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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
21 お仕事です。④ 『祝福』
しおりを挟む僕の目の前の子は、とても緊張しているみたいで、お母さんにピタリとくっついて離れない。
「おはようございます」
「……おは、よう」
「お名前、言えるかな?」
女の子はもじもじしながら、女性を見上げる。女性――――母親は女の子にニッコリ笑って、優しく頭を撫でていた。
「すみません、恥ずかしがり屋で」
「大丈夫ですよ。僕もそうでしたから」
怖がらせないように笑いながら女の子に手を伸ばしたら、女の子は手を引っ込めてしまったけど、少しずつ、僕に向かって手を伸ばしてくれた。
僕の手に重なる、小さな手。
「お名前は?」
「……ユア」
「ユアちゃん、だね」
「うん」
村で僕が祝福を受けたとき、どうだったかな。
「ユアちゃん、おいで」
温かい小さな手を引いて、女神さまの前に導く。
大きな瞳はほんのすこしだけ不安に揺れていた。
「大丈夫だよ」
祈りの形に特に決まりはない。
僕は両膝をついて頭を垂れ、胸の前で両手を組む。これは、僕にとってその形が一番しっくりくるから。
クリストフ殿下は、片膝を付いて片手を胸の前に当てる。僕が最初に見たときに、騎士の礼みたいだなって思った姿勢。
神殿長さんは、立ったまま、片手を胸に当てて軽く頭を下げる。
ネイミさんは、両膝をついて、両手を組むんじゃなくて、重ね合わせるようには胸元に当てる。
ディーとエルは、立ったまま黙礼。
うん。
ほんと、色々。
神官の中では、両膝をついて、胸の前で両手を組む人が多いとは思うけど。
「ユアちゃん、女神さまにお祈りしようか」
僕がそう言うと、ユアちゃんはきょろきょろとと周りを見てから、女神さまを見上げた。
それから、胸の前でしっかりと手を組む。
「ユア、膝を」
母親が諌めようとするのを、僕はやんわりと遮った。
「いいんですよ」
僕が笑えば、母親も安心したのか、それ以上何も言わない。
やり方は、自由。
決められた方法はなにもない。
だから、僕は、僕のやり方で。
右手の人差し指をユアちゃんの、額に当てる。
左手は、胸の前に。
『五歳の喜びの日に、祝福を贈ります。この子の進む未来に、女神さまのご加護がありますように』
心を込めて。
僕達を包み込む女神さまの腕。
優しい微笑み。
ユアちゃんは、少しでもこの温もりを感じてくれたかな?
礼拝堂の中は、すごく静かだった。
それまで、ざわついた雰囲気を感じていたのに。
それがとうしてか、とか、僕は気にしてなかった。
いつものことだから。
僕がユアちゃんから指を離すと、彼女は僕をじっとみつめて、はにかんだ。
「てんしさま」
…って、僕を見て。
「僕は天使さまじゃないよ。ただの神官」
「でも」
「はい、祝福は終わり。お母さんのところに行こう?」
なにか言いたそうなユアちゃんの手を引いて、母親のところまで戻った。
なんでか母親はすごくぽーっとしてて、僕が声をかけるとはっと気づいたみたいだった。
「終わりましたよ」
「あ、ありがとうございます……!!」
何度も頭を下げられた。
そんなに、しなくていいのに。
「ユアちゃん、ばいばい」
「ばいばい、てんしさま」
だから、天使さまじゃないんだってば。
苦笑しながら手を振って見送った。
それから何故かディーリッヒさんに頭を撫でられた。
……なんで?
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