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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
30 おはよ
しおりを挟むなんだか、とっても長い夢を見てた。
それは、とても不思議な夢。
聖女と呼ばれた女の子が、神様に見初められた。
神様はその女の子を愛するがあまり、神様の仕事を放棄した。
神様が仕事をしないことで、この世界は滅茶苦茶になった。
それを嘆いた聖女様が、神様の仕事を代わりにするようになった。
そして、また、世界に安定が訪れた。
聖女様は神様との間に何人も子供を産んだ。
でも、普通の子供のような幸福をあげることができなくて、せめて成人するまでは、人の中での幸福を感じてもらいたくて、聖女様は自分の子供を人の中に混ぜた。
聖女様も人の幸福を知っていたから。
この世界を愛していたから。
聖女様が愛するこの世界を、自分の子どもたちにも愛してもらいたかったから。
聖女様の子どもたちは、みんな、ふわふわの桃色がかった銀髪。
すべての子が地上に降りたわけではなかった。
幼くして命を終えた子は、聖女様や神様とは違う存在として、聖女様のを助けるようにその場に留まった。
その子達は天使と呼ばれるようになった。
もともと天使として生まれてくる子もいた。
地上での生活を終えて戻ってきた聖女様の子どもたちも、天使とは別のやり方で聖女様を手伝った。
大地に風をもたらしたり。
雨を降らせたり。
緑の成長を促したり。
世界を創ったり。
色々な、仕事を手伝った。
地上には聖女様の像が建てられた。
それはやがて名前を変える。
豊穣の女神アウラリーネさまと。
それが、女神さまの物語。
女神さまの愛子たちの物語。
『視えてしまったのか』
不意に、そんな言葉をかけられた。
長い銀髪を持ったその男の人は、にこりと微笑む口元に、人差し指をあてる。
『それは今は必要のない記憶だよ』
ふわりと頭を撫でられる。
『忘れてしまいなさい。私達の愛しい子よ』
どんどん、眠くなる。
『愛されなさい、愛しい子』
声が遠くなる。
『愛しなさい、愛しい子』
とぷりと、意識が沈む。
もう少し、視て、いたかった。
ゆっくりと目を開いたら、少し疲れた感じの心配顔のディーとエルがいた。
「「フィー」」
二人とも、目元に涙が溜まってる。
「「フィー!!」」
ぎゅって抱きしめられて、二人から同時に頬にキスをもらう。
…あれ。でも、なんで二人がここにいるんだろ?ここ、新しい僕の部屋だよね?
「どうしたの?」
「それはこっちの台詞……」
「どこか辛いところとか痛いところはない?」
「ん…、どこも、なんとも、ない、よ?」
「「よかった……っ」」
これ、どういう状況なんだろう。
よくわかんないけど、二人が僕のこと、とても心配してくれてるのはわかったから、二人の背中をポンポン叩いた。
「ディー、エル」
「「……ん?」」
「おはよ」
ニコっと笑って言ったら、二人ともまたくしゃくしゃな顔をして、僕を抱きしめたまま、「おはよう、寝坊助のフィー」って言った。
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