67 / 247
幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
20 浄化の光の可視化が一番手っ取り早い
しおりを挟む礼拝堂の掃除が終わった。
担当の中位神官さんが色々点検して(担当神官さんもちゃんと掃除してたよ)、特に問題なかったので解散となった。
今日は他の神官さんの補佐とかもないみたいで、各自自室にて自習(と言う名の休憩時間?)するように、と。
それで、僕も部屋に戻って手紙でも書こうかなと思っていたら、担当神官さんに呼び止められた。
「ラルフィン、君は少し残ってくれ」
「え、あ、はい」
「キリルは自室に」
「はい」
キリル君は不思議そうな目を担当神官さんに向けていたけど、素直に頷いた。
「六の鐘が鳴ったら迎えに行く」
「うん」
じゃあまた後でね、って、ひらひら手を振った。
「えっと……、僕、なにかしましたか…?」
誰もいなくなって恐る恐る聞くと、その担当神官さんは困ったように笑い出した。
「いや、違うんだ。こんな呼び止め方をしてすまないね。君に関して神殿長からのお達しがあってね。五の鐘の奉仕後、時間が空いたら、私のような中位や、高位の神官たちが、君の持つ力を導くように言われているんだよ」
「えっと…?」
「これからもそうなるから、覚えておいて」
「はい」
三の鐘の勉強じゃ足りないってことなのかな。
僕、そんなに出来が悪い…?
おろおろしてたら、また笑われた。
「君は顔に出やすいね。三の鐘の後に学ぶことは、基本的なことが多い。担当する神官にもよるけども、大体は同じ基本だよ。神殿とはどういうものか、神官とはどうあるべきか」
「はい」
真面目にうなずいたら、神官さんは苦笑した。
「あの内容では君には足りないんだ」
「?」
「教典を読むだけで光を発したのは、君だけだからね」
「??」
担当神官さんは、困ったように笑った。
僕を女神さまの前まで導いて、そこで話を続ける。
「女神様の御力をお借りして浄化の光を生むのが、私達神官だよね?」
「はい…」
「この光は誰でも見ることができるのは、知ってる?」
「はい。村の神官さまが、光を手から出していました」
「うん。まずは、それが第一段階。何故、私達が、浄化の光を可視化させるのか、わかる?」
「え……っと?」
正直わからない。
本……教典の中には書かれてなかった。
「可視化できないと、誰も信じられないからだよ」
その神官さんから出た答えは、僕の予想もしなかったもの。
「私達中位や高位の神官であれば、君の発する光を見ることができる。あとは、高い魔力を持つ者だね。だけど、一般の人には見えない」
あー、エルは見えてた。けど、ディーは見えてないと思う。その違い?
「人はね、目に見えるものを信じるんだよ。どんなに私達が頑張ったとしても、目に見えるなにかがなければ、人は信じない。信じられなければ、女神様への信仰が薄れてしまう。信仰が薄れれば、女神様から得られる加護の力も弱まってしまう。わかるかな?」
「……わかり、ます」
「うん、それでね。浄化の光の可視化が、一番手っ取り早いんだよ。俗な言い方だけどね?」
ふふ、と、その神官さんは笑った。
嫌な笑い方じゃない。
俗な言い方、っていうけど、女神さまに対して失礼な感じもない。
むしろ、女神さまも、なんだか喜んでいるような?
なんだかこの人と話をするのが楽しくなってきた。
3
お気に入りに追加
1,338
あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

王族なんてお断りです!!
紗砂
恋愛
この度めでたく私、エリス・フォーリアは男爵令嬢のいじめなんて生ぬる……馬鹿らしいことをしたという理由で婚約破棄をされました。
全く身に覚えもありませんし、その男爵令嬢の名前すら知らないのですが。
まぁ、そういうことで王家を見限った私は王国から店舗を撤退させていただきます♪
……のはずが、何故国王選定の最有力候補に名前があがっているのでしょうか?
そのうえ、他の公爵家の方々から頭を下げられ、隣国の王子との婚約話も進んでいるのですが……
ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります
ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。
今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。
追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。
ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。
恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
勇者パーティから追い出されたと思ったら、土下座で泣きながら謝ってきた!
蒼衣翼
ファンタジー
書籍化にあたりタイトル変更しました(旧タイトル:勇者パーティから追い出された!と、思ったら、土下座で泣きながら謝って来た……何がなんだかわからねぇ)
第11回ファンタジー小説大賞優秀賞受賞
2019年4月に書籍発売予定です。
俺は十五の頃から長年冒険者をやってきて今年で三十になる。
そんな俺に、勇者パーティのサポートの仕事が回ってきた。
貴族の坊っちゃん嬢ちゃんのお守りかぁ、と、思いながらも仕方なしにやっていたが、戦闘に参加しない俺に、とうとう勇者がキレて追い出されてしまった。
まぁ仕方ないよね。
しかし、話はそれで終わらなかった。
冒険者に戻った俺の元へ、ボロボロになった勇者パーティがやって来て、泣きながら戻るようにと言い出した。
どうしたんだよ、お前ら……。
そんな中年に差し掛かった冒険者と、国の英雄として活躍する勇者パーティのお話。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる