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竜司と子猫の長い一日
回想:僕の初恋は一週間で終わった件
しおりを挟む自分の性指向に気づいてしまえば、やることは早かった。
なんせ、家には誰もいないんだから。やばいことも調べ放題だしやり放題だ。
広めの家族向けの家の中に僕一人。
そういえば、夫婦の寝室だった部屋からは、いつの間にか荷物や家具がなくなっていて、そのことにも僕はほっとした。
パソコンで男同士のセックスを調べたり、いかがわしい動画を見たり、勉強した。
プラグというものを通販で取り寄せて使ってみると、これが案外気持ちよかった。
マッチングアプリなんてものも使ってみた。援交用の裏サイトも使ってみた。
…世の中、男子高校生を性的にどうにかしたい大人が意外と多くて笑えた。
初めてのセックスの相手はマッチングアプリで知り合ったどっかの小学校の先生だった。
三十代そこそこの先生だったけどとても慣れていて、案外あっさり怪我することもなく安全に『処女』を手放した。
後ろを貫かれる恐怖や不快感もなくて、援交じゃ本番ありで結構稼いだ。
高三のとき、マッチングアプリで知り合った男性から、「君に惚れたんだ。俺と付き合ってほしい」と初めて告白された。
その人はサラリーマンの人で一人暮らしで、初めての告白に僕は浮かれていた。
好意をむけられて、僕もその人を好きになった。
ことあるごとに、「ずっと一緒だ」「離さない」「君は俺の運命の人だ」って言ってくれるのがすごく嬉しかった。
セックスはちょっと強引で、毎回尻穴に薬を塗らなきゃならなかったけど、それも愛されてる証拠だと思うと嬉しい要因でしかなかった。
ほぼ親に捨てられた状態だけど、今までの不幸はきっとこの人に出会うためだったんだ、この人が俺の運命の人だったんだ……って、盲目的に信じ込んでいた。
そして、付き合って一週間後。
いつもの強引なセックスが終わってから、その人は僕に向かって言った。
「社長の娘と結婚することになったんだ!もちろん喜んでくれるよな!?」
………って。
僕の中で何かが壊れた。
いつもいつも、出血する尻穴の痛みに耐えて、それも幸福の証だと信じていたのに。この人には自分だけだと思ったのに。
「頭湧いてんの?女と結婚するって喜ぶあんたを、どうして僕がお祝いしなきゃならないの?僕は、あんたの恋人、だったんだよね?ねぇ、なんで?」
「……っ、んなの、当然だろっ。男同士なんて所詮先が見えてんだよ。女と結婚したってこの関係が変わるわけじゃないだろ?俺はノゾのことが好きなんだよ。愛してるんだ。だから、ノゾとの関係を続けるために結婚するんだよ?なのに、俺を祝わない?それはお前が間違ってるだろ。俺を好きなら祝えよ。愛人にしてやるって言ってんだから、それで満足できるだろ?」
「……ばっかじゃないの。愛人になんてならない。あんた、セックス壊滅的に下手だもん」
「この………っ」
手をあげられたのはこれが初めてだった。
激しく頬を張られて、ベッドから体が吹っ飛んだくらいだった。
……でも、涙すら出なくて。
僕の、たった一週間の、短い初恋が終わった瞬間だった。
その後からつけたんだよね。
付き合うときの条件。
でもその頃は、高校生だから、子供だからって、甘く見られることも多くて。最短三日で複数プレイに持ち込まれたこともあったっけ。
僕がどんな生活をしてても、両親は何も言わない。連絡はたまに通信アプリで文字だけでしていた。
どうしても親の署名が必要なものとか、連絡を入れて食卓テーブルにおいておけば、その日のうちにサインされている。
乱れた生活を送っていた自覚はあったけど、学校の成績だけは落とさないようにしていた。
大学はどこでもいいから卒業したい。
入学金くらいは準備してくれるだろうけど、その後はわからない。だから、学費免除を受けたいけど、そのためには成績優秀が必須だから。
大学を受験することをアプリで連絡する。
そしたら翌日には受験費用とかが追加で用意されてた。
そして、卒業式の日。
当然のように式に現れなかった両親は、僕が帰宅すると家にいた。
おかえり、も、久しぶり、も、なにもない。
親にかけた最初の一言が、「なに?」だったかな。
「離婚することになった」
父親から出た言葉に、まだしてなかったんだ…って内心驚いた。
「この家も引き払う」
そうでしょうね。
「金銭的に援助はする。だが、お前は俺と母さん、どちらの籍にも入らない」
「当面の生活費と、新しい家の保証、大学の入学金と授業料ができればほしいんだけど」
卒業早々ホームレスになるのは困る。
「ここに入ってる金を使え」
父親が僕の前に、僕名義の通帳と印鑑、キャッシュカードを出してきた。
中身を確認したら、結構な額が入ってて、まるで手切れ金みたいでうけた。
その後は父親とアパートの契約に行った。
比較的新し目の2DKの部屋。家賃もそこそこ。
部屋の契約だけを終わらせると、父親はさっさと帰っていった。
…帰る先は、あの女のところなんだろうな。
母親はほとんど何も話さず帰っていった。
引っ越しの手配は父親がしてくれる。
……結局、家族ってなんなのか、わからないまま、終わった。
両親が離婚して、どちらの籍にも入らない僕は、それでも『伊東』のままだった。頼れる親戚も知らない。祖父母には物心ついてから会ったことがない。
天涯孤独になったらしい僕はとりあえず役所に相談に行って、受けれる援助は全て受けることにした。
大学には無事に受かっていたから、入学金を振り込んで、受けれる援助の手続きに入った。
……忙しかったな。
でも、手続き以外の煩わしさはなかった。
なんとなく、解放された気がした。
それだけが救いだった。
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