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竜司と子猫の長い一日
二人の最初の朝食は、目玉焼きの好みを知るところから
しおりを挟む「のぞみ、サラダ美味い」
「……ちぎって切って盛っただけ……」
「パンの焼き加減絶妙だな」
「トースターのおかげだし……」
「目玉焼きは半熟が好きなのか」
「うん。竜司さんは?堅焼きのほうがいい?」
「…………いや、俺も半熟が良い」
「嘘だぁ」
「いや、ほんと」
「や、絶対嘘。間があったし、竜司さんの口、ちょっとピクピクしてる。ほら、ホントは?」
「……堅焼き派。ついでに醤油」
「僕はソースとかマヨネーズ。……なんで嘘つくの」
「のぞみが作ってくれてんだから、文句言うなんて失礼だろ」
「失礼とかそんなんいらないし。……竜司さんの好みとか知らないと、次だって美味しく食べてもらえないし」
「………のぞみ」
「なに?」
「『次』も作ってくれるんだ?」
「………あ」
「これからずっとのぞみが朝食を作ってくれたら嬉しいなぁ。作ってくれなきゃ俺は朝食食べないからなぁ」
「えっと……」
「このスープも。あんなにあっさり作ってたのに美味い。味噌汁もきっとうまいんだろうなぁ」
「あの……」
「そうか。明日の朝も作ってくれるのか。うん。それはいいな」
「うー……」
「のぞみ?」
「……来て、いいなら、来るけど。でも、毎日は……困る」
「じゃあ次はいつ?」
「……わかんない。だって、講義とか、予定とか、あるし。バイトもあるし……」
「金曜は?」
「バイト、あるけど」
「バイト終わってからでいい。土日もバイトがあるなら送っていく。金曜から来て月曜の朝まで。どう?」
「週末お泊りってこと?」
「そう」
「……でも、竜司さん、他の子とか……」
「呼ばないし抱かない。マッチングも使わない。……ああ、いや、のぞみが俺との連絡をマッチングを通してしたいってんなら、まあ、使うことにはなるが」
「……連絡先……、交換、する?」
「いいのか?」
「うん」
「なら、交換しよう。さっさとしよう。ほら、スマホ持ってきて」
「急かさないでよ……。まだ朝ごはん中!」
「そうだな。味わって早く食べよう」
「……竜司さんは、僕がここで料理しても嫌じゃないの?」
「なんで?」
「……僕、ずっと自炊はしてたけど、そんなに料理うまくないし……、自分の家のキッチンとか勝手にいじられたら嫌な人はいるだろうし……」
「俺は嬉しい。だって、これ、俺のために作ってくれてんだろ?そんないじらしいことされて嫌な気分になんてならないよ。逆にもっと、いと――――可愛く思えて困るだけ」
「ほんと?」
「これは本当。絶対本当。ほら、口元ピクピクしてるか?」
「……してない」
「な?」
「うん」
「のぞみは色々考えてるんたな。考えすぎて不安になるくらいなら、なんでも俺に言えばいい」
「……そんなの、ただ迷惑だし、鬱陶しいじゃん……」
「そんなことはないな。俺のそばにいるときくらい、のぞみは素のままでいればいいんだよ。料理がしたいならすればいいし、寝たいなら寝ればいい。テレビが見たいなら見ればいいし、俺とシたいなら襲えばいい」
「……最後のは、ちょっと、恥ずかしいんだけどっ」
「そうか?」
「そう!」
「つまり、襲われたいと」
「そんなこと言ってないし!」
「俺は襲いたくなったらいつでも襲うぞ?流石に時と場合ってのは選ぶが」
「……今朝も襲われたっ」
「あれは可愛かったな。……食べ終わったら風呂に入ろうか。中で出さなかったが、それなりに濡れたからな。綺麗にしてやる」
「や……自分で……」
「それは聞けないなぁ」
「うー……」
「のーぞーみー?」
「竜司さん、すけべ」
「そうだな。問題ない。もうこの先ずっとのぞみ専用だからな」
「……僕、専用?」
「そうだ。……のぞみも、俺だけにしておけよ。マッチングするの禁止」
「……しないし。竜司さんの相手するだけで一杯一杯だし……」
「だろうな。他のやつとやりたいなんて思えないくらい搾り取ってやるから」
「……搾り取るのは僕の方!」
「ん?そうか。俺の種がなくなるまで搾り取ってくれるんだな?」
「はう…」
「昨夜のアレだけじゃまだ空にはなってなかったからな。いやぁ、楽しみだな、のぞみ」
「……あれだけしてまだ空じゃない、って……っ、竜司さん、絶倫なの……?」
「のぞみ以外にこんなことなかったんだけどな。まあ、一ヶ月も続けば落ち着くだろ」
「一ヶ月……」
「まあ、最初は一週間でもいいが」
「一週間……」
「とりあえず次の金曜からお泊りは決定だ。いいよな?」
「……うん」
「そういえば、のぞみのバイトって、何してるんだ」
「カフェの店員」
「へえ。なんてとこ?」
「ちょっと住宅街よりの、『アリス』ってとこ。カフェだけど、ランチとかディナーメニューもあるとこ」
「ふうん。何時まで?」
「閉店が九時だから、遅くても九時頃」
「店長って、男?女?」
「男の人」
「……のぞみにセクハラとか、してない?」
「されてないけど?」
「他の店員は?」
「何人かいるけど……、あんまり親しくないよ……?」
「ん。ならいいか」
「何が」
「いや。こっちの話」
「竜司さん、マスターとおんなじ顔してる」
「は!?」
「マスターも僕がバイト始めるって言ったらあれこれ聞いてきて、『うん、それなら大丈夫か……』って変な納得してた。なんかね、心配したお父さんみたいだなぁ、って思って。……僕、心配した父さんなんて見たことないけど」
「………そうか。大志も心配したんだな。俺も心配してる。けどな、それは父親としてじゃないからな」
「じゃあ、なに?」
「なんだろうな?」
「僕に聞き返さないでよ……」
「のぞみが考えてくれればそれでいい。……そうだな宿題にでもするか」
「そんな宿題いりません。……あ、そうだ。目玉焼き、ちょっとチンする?そしたら堅焼きぽくなるし……」
「いや、今日はこれがいい。ありがとうのぞみ」
「……えと……、どういたしまして?」
*****
竜司の心の声
『やっべ。愛しいとか普通に言うとこだった。子猫が可愛過ぎるのが悪いんだよな。はぁ。言いたい。好きだよ。愛してるよ。お前の行動全部が可愛くて可愛くてどんどん好きになるし。はぁ……子猫、さっさとここに住んでくれないかね……』
*****
子猫の心の声
『どうしよう……竜司さんに喜んでもらえた……!ずっと食べたい、って!!嬉しい、すごく嬉しい!!でも、ずっと、って、毎朝、って、僕、ここまで毎朝通うのかな?……だって、毎日泊まったら迷惑……だよね。……あ、でも、金曜日、泊まりに来いって言ってくれた。一週間くらい後だけど……、でも、僕のこと呼んでくれた。嬉しい。すごく嬉しい!』
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