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幼馴染み二人と西の森の事件に巻き込まれる
12 魔力切れ
しおりを挟む「あー……駄目だ。俺休むわ。フィー添い寝して」
「え、うん」
なんか、ディーがだるそうにうつむいて髪をかきあげてる。
こんなディー見たことない。
「フィー、ディーは放っておいていいから、私とお茶しよう」
「え?でも…」
「ディーは魔力切れ。休んでればそのうち楽になるから」
「魔力切れ……」
それは、僕の癒しじゃ治らない?
怪我じゃないから無理、なのか。
「フィーがいないと辛い」
「ディー」
「フィーを抱いて寝たらすぐ戻る」
「じゃ」
「そんなのすぐ戻るわけないでしょ。フィーがいてもいなくても変わらないからね。フィー、そんな出鱈目信じなくていいよ?私がいうんだから間違いないんだから」
「そう?」
「そう。ディーがそれでフィーを独り占めするなら、私だって毎回魔力切れしたらフィーを独り占めするけど。いい?」
確かにそうだよね。
魔力のことはエルが一番よくわかってるんだから。
…でも、ディーがこんなに辛そうにするなんて、今までなかったし。
「あ、じゃあ、ディー、ここに、寝て?」
「ん?」
僕の腰に腕を回してたディーが、少し体を離した。
僕は自分の膝をぽんぽんと叩く。
「膝枕」
「うん」
添い寝じゃないけど、いい?
「ずるい…っ」
「今度、エルにもしてあげる」
「約束?」
「うん、約束」
「……仕方ないね。いいよ。今だけ許してあげる」
エルはやっと納得してくれた。
ディーは軽く溜息をつきながら、僕に向かって体を倒してきて、ごろんと僕の膝に頭をのせてソファに横になった。……ディー、僕の方を向いて腰を両手で掴んでくるのは、ちょっと、想定外だったんだけど。
「はぁ……フィーのにおい……」
僕のお腹あたりに顔をくっつけて、すーって息を吸い込む。
「変態」
「……なんとでも言え。俺は今最高に幸せな気分だ」
「そのままフィーのこと食べないでよ。――――フィー、お茶とお菓子用意してくるから待ってて」
「うん」
こめかみのあたりにエルがちゅってキスをしていく。
ディーは動かない。
なんとなく髪をなでてみたけど、それでも動かない。
「……ディー……、寝た?」
魔導具のついた耳も触ってみたけど、反応がない。
……魔力切れで辛かったのはほんとだったんだ。大丈夫、かな。
「……無理、しないでね」
少し硬い髪をなでながら、治らないとわかっていても癒しを使った。
心の中で女神さまにお祈りして、ふわりと指先が暖かくなる。
はやく元気になって。
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