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本編
友兄の……彼女?
しおりを挟む住所は知ってる。
行ったことはないけど、住所さえわかればどうとでもなる。
部活が終わってから即行着替えて荷物を持って学校を出た。
いつも使っている自転車に荷物をのせてから、家に電話をかけた。
友兄の家に行くって伝えたら、特に反対もされない。
友兄は家に行ったら駄目だってことを、俺にしか言ってないのかもしれない。
…とにかく、今は色々考えるのをやめた。
考えれば考えるほどどつぼにはまりそうだし、くじけてしまいそうだから。
引き返したくなるのを振り払うように自転車を走らせる。
とにかく、話をしたい。
面と向かって、目を見て、ちゃんと。
どうして俺が家に行ったら駄目なのかも、どうして俺を避けてるのかも、……あの、表情の意味も。
颯の言葉を全面的に信じるわけではないけど、自分のキモチのけじめもつけないと、俺はいつまでもこのままで。
……けじめをつけて、振られて、そのまま颯とお付き合い……ってのは、どう考えてもないと思うけど。
とにかくこのままじゃいけないってのはわかってるから。
走り続けて小一時間。
目的のマンションに到着した。
途中で電話をしてみたけど、やっぱり電話に出てくれない。
「えっと……三階の……」
メモの部屋番号を探し当てて、手が震えた。
けどその震える手でなんとかインターホンは押せたけど、……応答がない。
まさかここまで来て居留守を使われるとも思えない。流石にそんな酷いことはしないと思うんだ。
ということは、帰ってないってことだろうか。
もう六時を過ぎてて、明日は土曜日だから多少遅くなるのは構わないんだろうけど……でも、何してるんだろう。
玄関脇の壁に背中を預けた。
外はもう暗い。
……もし、このまま帰ってこなかったらどうしよう。
さすがにここで一晩明かすのは勘弁願いたい。
「……まだ……かな」
何度か住所を確認した。番地も、マンションの名前も、部屋の番号も間違っていない。
「……ちょっと暑い、かな」
全速力で走ってきたし。
空気の流れのない廊下は、凄く熱気がこもる。
あー……お茶くらい買ってきたらよかった。部活でも動いてたんだから、水分不足だ。
今から買いに行く?
…でも、すれ違いになったら、俺、もう一度インターホン押せるのかな…。
一度ここを離れたらもう俺は何も出来ない気がして、待つことに決めた。
暑い……って手で顔をパタパタ扇ぎながら、三十分くらい経ったかな。この階に上がってくる足音がした。
思わずそちらに視線を向けて……固まってしまった。
友兄の隣に女の人がいる。
きっと、同じ大学の、人。
「…理玖?」
俺が呼ぶよりもさきに友兄が俺に気付いた。
すごく…すごく驚いたような顔で。
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