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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
69 毒
しおりを挟む「軽い怪我の方は向こうに移動してください!」
祝福の温かい空気に包まれていた礼拝堂は、もう、一つの戦場になってしまった。
緊急の鐘が鳴り響いた直後から、怪我をした人たちが押し寄せてくる。
時間が経てば経つほど、人数は増えていく。
軽症の方は普通の治療をしていく。
高位神官の人数は限られていて、前回の緊急時から人数は変わっていない。
だから、沢山の人を癒せるように、ほんの少しの怪我には、普通の手当をしていく。
ディーリッヒさんと神殿長さんの補助に入りながら、手当にも参加する。
一人の人の腕に包帯を巻き終えたとき、ものすごく嫌な匂いがした。
なんだろ…ってそっちの方を見たら、怪我はそれほどでもないのに、顔色がひどく悪い人がいた。
…ていうか、匂いが広がってる。
…ん?
広がってる、んじゃなくて、増えてる?
「ラルフィン!」
「あ、はい!」
神殿長さんに呼ばれて、意識を戻した。
包帯は巻き終えていたから、すぐに傍に行く。
神殿長さんは酷く険しい顔をしていた。
「神殿長」
ディーリッヒさんも一旦手を止めてこちらに来た。
「毒持ちの魔物が混ざっているようだ」
「え」
「……ああ、なるほど。それで」
驚いた僕とは逆に、ディーリッヒさんは納得した顔で頷いた。
「ラルフィン、浄化をかけてほしい。礼拝堂内全体に」
「はい」
改めて見渡す。
毒、なんて。
はやく、しないと。
『女神さま』
その場に膝を付き、両手を組んだ。
『お願いします』
ふわりと、温かくて優しい腕に包まれる。
『不浄なものから守る力を。穢を祓い、清浄な光で満ちますように――――』
礼拝堂だけじゃなくて。
神殿全部。
でも、自分の限界を超えないように。
「……見事なものだね」
「ええ」
二人の声に目を開ける。
礼拝堂の中は温かな光で満ちていた。
嫌な匂いは消えていた。
顔色の悪かった人も、よくなってる。
ホッとしていたら、宿舎の方の扉が開いた。
召集される中位以上の神官さんは、もう全員いるはずで。
入ってきたのは、キリルくんを始めとした、低位の神官さんたちと、何人かの見習いさんだった。
「座学部屋か自室にいるように伝えているはずだよ?」
神殿長さんが、少し硬い声で言葉をかけた。
びくっとしたのは、見習いさんたち。
キリルくんは、僕を見てから、神殿長さんに向き合った。
「ラルフィンの浄化を見ました。浄化なら、私達も少しは手伝えます。怪我の手当だってできます。罰則は覚悟のうえです。でも、私達も、神官です」
はっきりと言い切ったキリルくん。
神殿長さんは少しキリルくんを見てから、ふ…って口元で笑った。
「これから状況は悪化していくからね。キリルたち低位神官たちは、軽症の方々の治療に。また毒に侵された方が来たときには浄化を頼むよ」
「はい!」
「見習いの君たちは無理をしないように。気分が悪くなったらすぐに部屋に戻るんだ。怪我人の治療と誘導に徹してほしい」
「はい」
「中位の皆は高位の補助に回りつつ、低位の皆の方も気にしてあげてほしい」
「心得ています」
「ラルフィン」
「はい」
「……体力を残しながら動きなさい。私とディーリッヒの近くにいるように。いいね?」
「はい、わかりました」
そして、改めて皆動き始めた。
怪我人は増える。
毒に侵された人も、何人も来る。
慌ただしく動いている間に、今回の襲撃場所が西町だと知らされた。
胸がざわめく。
嫌な、感じが、する。
ディー、エル。
お願い。
無事でいて。
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