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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
30 どうしてこうなった…?
しおりを挟む引き続き、どうしてこんなことになったのか、よくわからない。
勉強の時間が終わって、流石に王子殿下さまも帰ると思っていたら、僕たちと一緒に昼食をとっていた。
なんで?
神殿のご飯、美味しいけど、王子殿下さまが一緒に食べるようなご飯じゃなくない?
「ラルフィンの知り合い?」
キリル君は相変わらず凄い顔をしてる。
「え?…うーん、と。お」
王子殿下さま…って呼ぼうとして、口を噤んでしまった。呼んでいいの?
僕がスプーンを咥えながらうーんうーんしていたら、王子殿下さまが、
「俺はクリスだ。ラルフィンの――――ラルの友人だよ」
「友人…?」
なんで。
「そう。こんな格好してるけど、低位の新官位を持っている。君たちと同じ『神官』だよ」
「……友人……って言う割には、かなり年齢も離れてるように見えるんだけど…」
キリル君が相変わらず不審げな目を向けていると、王子殿下さまが肩をすくめた。
「年が離れていては『友人』にはなりえないと?申し訳ないが、俺には20ほど年上の親友がいるし、あえて言うのなら、オリバー神殿長とも『友人』みたいな関係なんだけど。まあ、疑うのはわかるけど」
王子殿下さま、神殿長さんとご友人なのかな…?20歳も年上の親友がいる…?王族の人って、色々と顔が広いってこと…?
「友人だよな?ラル」
「………うん」
それ以外に僕になにか言うことができるんだろうか。
どうしてこんなに王子殿下さまに興味を持たれてるのかも意味不明だし…。
わからないことだらけなので、とりあえずご飯を食べてしまうことにした。
うん。
ご飯はいつもどおり美味しいね。
昼食が終わってから、僕は王子殿下さまと一緒に、神殿長さんに呼び出された。
廊下を歩く王子殿下さまを見て、中位以上の神官さんは少しだけ驚くものの、軽く会釈をするくらいで通り過ぎる。
王族に対してそんな程度でいいの??
僕はかなり不思議そうな顔をしていたのだと思う。
「神殿……神官は、国とはまた別の管理体制の中にある。完全に切り離されているものではないが、ここには『王族』としての権力は届かない。…権力なんてものを振りかざすつもりもないが」
相変わらずの無表情で、王子殿下さまは僕に教えてくれた。
「そもそも俺は低位の神官だからな。会釈されるだけでも気が引ける。彼らには俺の方から礼を取るべきだからな」
「……王子殿下さまにそんなことされたら、皆さん寝込んでしまうんじゃ…?」
僕がそう言うと、王子殿下さまが少しだけ口元を歪めた。
楽しく笑った…というより、なんだろう。怖くなるような…、『不敵』って表現がピタリと合うような笑みだったと思う。
そういえば僕、この人に会ってから、まだ笑顔を見ていない。この人の本心……は、どこにあるんだろう…?
「俺はどうしようもないほどの愚か者だよ。剣を振るうしか能のない、な」
そんなことはないと、思うんだけど。
どうしてそんなことを言うんだろう…って考えてる間に、神殿長さんの執務室についていた。
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