181 / 247
幼馴染み二人と蜜月を過ごします。…蜜月ってなんですか?
3 僕達の家
しおりを挟むエルにおんぶされたまま、来たことがない場所ををキョロキョロ見回した。
いわゆる居住区なんだろうけど、なんかすっきりした区画。
それから、門からは結構離れた場所にある奥まった場所。もしかして、春の魔物襲撃の影響なのかな。できるだけ門から離れた場所のほうが安全だから?
ディーとエルは迷いなく進んでく。
一つ一つの家がそれなりに広いし、大きな広場もあった。
僕が周りを見ていたら、ディーとエルが立ち止まった。
目の前に真新しい扉。
「ここ?」
「そう」
ディーが鍵を取り出した。
鍵を開けて、扉が開く。
エルが降ろしてくれた。
広い扉。
二人が僕の手を取ってくれる。
「「おかえり、フィー」」
一歩、入って。
「……っ、ただいま…!」
笑いながら僕を待ってる二人に、抱きついた。
僕達の家。
ディーとエルが用意してくれた、これからずっと一緒にいるための家。
すごく、すごく、嬉しいよ…!
家に入ってすぐ、たくさんキスをした。
気持ちが少し落ち着いてから、改めて家の中を見た。
家に入ってすぐ、左手は壁。右手はまた扉。目の前は、カーテンのようなもので仕切られてる。
「部屋?」
「そう。万が一誰か来たらね。流石に、父さんたちと母さんたちが皆で来たら狭いから、別に宿をとってもらうが」
ディーが開けてくれた部屋の中には、ソファとテーブルが置かれてた。
窓が大きくて、すごく明るい。
「おいで」
ディーが手を引いてくれた。
カーテンで仕切られた向こう側。
左手側には台所があって、その奥はやっぱり明るい居間になってた。
「わ……」
大きな窓。
右手側の窓は床から設置されてて、しかも、
「あ、開く」
「そこから外に出れる」
「外……、あ、庭だ!」
「そんなに大きくはないけどな」
背の高い木とか低い木とかに囲まれた庭。
木が周りの家からの目隠しにもなってるみたいで、木と空しか見えないくらい。
さっき見せてくれたお客さん用の部屋からも見えるんだ。
「春になったら花壇も作ろう。フィーの好きな花を植えたい」
「うん!」
「それで、こっちが」
ディーがまた僕の手を握った。
「寝室」
…って、扉を開けた。珍しい横に動く扉だった。
扉のすぐのところに、段差がある。
「フィー、そこで靴を脱いで」
「え」
エルの靴がもうそこにあった。
「はい、これ履いて」
「うん」
エルは寝室の中にいて、僕の足元にふわふわのものを出してくれた。
「室内履き。寝室用の。裸足でも大丈夫だけどね」
「ふわふわ……」
薄いレースのカーテンだけがされた部屋の中は、朝日が入ってきてて明るい。
床はすごく丁寧に磨かれた板張りで、裸足で歩いても気持ちよさそう。
一枚大きな敷物があって、それもすごくふわふわしてるみたい。
それから小さなテーブルと。
それから、それから、村の宿屋さんで使ったくらい、大きなベッドが。
「おっきい……」
「いいだろ」
うん。三人で寝ても僕絶対落ちないと思う。
壁一面の扉は、服がたくさん入ったクローゼットだった。
出入り口近くのもう一つの横に動く扉の先は、お風呂場とトイレだった。
浴室の方も見たけど、……広いし、なんかすごい。
「風呂はエルの意見まんまだからな」
「そうなの?」
「そりゃこだわるでしょ?可愛いフィーを見れる場所なんだから」
よくわかんないけど…、エルがいいならいいのかな。
浴室の中に低めの台…ベンチ?みたいなものが設置されてるし、なんか大きな鏡もかけられてる。
浴槽自体は床から少しだけ高くなってた。
「………ね」
「「ん?」」
「いくらくらい……かかったの……?」
ディーのこだわりとか、エルのこだわりとか、なんか普通の家と違う気がして。
気になって聞いてみたら、二人とも笑顔のまま、「気にしなくていい」って言った。
……ほんとに僕気にしなくていいのかな……?
*****
間取りを決めるのに数日かかりました…。
あーでもないこーでもない、と。
イラストを掲載する技術が自分にないので(笑)、なんとなくイメージしてください(笑)
客室をつけるべきかつけないべきか。
悩んだ挙げ句、つける方向に…。
そのうち誰かが遊びに来るはず。
家と庭を合わせて長方形の敷地です。
玄関開けて右手側は、庭に面した客室。
左手側は壁で、壁の向こうはキッチンスペースです。
暖簾のような仕切りカーテンの向こう側が居間。
キッチンは対面式なので、居間に向いて調理をする感じ。
壁で仕切られてますが、キッチンの隣は脱衣所です。
キッチンのすぐ後ろ側に、貯蔵室があります。
居間には、庭に出るベランダと大きめの窓と、寝室への引き戸。
フィーを抱き上げて移動することを想定してるため、扉の幅が通常の1.5倍ほどあります。お風呂場の扉も同じく。
家の作りは基本ディーが担当。
キッチンと浴室はエルが担当。
庭が他の住居から目隠しみたくなっているのは、ディーがよからぬことを考えているから(笑)
風呂場の鏡とベンチは、エルがよからぬことを考えているから(笑)
気づかないフィー。
ベッドには引き出し等ついており、怪しげな道具が入ってます(エルの趣味)。
クローゼットの中身は、ほぼほぼフィーの服。
家一軒まるごと、二人のフィーにかける愛情(……愛情?)の表れです。
とんでもない情熱です。
フィー…頑張れ。
3
お気に入りに追加
1,338
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

王族なんてお断りです!!
紗砂
恋愛
この度めでたく私、エリス・フォーリアは男爵令嬢のいじめなんて生ぬる……馬鹿らしいことをしたという理由で婚約破棄をされました。
全く身に覚えもありませんし、その男爵令嬢の名前すら知らないのですが。
まぁ、そういうことで王家を見限った私は王国から店舗を撤退させていただきます♪
……のはずが、何故国王選定の最有力候補に名前があがっているのでしょうか?
そのうえ、他の公爵家の方々から頭を下げられ、隣国の王子との婚約話も進んでいるのですが……
ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります
ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。
今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。
追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。
ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。
恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
勇者パーティから追い出されたと思ったら、土下座で泣きながら謝ってきた!
蒼衣翼
ファンタジー
書籍化にあたりタイトル変更しました(旧タイトル:勇者パーティから追い出された!と、思ったら、土下座で泣きながら謝って来た……何がなんだかわからねぇ)
第11回ファンタジー小説大賞優秀賞受賞
2019年4月に書籍発売予定です。
俺は十五の頃から長年冒険者をやってきて今年で三十になる。
そんな俺に、勇者パーティのサポートの仕事が回ってきた。
貴族の坊っちゃん嬢ちゃんのお守りかぁ、と、思いながらも仕方なしにやっていたが、戦闘に参加しない俺に、とうとう勇者がキレて追い出されてしまった。
まぁ仕方ないよね。
しかし、話はそれで終わらなかった。
冒険者に戻った俺の元へ、ボロボロになった勇者パーティがやって来て、泣きながら戻るようにと言い出した。
どうしたんだよ、お前ら……。
そんな中年に差し掛かった冒険者と、国の英雄として活躍する勇者パーティのお話。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる