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幼馴染み二人と僕の15歳の試練
13 知恵熱
しおりを挟む身体が重たく感じる。
「初日にしてはちゃんと見てるね。今までとは違う視線で見るから疲れただろ?」
「……疲れました……」
礼拝堂の清掃は、いつもより少し時間がかかったように思う。
終わってから皆解散してて、後は自習の時間だけど、僕は礼拝堂に残ってディーリッヒさんと反省会。
……でも、何だろう。
本当に、身体が重くて。
「ラルフィン?」
「あ、……えと」
頭が、すっきりしない。
いつも、こんなことないのに。
他人をよく見るってことは、こんなにも、疲れることなのかな。
顔が熱い。
というか、身体が熱い。
なのに、変な寒気が背筋を駆け上がってくる。
「…熱があるな。ラルフィン、何か視えたのかい?」
「?」
何か?
えと、人を見てました。
沢山、見てました。
見てた、よ?
だって、ちゃんと見て書き込む、のが、仕事だよね?
ディーリッヒさんは、さっきまで僕と書き込んでいた名前一覧を見ながら、軽くため息をつくと、徐に僕をひょいと抱き上げてきた。
「え」
「戻ろうか。ラルフィンは休んでいてくれ」
「や、歩けるから…」
「ふらふらしてるだろう。少しの間だから我慢して。ラルフィンの恋人たちには後でちゃんと説明の手紙を出しておくから」
そこまで言われてしまったら、何も言い返すことができなかった。
立っているのも辛かったのは、事実だし…。
女神さまの方を見て、目を伏せる。
ごめんなさい。
ちょっと疲れすぎたみたいなんです。少し休んだら、しっかりお祈りしますから、待っててください。
「……礼拝堂の清掃担当の中に『黒』の者がいたのか?これには書いてないようだが」
「黒くは……なかったよ……?白とか、灰色とか……」
黒、は、女神さまを信じない色。女神さまを疑う色。
中高位の神官さんたちは、皆、白。女神さまを信じて敬う色。
前に、変な人がいた。
顔はニコニコ笑ってるのに、真っ黒な何かがその人を覆い尽くしてた。
僕は怖くて仕方なくて、神殿長さんのとこに、逃げ込んだ。
それからも、時々、黒っぽい人が来ることがあったけど、段々白っぽくなったりもしてた。
「……きっと、すごく、考えすぎたせい……」
朝から怒涛の展開だったんだよ。僕にとって。
だから、きっと、すごくすごく疲れちゃったんだ。
…こんな時、エルのお茶を飲んだら、すぐ気分が楽になるのに。
ディーリッヒさんに抱えられたまま南棟の新しい僕の部屋に到着して、今日から追加されたローブだけ椅子の上に置かれて、ベッドに寝かされた。
洗面所のタオルを濡らして、僕の額に載せてくれた。
「寝てなさい。いいね?」
「ぁぃ………」
念を押されるほどもなく、僕はそのまんま眠りの中に意識を手放した。
夢のような現実のような。
優しくて柔らかな手が、何度も何度も僕の頬を撫でていた。
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