うん。海の神は彼女を憐れんで一つ才能を上げた。彼女の願いは僕を幸せにする何かの力。結果料理がおいしくなる力だった」
自分のために女性が頑張ったと言ういい話なのだと思ったけれど、中山君の顔は曇っていた。私が彼の表情を伺っていると、その視線に気づいた中山君話を続ける。
「彼女の料理は急に美味しくなった。毎日が幸せだったよ。だって、ご飯は美味しいし、自信を持った彼女が毎日笑うようになったから。僕も頑張ろうと思った。だけどね・・・」
中山君は口を真一文字に閉じて、自分の湧いてきた気持ちを堪えるような顔になった。
「どんなに僕が美味しそうな魚を釣って来ても、どんなに僕が美味しそうな野菜を育てても、何も変わらなくてね。僕の努力が全てが彼女の圧倒的な料理の才能の前には無駄に感じてしまってね・・・。彼女を強く怒ってしまったんだ。何回同じ夢を見て、怒っちゃいけないとわかっていても、悔しくて怒ってしまうんだ・・・」
(やめて・・・そんな悲しい顔・・・しないで)
私は中山君の自分を責めている悲しい顔を自分がさせている気がして辛かった。
「そして、問いただしたら、海の神から力を授ける鯛を食べたと答えたんだ。僕の顔は鬼のような顔だったんだろうね。彼女は失禁しながら、許しを求めた。それでも、僕が許さなかったら、彼女は海へと走り出した。頭に血が上っていた僕も途中でようやく自分の過ちに気づいて彼女を追ったけれど、彼が海に着いた時には彼女は鯛になって、海の底へと泳いで、二度と戻ってこなかった」
中山君の自分を声は震えていて、自分を責めていた。
「それにね、最低なのがさ、彼女に見捨てられたのを悔しがった僕は、今の童話の話へと変えたんだ。おしっこが出汁って言えばさ、みんな僕の方へ同情したよ、はーっはっはっは・・・っ」
自虐的に笑う中山君。
私は気ずついた彼を見て抱きしめていた。
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