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竜司と子猫の長い一日

竜司は子猫とゲーセンに行く

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「あー、おしい!」

 どう考えても緩そうなアームが、掴んでいたぬいぐるみ景品をぼとりと落とした。

 子猫がゲーセンに行きたいと言うから、何年ぶりだよ…と思いながら足を運んだ。
 俺が学生の頃と比べたら、よくわからないゲーム機が何台も並び、音も賑やかな状況になっている。
 普通に会話をしてると聞こえないくらいにはうるさい。

「あ、あれほしい」

 との、子猫の何気ない一言に、俺は取ってやろう…と、UFOキャッチャーの前に立った。
 学生の頃もたまにやった。大きくは変わってないだろうし、これくらいならできるだろう……とやり始めたが、当時より確実にアームの力が弱くなってるだろ、これ。
 あっさり取って『ほら』と子猫に手渡したかったが、うまく行かない。

「もう一回」
「うん」

 一回……と言いつつ、五百円を投入した。これで六回できる。
 ぬいぐるみはだいぶ穴に近づいてる。これならいけるはず……と、そこから三回失敗したところで、とんとんと、子猫に腕を叩かれた。

「僕やってもいい?」
「ああ」

 ……つい夢中になってた。
 俺と場所を交代した子猫は、軽く腕をまくり、俺には不敵な笑みを浮かべこちらを馬鹿にしてるように見え始めたぬいぐるみ(猫のキャラクターらしい)を真剣に見据えた。
 一回目は失敗し、二回目に――――

「あ、やった!」

 ………ガコン、と。それが穴に落ちた。

「うわ、取れた!やったぁ!」

 子猫は大喜びでそれを取り出したが…、俺はなんとも言えない微妙な気持ちになる。
 ……いいところを見せようと思ったのに。うまく行かないにもほどがある。

「ありがと、竜司さん!」
「……いや、取ったのはのぞみだろ」
「だって、竜司さんが寄せてくれたから、僕が取れたんだし。ほら、実質竜司さんが取ったようなものでしょ?」

 ……と。
 子猫。
 良い子すぎる。
 まあ、なんにせよ。子猫が喜んでるなら良い。
 左手にぬいぐるみを抱きながら、右手は俺の手と繋ぐ。……うん。子猫は俺と手を繋ぐことを『普通』のことだと認識したんだな。うん、うん。それでいい。
 袋はいるかと店員が声をかけてくるが、子猫は断った。少し大きなそのぬいぐるみを抱きしめながら、ゲーセンの中をさまよい歩く。
 なにかのフィギュアにも挑戦してみたが、俺は当然として、子猫も取ることができなくて二人で笑ったりもした。

「そろそろ行こうか」
「うん」

 十九時。
 夕食には十分な時間だ。
 子猫と駐車場に向かう。

「夕食も食べるだろ?」
「え。帰るんだと思ってた」
「……子供じゃないからな。まだ付き合え」
「ん」

 膝の上にぬいぐるみを乗せて子猫が笑う。
 その笑みが儚く見えて、後頭部に手を回して引き寄せ唇を重ねた。

「ん、んぅぅ」

 デートはいいが、キスができなかったのは辛かった。子猫の唇も唾液も甘い。

「は………、あ、んん……っ」

 子猫が止めたシートベルトを外す。
 手を伸ばしサイドレバーも引き、シートを倒した。

「ん、んっ」

 ぬいぐるみが邪魔だ。
 子猫の胸元から奪い取り、後部座席に放り投げた。

「りゅ……、ぅ、ん、ん」

 シャツのボタンを外す。
 レモンの香りはもう残っていない。僅かに、汗の匂いだけが鼻をかすめるが、それは俺の性欲を掻き立てるものにしかならない。

「あ……あ……ん、んー……っ」

 硬い乳首を甘噛しながら、片方を捻り上げる。

「のぞみ」

 好きだと言いたい。
 愛してると囁きながらこの体を暴きたい。

 ――――それは、まだ、少し先か。

「のぞみ」
「ぁ、ぁ……ん、りゅ、じさん………っ」

 ベルトを外し、ズボンの前を寛げる。
 出てくるのは白のレースに包まれた、少し反応を見せるペニスだ。子猫によく似合ってる。

「……可愛いよ」

 好きと言えない分、可愛いと言おう。子猫は自分の顔が好きじゃないと言っていたが、それも全部含めての子猫だ。顔も体も声も全てが可愛い。愛さずにはいられない子猫。

「あ、や……ぁっ、や、やぁ、い、ちゃ、イ……ん、んんっ」

 手で乳首をいじりながら、布を避けたペニスを口に含み、舌で追い上げた。
 びくんびくんと体がしなる。
 口に入れてすぐ、子猫が吐精する。すぐに反応して吐精するのも可愛い。

「やぁ………」

 量は出ない。
 店でも散々出させたからな。

「うー……っ」
「可愛いよ、のぞみ」

 丁寧に舐め清め、また布の中に戻した。
 ズボンもシャツも元通りに整えてから、涙が流れた目尻に口付ける。

「もー………」
「したかったろ?」
「うー……」
「嫌だった?」

 リップ音を響かせながら、何度もキスをした。
 子猫は濡れた瞳を俺に向け、眉をひそめた。

「………車、やだ……」
「そうか。……我慢が効かなかった。ごめんな?」
「んん……いい……」

 嫌だったと言いながら、俺の首に抱きついてくる子猫。
 でも、そうか。車の中は嫌だったか。確かに酷い悪戯をされたと言っていたし。嫌だと感じてもおかしくなかったな。

「……竜司さん」
「ん?」
「……竜司さんのは、しなくていいの?」
「俺?……あー…」

 まあ、俺の股間部分はわかりやすく膨らんでる。そりゃ、子猫だって気づくだろう。

「俺は良い」
「でも」

 こめかみに口付ける。

「運転してる間に落ち着くからいいんだ」
「………わかった」

 シワの寄った眉間を親指でぐりぐりとほぐしてやる。……抱きたくないわけでも、口でしてほしくないわけでもない。
 これはやせ我慢だ。

「そろそろ出ようか」
「うん」

 俺からするりと腕を離した子猫が、自分から俺にキスをしてきた。




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