幼馴染二人と冒険者になりました!

ゆずは

文字の大きさ
上 下
64 / 247
幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります

17 神殿の一日②

しおりを挟む



 朝食の後は部屋で少し休んで、三の鐘が鳴ったら勉強する部屋に行く。
 それまでの小休止の間、特にすることもないので渡されたとても厚い本を手に取った。
 読書は嫌いじゃない。絶対必要だから、って、ディーとエルが共通語はしっかりと教えてくれたから。それに、これは、僕が知らなかった女神さまの事が書かれてる。…楽しくないわけがない。
 そうしていれば、時間なんてあっという間に過ぎてしまう。
 三の鐘が鳴ったのを聞いて、その本を閉じてから両手で持ち上げ、部屋を出る。比較的すぐに片手に同じ本を持ったキリル君と合流して、勉強の部屋に向かう。
 中には結構な人数。年齢は様々。どうやら僕は最年少らしく、18歳未満未成人は、僕とキリル君の他には二人しかいないらしい。
 でも、大人の人たちは、みんな優しいから怖くない。
 ここにいるのは、本が読める人たち。
 共通語の読み書きができない人のために、別の部屋では言葉の勉強をしているらしい。
 席は特に決まっていないので、何となくキリル君の隣の席に落ち着いて、本を開いた。
 そして少しすると、担当してくれる神官さんが入ってくる。担当さんは高位神官さん。毎日違う人。
 覚えることは女神さまの意に沿うということ。どんな意味があって、どんな効果があるのか。いろいろな場面での力の使い方。力を使う、つまり、女神さまの御力を代行者として使うことが、どういうことなのか。毎日同じ内容なのに、同じではない不思議な勉強。
 本を開いて指定されたページの黙読と、指名されたら音読。

「今日は――――ああ、ラルフィン、いるかい?」
「あ、はい」

 指名されたので立ち上がる。
 昨日も指名されたよ。

「238ページの女神様への祈りの項を」
「はい」

 指定されたページを開いて、祈りの項目を読み上げる。
 …この本も、不思議。
 読んでいると祈っているときのような気分になる。
 だから、今も、そう。

「――――はい、そこまで」
「はい」

 今日の担当神官さんは、周囲に視線を向けてから、僕に目を合わせた。

「確かに話に聞いていたとおりだ。ラルフィン、君はどこで覚えたのかな?」
「えっと…、村、で?幼馴染から」

 字を教えてもらいました。
 そう言ったら、神官さんに苦笑された。なんで?

「わかった。ありがとう。それじゃ、続きを隣の席のキリル、読んでくれるかな?」
「はい」

 僕は座って、今度はキリル君の番になった。

 その後も、神官さんは何人かを指名して音読させる。
 今日の勉強はそんな感じで進んで、四の鐘が鳴るのと同時に終わる。

 一旦部屋に戻って本を置いたら、昼食に向かう。
 朝と同じように食べれる分を持ってテーブルについた。
 キリル君と少し話をしながら食べていたら、

「ラルフィン君はいる?」

 って、呼ばれた。

「あ、はい」

 返事をして立ち上がったら、女性神官さんが僕の方に来た。

「これ。お届け物ね。イースさんはいる?」
「ここですー」

 …と、その人は次の人を探して食堂の間を歩き回っていた。
 僕は手渡されたものを見て、少し手が震えてしまった。

「ラルフィン?」

 口元が変に震える。
 とてもとても『にまぁ』としそうで、引き締めるのに必死。

「なに、ほんとにどうしたの」
「…なんでもないよ。早く食べよう!」
「お?おう…」

 朝とは段違いの速さで食べ終わって、食器を下げて、部屋にこもった。
 ドキドキする心臓を自覚しながら、手の中の封筒を何度も見た。
 表書きには神殿と、僕の名前。
 裏書きには、冒険者宿の名前と、ディーとエルの名前。

「手紙……きた……!」

 飛び上がりそうなほど嬉しい。
 ベッドに寝転がってそっと封筒を開いた。


しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

王族なんてお断りです!!

紗砂
恋愛
この度めでたく私、エリス・フォーリアは男爵令嬢のいじめなんて生ぬる……馬鹿らしいことをしたという理由で婚約破棄をされました。 全く身に覚えもありませんし、その男爵令嬢の名前すら知らないのですが。 まぁ、そういうことで王家を見限った私は王国から店舗を撤退させていただきます♪ ……のはずが、何故国王選定の最有力候補に名前があがっているのでしょうか? そのうえ、他の公爵家の方々から頭を下げられ、隣国の王子との婚約話も進んでいるのですが……

ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります

ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。 今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。 追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。 ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。 恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!

その瞳の先

sherry
BL
「お前だから守ってきたけど、もういらないね」 転校生が来てからすべてが変わる 影日向で支えてきた親衛隊長の物語 初投稿です。 お手柔らかに(笑)

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

勇者パーティから追い出されたと思ったら、土下座で泣きながら謝ってきた!

蒼衣翼
ファンタジー
書籍化にあたりタイトル変更しました(旧タイトル:勇者パーティから追い出された!と、思ったら、土下座で泣きながら謝って来た……何がなんだかわからねぇ) 第11回ファンタジー小説大賞優秀賞受賞 2019年4月に書籍発売予定です。 俺は十五の頃から長年冒険者をやってきて今年で三十になる。 そんな俺に、勇者パーティのサポートの仕事が回ってきた。 貴族の坊っちゃん嬢ちゃんのお守りかぁ、と、思いながらも仕方なしにやっていたが、戦闘に参加しない俺に、とうとう勇者がキレて追い出されてしまった。 まぁ仕方ないよね。 しかし、話はそれで終わらなかった。 冒険者に戻った俺の元へ、ボロボロになった勇者パーティがやって来て、泣きながら戻るようにと言い出した。 どうしたんだよ、お前ら……。 そんな中年に差し掛かった冒険者と、国の英雄として活躍する勇者パーティのお話。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

処理中です...