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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
82 僕が神殿を出る日の前夜
しおりを挟む僕が高位神官になって季節が巡って。
時々運ばれてくる不慮の事故に遭った人たちの癒やしをしながら、癒やしが万能ではないし、完璧なものでもないっていう神殿長さんの言葉を思い出しては唇を噛んだ。
死んだ人を蘇らせたり、死を止めることができたり、そんなことだけを指す言葉じゃなかった。
小さな傷跡でさえ、微かな跡が残る。
大きな怪我であればあるほど、癒やしの効果は薄くなるし、何度もかけ続ける必要が出てくる。それに、傷跡もひどくて。赤く盛り上がった皮膚はそれ以上治らない。痛みは良くなるし、怪我としては治っているのだけど、それが僕達神官ができる限界なんだ。
当然、千切れた手足が元のようにくっつくことはないし、千切れかけた手足がくっつくこともない。
……だから、僕が二人を癒やしたときのことが、本当に『奇跡』だったと言われて納得する。
本来ならありえない癒し。
あれ以来、僕がそんな神官の域を超えるような癒やしをかけれたことはない。
神殿長さんやディーリッヒさんたちと変わらない癒し。ほんのちょっとだけ、傷の治りがいいらしい、程度の。
人で在り続けなさい、って意味もわからないまま。
僕は至って普通。
とっても普通。
「ん……と」
秋の二の月に入って、僕達の家が完成した。
引っ越しの準備とか家具の手配とかで色々忙しくて、三人で相談して今月の一の日は会わないことにした。
そして今日は二十の日。明日は僕が十六歳になる日。明日、僕は神殿を出る。
「荷物……は、明日ディーとエルが手伝ってくれるから……」
このお部屋に引っ越したときから、そんなに荷物が増えたわけじゃないけど、あのときだって結局僕一人じゃ何もできなかったんだよね。
みんな手伝ってくれて、神殿長さんまで荷物を運んでくれて。
「僕成長してないや」
どこから手を付けていいのかわからない。えへ。
色々諦めた頃に、キリルくんが部屋に来た。
「ラルフィン――――って、全然片付いてないじゃん」
「んー、やっぱり僕苦手で」
「神官位があがってもやっぱりラルフィンはラルフィンなのな。なんか安心したわ」
「むぅ」
「拗ねるなよ。それより、ほら、夕飯行こうぜ」
「うん」
皆と食べる夕飯、これで最後だもんね。
キリルくんと一緒に食堂に向かう。
不思議と誰にも会わない。
「?」
「どうした?」
「なんで誰もいないの?」
「いるって」
「どこに?」
「ここに」
……って、キリルくんが食堂の扉を開けたら、中にいっぱい人がいた。
「ほわ」
「ラルフィンのお別れ会な、一応」
「えええ」
ほんとにみんないた。
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「……色気より食い気」
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なんか色々言われてる気がするけど、気にしなーい。
「あ、こら、プリンよりご飯先に――――」
「いただきまーす!」
キリルくんの注意も何のその。
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最後の夕食。みんなで楽しく過ごした。
うん、本当に楽しかった!
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