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幼馴染み二人とほとんど会えなくても豊穣の国の神殿で頑張ります
9 幼馴染の苦悩⑧/D
しおりを挟む「結婚とか婚約とか……、流石にフィーもわかったよな…?」
「うん……多分ね。顔、真っ赤にしてたし。……可愛かった……」
以前、「お嫁さんになってほしい」と言ったときには、「女の子じゃないから」という斜め上からのお断りの返事をもらった。まあ、フィーらしいと言えばらしい。
今日のフィーは少し様子がおかしかった。
仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。
俺たち三人はいつでも一緒にいたから。
ばらばらだったのは眠るときだけだったか。……それすら、ほとんど誰かの家で一緒に寝ていた気もするが。
「もっと格好良くプロポーズしたかった」
「遠回しに言ってもフィーはわからないから、直球で良かったんじゃないかと」
「まあ………」
宿に戻る俺たちの足取りが重い。
数歩歩いては、遠くなる神殿をちらちら見てしまう。
フィーがいなくて耐えられないのは、きっと俺たちの方だ。
「あのさぁ、ディー」
「なんだよ」
「礼拝堂のステンドグラスのとこ、見た?」
「……見た」
神殿の礼拝堂には、綺麗なステンドグラスが、はめ込まれていた。
その近くには、絵が飾られていた。女神像を囲むように、薄い桃色のふわふわの髪をした天使たちの絵。
あれを視界におさめた瞬間……、俺達の中には不安しか生まれなかった。
「ありえないよね」
「ありえないな」
フィーの髪色を何度も確認していた神殿長。多分、そういうことなんだろう。
けど、俺たちは、フィーがなんであれ、誰にも渡すつもりはない。神殿にも、神殿長にも、もちろん、女神にも。
「フィーは俺達だけのものだ」
「うん。もちろん。はぁ。はやく二年経たないかなぁ」
「……もしかしたら、いい返事じゃないかもしれないぞ?」
「それこそありえないでしょ」
エルが笑う。
俺も、つられて笑った。
そうだな。
心配してても仕方ない。
フィーは絶対に俺たちを選ぶ。
絶対、だ。
「とりあえず……、駆け出し冒険者としてレヴィ殿から訓練受けるか…」
「……嘘でしょ。はぁ。疲れる……。店主、怖いんだよ…。ほんとに容赦ないんだよ…」
「でも、一番はやく強くなれる」
「まあ……同意するけどね……」
さっさと仕事を受けよう。
我武者羅にやって、信頼度を上げて、指名依頼がもらえるようになれば、もっと稼げる。
二年。
長いようで、短い。
家を買うんだから、お金はいくらあっても足りない。
「まずは10日後」
「照れたフィーは可愛いだろうなぁ」
「楽しみだな」
「楽しみだねぇ。キスしてたくさん触ってもいいかな?ディー」
「……まあ、触りたいよな」
「きっと真っ赤になるよ。身体まで真っ赤になるよ。昼間からお風呂に入るのもいいよね」
「お前……抑えろよ?」
「それは無理」
……ふぅ。
10日後はまずエルを抑えるところから、だな……。
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