幼馴染二人と冒険者になりました!

ゆずは

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幼馴染み二人と僕の15歳の試練

23 飛び火した。

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 なんか、楽しみながらのお仕事って、いいのかな、って思いつつ、祝福をし続けた。
 だって、楽しい。
 女神さまに微笑まれながらキラキラした目で見上げてくる子や、泣いてたのに泣き止む赤ちゃんとか。
 それから、何故か、ネイミさんに求婚する人がいたりとか!
 あれはびっくりしたけど、喜ばしいことだから、笑顔で拍手を送ったよ。
 ネイミさんも嬉しそうだったしね。

 四の鐘が鳴る頃に、祝福を受けたい親子は来なくなった。
 お昼どきだから、みんな忙しくなるよね。
 普通に礼拝に来てる人たちだけになったところで、僕達四人は食堂に向かった。
 出された冷たいお茶をごくごく飲んで、おかわりももらっちゃった。すごく身体が干からびてるみたい。

「疲れたか?」
「えと…、疲れたけど、疲れてない?」
「どっちなんだ」

 ……って、みんなに笑われた。

「体は疲れたけど、心?は、疲れてない、みたいな??」
「ああ、わかるわ」

 賛同してくれたのはネイミさん。

「心が満たされてるのよね」
「そうだと思う」

 ネイミさんはくすくす笑うと、おかずを一口食べて、何かを考え始めて、また考えてる顔でおかずを食べる。

「婚約者ができて五歳の子の母親になるからって、今から料理の研究しなくてもいいんじゃないかな」
「ぶ……!!」

 ロイクさんのにこにこした言葉に、ネイミさん、顔真っ赤だ。

「むしろ、今から料理……って、色々遅いんじゃないか?」
「うぐぐ………っ」

 少し困ったような声でディーリッヒさんが言うと、ネイミさんはテーブルに突っ伏しちゃった。

「どーせ……私、家事とかできませんよぅ……」
「料理だけなら、神殿長と料理長に頼んで、厨房で叩き込んでもらえばいいんじゃないか?」
「それだ!!ディーリッヒさん、ありがとう!!」
「どういたしまして?」

 ネイミさん、ものすごい勢いでご飯を食べ終わって、厨房の方に特攻をかけに行った。
 満面の笑みでネイミさんが厨房から出てきたときに、四の鐘が鳴る。

「神殿長のところに行ってくるわ」
「い「「いってらっしゃい」」」

 勢いに押されて僕は口籠ったんだけど、ディーリッヒさんとロイクさんはにこにこと送り出した。
 嵐のようにネイミさんが食堂を出たとき、座学を終えた神官さんたちと見習いさんが入ってきたけど、走り去ったネイミさんを驚いたように見てた。

「……『お付き合いから』とか言ってたけど、あれはもう決まりですね」
「だな。……まあ、いつでも婚姻式が挙げられるように調整しておくか」
「ですね」

 頷き合ってるディーリッヒさんとロイクさんを見ながらもぐもぐ口を動かしていたら、ディーリッヒさんが僕を見て、「ああ」って声を出した。

「ラルフィンの婚姻式は成人の儀と同じ日にするのかな。ちゃんと予定を空けておくから、礼拝堂で盛大にやろうな」
「……っ、げほ…っ」
「でも、三人というのは前例がないですね。まあ、ラルフィンが前例になればいいのか…」
「あうっ」

 ……盛大に、噎せたよ。
 通りすがりのキリル君に背中を叩かれた。
 ディーリッヒさんは笑いながらお茶を出してくれて、ロイクさんは苦笑いしながらハンカチを出してくれた。

「成人の儀は、村に戻ります……」

 結婚は、すると、思うけど。
 というか、多分、決定だけど。
 もぅ………恥ずかしいな……。









******
ラルフィンに恋人が二人いることは、エルスター王都神殿の中高位神官みんなが知っているのである……。


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