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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
77 まだまだ回復途中
しおりを挟む瀕死の大怪我をした二人を助けてくれたのは店主さんだったらしい。
あと一撃でもうけていたら、その場で死んでいた、って、お見舞いに来た店主さんから聞いた。
「すまなかった」
……って、店主さんに謝られた。
「俺が、逃げ遅れた住人の護衛に回れって指示を出したんだ。この二人は確かな腕があるからな。…だが、二人が抜けた前線で魔物が抑えきれなくなった。俺の落ち度だ。本当にすまなかった」
「……僕は、二人がいれば、それで……。それに、店主さんが来てくれなかったら、二人とも死んでたんですよね…?だったら、僕の方が、店主さんに感謝しないと」
本心から言うと、店主さんは困ったように笑った。
「結果として、こいつらが守ってた住人からは被害が出なかったよ。こいつらに何人もの人が命を救われた。殿下からも報奨金がでている。前回の倍くらいだな」
「クリストフ殿下が…」
「事後処理に追われてて今は寝る暇もないくらい忙しいらしい。神殿で見かけたら声をかけてやってくれ」
「わかりました」
「じゃあまたな」
店主さんは手をひらひらさせて救護室から出ていった。
僕は改めて、二人が眠るベッドの間に置いた椅子に座り、二人の手を取った。
襲撃から半月ほどが経ったけど、二人の回復はまだ終わらない。
昼間もほとんど寝てる。
食事は食べる量が増えた。
起きてる時間は元気だよ!って僕に見せてくれるけど、その後は深く眠ってる。
その間、僕は癒やしをかけ続ける。
全身に巡るように、気をつけながら。
一日に何度か来てくれる神殿長さんや、ディーリッヒさん。
二人の怪我自体は治っているから、もう癒やしをかける必要はないよって言われる。僕が体力を消耗するだけだから、やめなさい、って。
でも僕はそれだけは聞けない。
心配かけてごめんなさい。
でもこれは僕がやりたいことだから。やらせてください。
「神官のお仕事、何もできずにごめんなさい」
気になっていたことを言うと、神殿長さんの大きくて優しい手が僕の頭に置かれた。
「気にしなくていいんだよ。…それより、本当に体は大丈夫かい?」
「はい」
「そうか。…だがな、ラルフィン。焦って自分の命の輝きまで、癒やしに使っては駄目だよ。ラルフィンの命と引き換えに癒やされても、二人は悲しむだけだからね?」
「……はい」
僕、やりすぎちゃうんだな。
神殿長さんとディーリッヒさんには、僕が疲れてるように見えて心配してくれてるんだ。
……疲れてるとか、感じないけど。
「昼間も少し二人と一緒に眠ったらいい。横になれば自分が疲れていることも自覚できるだろう」
ディーリッヒさんは苦笑気味に言った。
一緒に……。
「それじゃあ、また来るからね」
「はい。ありがとうございました」
二人が救護室を出てから、僕はじっとディーとエルを見た。
一緒に寝る、と言っても、今は別々のベッドで二人が寝てるから、二人同時には無理だし。
うーん、って考えて、とりあえずディーのベッドに潜り込んだ。
勝手に手を持ち上げて、腕の中にすっぽり収まるように横になる。
夜は三人一緒に眠ってる。
でも、昼間に僕が横になるのは初めて。
くっついていたら、ディーの体温と呼吸を感じた。
少し体を伸ばしてディーの唇にちょこんとキスをする。
そしたらなんだか眠くなってきて、目を閉じた。
いつの間にかディーにしっかり抱きしめられていた事に気づかないまま、僕は眠っていた。
……そして目が覚めたとき。
エルに怒られた。
ディーばっかり狡い、って。
だから、果実水を飲んでから、今度はエルのベッドに入る。
エルはぎゅうぎゅうと僕を抱きしめて、何度もキスをしてくれた。
あ、僕は抱き枕なんだな、って笑いながら、やっぱりすぐに眠くなってきて、寝てしまった。
ありがとう
って声を聞きながら。
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