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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
17 嬉しいこと②
しおりを挟む「あの……」
「「うん」」
頬を撫でて、背中を撫でて。
……ああ、きもちいい……。
「ぼく…ね、今日ね」
「うん」
「いいよ、ゆっくりで」
胸の中……どくんどくんってうるさい。
わかってる。
話すより、触りたいし、触って欲しい。もっとキスしてほしい。抱きしめてほしい。
…僕、こんなに欲張りだったんだ。
でも、ディーは、時間ない、って。
そうだよね。
ここは神官の居住区だから、本当なら二人が入れる場所じゃないんだ。
けど、きっと、熱を出して倒れた僕のために、神殿長さんとディーリッヒさんが計画してくれたことで。
伝えたいことをちゃんと伝えなきゃ。
何度か息をついて、胸のざわめきを追い出した。
…完全じゃ、ないけど。
でも、少しだけ、身体の熱が引いていく。
「……あのね」
「ん」
「うん」
もうちょっとだけ、息を整えて。
「僕、今朝ね」
「「うん」」
「…中位神官に、なれたんだよ」
笑って言ったら、二人も嬉しそうに笑ってくれた。
「すごいな」
「おめでとう、フィー!」
「沢山頑張ってきたもんな?」
「でも、頑張り過ぎたらだめだよ?」
「うん!」
また二人に、ぎゅって抱きつく。
「それで頑張りすぎて熱出したのか」
「う゛」
「フィーは熱中すると、やりすぎちゃうからねぇ」
「う゛う゛」
「少し肩の力抜けよ?」
「私達に心配かけないでね?」
「……うう……ふぁぃ……ごめんなさぃ……」
うなだれてたら、笑われた。
ちゅ、ちゅ…って、二人から頭にキスされる。
「俺たちの話は、今度な」
「またお祝いしないとね」
「あ……怪我とか……してない……?」
僕が恐る恐る聞いたら、二人ともにこりと笑ってくれた。
「細かいのはあるけどな。問題ないよ」
「それより、予定より遅くなって…、心配かけたよね。ごめんね?フィー」
「ううん…。二人が無事なら、それでいい…!」
遅くなったって、大きな怪我してないんならいい。元気なら、それでいい。
それから、中位の神官になって、部屋のお引越ししたこととか、沢山の人に手伝ってもらったこととか、話した。
今の時間がどれくらいなのかわからなかったけど、鐘がなった。…多分、七の鐘。
そしたら、こんこんって、音が。
「はい」
「ラルフィン、入るよ」
扉を開けて入ってきたのは、手にお盆を持ったディーリッヒさんだった。
「ディーリッヒさん」
「これ、ラルフィンの夕食。それから、ラルフィンの恋人は、とりあえずここまでな」
「はい」
え、もう?
…そんな気持ちが、二人の服の裾を握るってことに繋がってしまった。
「あ」
すぐに離せばいいのに、中々離せない。
「フィー、またもう少ししたら会えるよ」
「来月までは王都にいるから」
「うん……」
……あ、また、目がうるみ始めた。
「……フィー」
ディーが、僕の耳に口を寄せた。
「来月、一杯可愛がってやる」
「はぅ」
離れたディーは、ニヤッと笑う。
そしたら、今度はエルが。
「何してほしいか考えておいて。全部してあげる」
「ぁぅ」
エルも、ディーみたいなニヤリ笑顔。
僕の手は、二人の裾から離れてた。
もう、顔が熱い…。
「さ、案内するよ」
ディーリッヒさんは苦笑しながら、二人を促した。
「フィー、おやすみ。無理しないようにな」
「フィー、おやすみなさい。私達の夢を見てね?」
「ふふ…。うん。おやすみなさい。また……ね」
二人、最後まで手を振ってくれた。
扉が閉まって、部屋の中に一人きり。
ちょっと寂しい。
けど、泣かないよ。
「いただきます」
ディーリッヒさんが持ってきてくれた夕食は、温かかった。
熱も下がったみたいだし。
食べて、お風呂…入って、寝よう。
そしてまた明日から、頑張るね。
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