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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
70 西町には二人が
しおりを挟む怪我をした人や毒に侵される人が多い。
礼拝堂の中は色々な匂いや声で酷く混乱してた。
毒を持った魔物が含まれていることで、前回の襲撃のときより運ばれてくる人が多い。住民の人たちばかりじゃない。防具を身に着けた――――多分冒険者の人とか、お城の兵士さんらしき人も運ばれてくる。
毒は対処できないんだ。
殿下も出てるだろうけど、浄化をしてる余裕もないってことだ。
「……なあ、いつもこんなに酷いのか……?」
浄化を終えたキリルくんが、兵士さんの腕に包帯を巻きながら話しかけてきた。
「いつも……っていうか、僕もこれで二回目だけど……」
改めて見渡す。
助かる人ばかりじゃないから、真っ白な布をかけられた亡くなってしまった方もいる。
悲鳴も。
嗚咽も。
それから、感情が。流れ込んでくる。
「……運ばれてくる人は、前回のときより多い、かな。多分、西町だから……」
「西町だと何が違うんだ?」
「えと……、大きな冒険者宿があって、冒険者の人が多いから、商人の人も多くて、治安がいいから住人の人も多くて……」
僕が毎月出かけてる西町は、すごく活気に溢れてた。
お店が一杯で、人がたくさんで。
門の近くにも、お店が広がってたはず。
「ラルフィン」
その西町が襲われたなら、ディーとエルはすぐに駆けつけたはず。王都から離れるって連絡もらってないし。
今のところ、毒を受けて運ばれてくる冒険者らしき人の中に、暁亭でみかけた人たちはいない。
けど、もしかしたら。
「ラルフィン」
頭を撫でられて、気付いた。
キリルくんが心配そうな顔をしてる。
「そっか。お前の恋人たちって」
「……ん。西町の冒険者だよ」
「……じゃあ、心配だよな。ごめんな」
「ううん。大丈夫!だって、ディーもエルも、すっごく強いから!」
「ん」
止まってしまってた手を、また動かす。
ディーリッヒさんと神殿長さんにお水を運んで、低位神官さんたちが座り込んできたところで、僕が祈る。
少し、広げられるだろうか。
西町まで。
届けられるかな。
使いすぎない、ギリギリで。
お願い。
届いて。
前のような、遠く離れた場所にいるみんなの姿が見えることはなかったけど、祈り終えたときに胸が苦しくなって、息が途切れそうになった。
「無茶するなと言っただろっ」
「で、も」
「ラルフィンは休め。キリル!ラルフィンを隅に寄せて休ませろ」
「はいっ」
ディーリッヒさんに怒られた。
とっても怒られた。
頭を撫でる手は優しかったけど。
キリルくんに背負われて、礼拝堂の隅に移動する。
壁に背中を預けて、キリルくんがくれたお水を飲んだ。
少し、目を閉じる。
「大丈夫か?」
「うん」
倒れて、二人に心配をかけるわけに行かないんだから。
お疲れ様、って、抱きしめるんだから。
少しの間、目を閉じて休んでた。
本当に礼拝堂の隅っこで、入口の様子とかも見えない。
気持ち悪さがなくなってきた頃、僅かに礼拝堂の中がざわめいた。
「ラルフィン!!」
神殿長さんの、声。
「え」
僕は聞いたこともないほど焦った神殿長さんの声に、びくりと身体が震えた。
すぐに立ち上がって、少しした目眩が引くのを待った。
神殿長さんとディーリッヒさんが、怖い顔をしてた。
二人の傍には、白い布が敷いてある。
その布は、遠目からでも赤く染まっていくのが見えた。
慌てて近づいて、怪我をした人を見て、僕の時が止まった。
「………え?」
そこに、ディーとエルがいた。
あちこちに血がついてて、ピクリとも動かない二人が。
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