僕を裏切らないと約束してください。浮気をしたら精算書を突きつけますよ?

ゆずは

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竜司と子猫の長い一日

僕の涙を竜司さんが拭ってくれた件

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 手を引かれて浴室に入った。
 そこもやっぱり広くて、浴槽なんて大人三人が足を伸ばしても入れそうなくらい大きい。

「のぞみ、足元気をつけろよ」
「うん」

 こっちも、全体に黒いピカピカの石タイル。……こう……、雰囲気がラブホのお風呂ににてる感じなのは何故だ。

「……お前、今ラブホの風呂みたいだなとか思っただろ」
「え。なんでわかるの」
「俺も最初に思ったからだよ」

 竜司さんに言われて、竜司さんを見て。お互いに吹き出して笑いあった。

「きっと黒色がエロく感じるんだよ」
「だろうな。ったく…。誰の趣味なんだか」
「浴槽まで黒いと入浴剤入れてもわかんないね」
「お前が蜜を吐き出したらよく目立つだろうな」

 僕の後ろから覆いかぶさるように体をくっつけてきた竜司さん。みつ……って、って考えて、竜司さんの手が紐パンをつけたままの僕の股間に伸びてきて、ペニスをやんわりと握った。
 ……ああ、なるほど。

「……オヤジ臭っ」
「ほっとけ。……のぞみ、風呂に入りたい?お湯入れるけど」
「竜司さんは?」
「のぞみが入るなら入るかな。のぞみ抱きしめてやらないと溺れるだろ」
「…………入らないっ」
「むきになるってことは図星ってことだな」
「竜司さんっ」
「ん?」
「………意地悪だっ」
「どうものぞみのことは弄りたくなるんだよな」

 やっぱり子猫だからか……なんて付け足した竜司さん。そんなの迷惑なんだけど!

「まあ、入るのは明日でも良いな。のぞみ、体洗おうか」

 僕からするりと体を離した竜司さんは、僕の腰に手を当てて壁際まで促した。
 この壁にはでかい鏡。
 それから、高級そうなシャンプーとかコンディショナーとかとかが置かれていて、その他にホースみたいなものとか、メッシュの籠みたいな入れ物に、いろんな小瓶が置かれてる。

「のぞみ、甘い香りとか好きか?」
「竜司さんの匂い?」
「え?」
「え?」

 しばし二人で見つめ合ってしまった。
 ああ、って声を出したのは竜司さんが先だった。

「さっき匂い嗅いでたよな」
「うん。そしたら甘い匂いしたから。そのことじゃなくて?」
「ボディソープのこと。無香料もあるけどのぞみなら甘い香りが好きそうだなと思ってな」

 ほら、って中身を少し出して匂いを嗅いだ。
 確かに甘い香りがした。お菓子みたいな。きっとバニラの香りかなんかだ。
 でも、竜司さんから感じたのは、もっとスッキリした感じの甘さだったから、これじゃないと思う。

「うん。好き。でも、竜司さんの匂い、これじゃない」
「だろうな。俺はこのソープは使わないから」

 じゃあますますわからない。あの匂いは体臭?でも、甘い匂いの体臭なんて聞いたこともない。
 それより、竜司さん本人が使わないボディソープがあるってことは、それを使う誰かがいるってことだ。
 ……そう考えてしまったら、なんか、すごく嫌な気分になった。

「竜司さんが使わないなら誰が使うの」

 ……口に出してしまった言葉。
 竜司さんは驚いているけど、僕も、驚いてる。
 こんな、こと、言うつもり無かったのに。誰が使ったって、それは竜司さんのプライベートなことで、僕には問い詰めるようなことする権利なんてないのに。

「のぞみ」
「ごめんなさい……っ、今の、聞かなかったことにしてください……っ」

 どうして。
 わかんない。
 ぼろぼろ涙が出てくる。
 どうしよう。
 止まらない。

「のぞみ」

 いきなり、真正面から、竜司さんに抱きしめられた。竜司さんは体を屈めて、僕の首筋に顔を埋めてる。

「悪かった。俺がデリカシーの欠片もなかったな。謝るから、許してくれ」
「りゅ、じ、さん」
「そうだよな。嫌だよな。今度のぞみ用の、のぞみが好きなもの買いに行こう。なんなら明日行くでも良い。今日は無香料の方使おうな?」
「う、ん」
「道具も全部のぞみ用に買い揃えるから。今まで使ってやつは捨てる。これから揃えるものは全部のぞみ用だ」
「ぼく、の」
「ああ。このバスルームを使うのも、これからは俺とのぞみだけ。なんならベッドも買い替える。全部のぞみの思うようにするから、もう泣くな」

 苦しくなってた胸が、すーって軽くなる。
 僕は竜司さんの言葉が嬉しくて、その言葉の深い意味なんて考えなかった。どうして自分がこんなに苦しくなったのかも考えなかった。
 ただただ、竜司さんは僕のだ、って、思った。

「りゅうじ、さん」
「涙止まったか?」
「うん」

 竜司さんは顔をあげると、僕の顔をじっと見て、目元に何度もキスを落としてから「よし」って言った。

「あー……くそっ」
「なに」

 いきなり悪態をついた竜司さん。
 どうしたの…って見てたら、凄く凄く苦々しいカオをした。

「のぞみ、お湯かけるぞ」
「え、ちょ」
「目、閉じれよ」

 容赦なく頭上から温かいお湯が降ってきた。細かい粒は気持ちがいい。
 なんでいきなり……。
 竜司さんの指が僕の顔を念入りに撫でていく。……というか、洗ってる?

「のぞみ、口直しさせて」
「ふぇ」

 お湯が降り注ぐ中、竜司さんが僕を食べるキスをしてきた。
 ……ね。
 腰、かがめてるけど、大丈夫?




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